「自分なりに考えて投票先を選びたい」人のための政党比較ツールを作りました。(国政AI | 政党比較ツール)
はじめまして。株式会社LastCapsuleの代表の阿部と申します。
突然ですが皆さんは「投票に行こうと思ったけど行けなかった」経験はありますか?
私はたくさんあります。特に、社会人になった後は一回も行けていないかもしれません。
「選挙に行けない」にも色々なパターンがあります。
予定があって行けない、仕事で行けない、そもそも選挙を無意味だと思っている、など選挙に行けない人にもそれぞれの理由があると思います。
私の場合、その理由は毎回「投票先を決められないから」というものでした。情けないお話ですが、毎回「自民党は嫌だ」「でも他に評価できる政党もない」「人で選ぼうにも全員どんな人かわからない」という思考に陥り、結果的に投票に行けていなかったのです。
そこで今回の衆議院総選挙にあたり「自分が投票に行くためにどんなツールがあったら良いのだろうか」と考えました。そしてそのモチベーションを起点に、国政AI | 政党比較ツールを作成いたしました。
https://kokusei-ai/compare-parties
過去に私と同様な理由で選挙に行けなかった方がいましたら、ぜひ使ってみていただけると嬉しいです!
※ この記事は弊社で最近開始した「国政AI」というサービスの宣伝記事です。
想定している使い方
あなたの価値観的に重要だと思うトピックを選択
政党毎のサマリーが一覧で表示されるので一つ一つGood Badをつけていく
政党毎の総合ポイントも更新されているので、それも参考に投票先を判断
既存の選挙ツールとの違い
現時点である程度有名な選挙ツールとしてJapan Choiceや選挙ドットコム があります。
これらのツールには2つの共通点があります。
「診断形式」( 質問に回答していくことでおすすめの政党がわかる形式)になっている
基本的に政党の発信ベースである
私は以前の選挙の際、これらのツールを使ってみました。しかし質問の内容にも回答からオススメされた投票先にも納得できず、モヤモヤを強めたまま結局投票しなかった記憶があります。
そして今回、政党比較ツールを作成するにあたり、上記のような形式、特に「診断形式」を変えないといけないという結論に達しました。
「診断形式」の問題点
回答するのが難しい質問が多い
以下は今年の衆議院総選挙におけるJapan Choiceの「かんたん投票ナビ」の質問の一覧です。
選択的夫婦別姓: 夫婦がそれぞれ違う名字を選べるようにすべきですか?
消費税: 消費税の税率はもっと上げるべきですか?
物価対策: モノが高くなり続けることに政府はどう対応すべきですか?
政治とカネ・議員歳費: 政治家が使える国から配られるお金は必要ですか?
マイナンバーカードと健康保険証の一体化: 健康保険証などの代わりにマイナンバーカードを使えるようすべきですか?
防衛費増額・防衛増税: 日本を守るための防衛費はもっと増やすべきですか?
皇位継承: 将来、天皇になる人がいなくなるかもしれない問題をどう解決すべきですか?
原発再稼働の是非: 原子力発電(原発)は動かすべきですか?
育成就労制度等: 外国から働きに来る人をもっと受け入れるべきですか?
