京都のさんぽ道
京都のさんぽ道。
人影のない金閣寺の参道。
山門まで散策していると、
手持ち無沙汰風の警備員さんが
「いまやったら貸切ですよ」という。
「近所のもんなんですけど。
ほんま、えらいことになりましたねぇ」というと、
「わたしもね、うち竜安寺ですけど、だぁれもいませんわ」という。
それぞれの家が金閣寺と竜安寺という遺産を背負うご近所さん同志の会話がこちらになります。
幼いころから、地蔵盆の肝だめしをしたりと親しんだ金閣寺の森は、世界遺産になってから人波が絶えることがなかった。
いま、世界的なパンデミックがこうしてかつての静かな佇まいをもたらし、数十年も前の幼少期の景色と重なってみえる。
そういえば、金閣寺に猟銃を持って立てこもった男がいたなあ…
あのとき、犬のさんぽを装いながら野次馬にでかけていった亡き父の姿も重なる。
そのころ金閣寺のトイレに、ターバンを巻いた男の幽霊がでるという話は、近所の子供たちの間で超有名だった。
いろいろ懐かしい。
ひとりで拝観して、オーナー気分。
エア義満公だ。
拝観路は最後に山門をくぐり、なだらかな石段を降りる。
そこの土塀には水平に白く線が引かれている。
五本の線は最高の格式を表すとされているという。
(ご近所さんとしては、自慢なのだ)
今年の五山の送り火には、金閣寺に納めた護摩木が大文字山でお炊き上げされる。
この静謐さに美を感じながらも、お盆にはまた賑わいが戻ることを祈って。
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