木に対する思い
私たちは3年前、この場所に家を建てた。
当初は近隣で中古住宅を探していたのだけど、思うような物件に巡り合えず、思い切って新築することにした。
ソローの「森の生活」にとても感銘を受けていた私は、家にお金をかけることにとても抵抗があった。
一方で、数十年でゴミになり、建て替えられていく現代住宅には大きな違和感を感じていた。
だから、家を建てるにあたって、できるだけ使い捨てを前提としたようなものには投資したくなかった。
いいもの、長く使えるものを選んでいけば、そういうものを作る人たちのところにお金が回っていく。
そういう風にお金を使いたいと思った。
建てるなら、100年、200年持つ家にしよう。
私たちが住めなくなった後も、誰かが住み継げるような家にしよう。
そう思うと、無駄な投資ではないように思えた。
こだわったのは、歴史ある集落に馴染むよう、和風であること。
見た目でなく素材や構造にこだわること。
日本の気候風土に合った国産の木を使うこと。
日本の伝統を受け継ぐ工法で、大工さんたちの手仕事で建てること。
できあがった家には、一本一本表情の異なる柱がある。
天井や壁に張られた板の木目が美しい。
あちこちに木の温もりがある。
木を使うことでしか出せない心地良さがある。
木材はこういう風に活かされるのが一番よいと思う。
各地でバイオマス発電のために、たくさんの木材が燃やされている。
私が住む地域でも大規模な発電施設の計画があり、今後今までにない量の木材が必要になっていくようだ。
放置された人工林や、身近な里山の雑木林。
それらが今後は大量に伐採され、ただ燃料として燃やされていくのかもしれない。
そう思うと、とても悲しい。
発電のためとはいえ、森の木を燃やすことは、人為的に森林火災を起こしているようなものだと思う。
それらの森林が今現在与えてくれているものに対して、どう考えるのか。
後に残るのは、燃えかすとわずかな電気だけ。
木材として使われていれば長期間与えてくれるはずだった価値も失われてしまう。
私には、これが進むべき道だとは思えない。