これらは全て「かんたんな」質問ではないです。
専門家でも自信を持って答えるのに勇気がいる質問なのではないでしょうか。
一応解説もありますが、解説を読んでも判断は難しいものだと思われます。(個人的には解説が会話形式になっている分冗長でむしろノイズに感じました)
これらの質問について普段考えていない人間が、選挙のタイミングでこれらの是非を判断し、回答するのは難しいことだと思います。そして普段あまり考えていないことを無理矢理判断しようとしても、良い政治的意思決定に繋がらない気がします。
(個人的にはこれらの意思決定は「専門家を自認する少数がその職業人としての生命を賭けて全力で判断する」とする方がうまくいく気がします)
本当に重要だと思っている観点については質問されない
おそらく「診断形式」のツールにおける質問では、「多くの人に関係ありそう」な質問が選ばれてると思います。しかしそれは「多くの人が重要に感じ
る」質問ではないのではないでしょうか。
例えば親の介護に直面している人は介護について、子供が大学生になりそうな親は大学の学費について、とても気になるはずです。災害の被災者にとっては被災地への取り組みがとても気になるはずですし、全人口の10%程度いると言われているLGBTの方が、残りの90%よりもLGBT政策への温度感はきっと高いでしょう。
しかしそういった質問は上記で紹介したJapan Choiceの質問の中には含まれていませんでした。
私にとっても「ピンとくる」質問はありませんでした。
私が個人として重要だと思う観点も他人から見ると「重要な問題かもしれないが、多くの人に関係なさそう」なものです。しかしそのような観点で考えるプロセスを踏まないと、納得感のある投票はできないと思います。
重要視していないことを質問される度に投票意欲が下がる
与えられた質問に内心「あまり興味ないな」と思いつつ絞り出す形で回答していく度に、「質問を押し付けられている」感じが強くなっていきました。
あくまでも私のケースですが、結果として「ツールを使うことによってむしろ投票できなくなった」と言えます。
結局「自分で選んだ感」が得られず投票に繋がらない
既存の選挙ツールでは、全質問回答後におすすめの政党が表示されます。そのタイミングで私は「これで投票して良いのか?」と感じました。何か誘導されていたことに気づいたような感覚になりました。
結局投票には「ここに入れるぞ」と言う気分が必要なのではないでしょうか。そのためには「自分で選んだ感じ」が必要な気がします。
国政AI | 政党比較ツールの思想
上記を踏まえて、政党比較ツールは以下の思想で設計しました。
国民全員が同一の観点で投票するのではなく、一人一人が「自分が重要だと考えること観点」ベースで投票した方が、選挙全体として良い投票になるはず
判断が難しい観点については無理に判断しなくて良い
重要だと思う観点をユーザーから引き出せるような設計であるべき(それができないと結果的にモヤモヤが残る判断になり、「だったら選挙に行かない」という結果になりがち)
政党の公式発信以外にも外部からの視点を取り入れたい(ただしできるだけ運営者の恣意性が入らない形で)
既存の選挙ツールとの違いは以上です。
過去にJapan Choiceや選挙ドットコムを使ってみて「自分には合わないな」と感じた方はぜひお試しください!
生成AIを使っています
どこでどのように使われているのか
各トピックに対して政党のサマリーを「生成」する際に使用しています。
サマリーは政党が公式に発信している情報やWeb検索による情報を入力として作成されています(いわゆるRAG)
手法等にご興味がある方は、こちら(https://www.kokusei-ai.com/compare-parties/method)をご覧ください(プロンプト等は全て公開しています)
使用上気をつけることは?
一般的に生成AIは要約のようなタスクは得意です。
しかし、やはり要約タスクにおいてもハルシネーション(要約内に存在しない事実が作り出される)のリスクはあります。
もちろん開発の過程でハルシネーションを少なくする工夫はしていますが、「絶対ハルシネーションはない」とは言い切れません。「何か怪しいな」と思ったタイミングでは適宜、参考情報までご確認ください(これは生成AIの成果物に限らず、全ての情報源に対して行うべき対応な気がしますが)
タイトルで主張している「自分なりに考えて」と矛盾しない?
生成AIを使ってる以上、一定量「考えることをアウトソースしている」とは言えるでしょう。
しかし、「自分なりに考えている」感覚はあると思います。
イメージとしては、チョコレートケーキを作るのにチョコレートをカカオ豆から作るのではなく市販品のチョコレートを使う感じです。(「十分に手作り感がある」ということを言いたいのですが、わかりにくいかも)
この「自分なりに考えた」感覚が投票にあたりとても重要だと考えています。
以上です。
本当は今回の選挙の1週間前にはリリースしたかったのですが、私の力不足でこのタイミングでのリリースになってしまいました。
もう明日が投票日ですが、できる限り多くの人に使っていただきたければと思っています。