末期必殺論
『必殺ワイド・新春 久しぶり! 主水、夢の初仕事 悪人チェック!!』(1988年)
必殺ワイド第10弾。『剣劇人』で「古い」と言われ、『大老殺し』で「いるところ」がなくなった仕事人・中村主水。今作ではとうとう、俳優・藤田まことが演じる架空のキャラクターということになってしまう。
この時期の必殺は作り手が主水を明らかに扱いかねており、幻の企画『TANTAN狸御殿に恋が散る』では、主水は完全な脇役となっていた。どこにも「いるところ」がない男は、果たしてどこへ向かうのか?
『必殺ワイド 仕事人VS秘拳三日殺し軍団 主水、競馬で大穴を狙う!?』(1988年)
必殺ワイド第11弾。二十年間のヘソクリ百二十五両を、馬券をノミ損ねて全部パーにしてしまう主水。
「まあ新規蒔き直し、一から稼ぎましょう。果報は寝て待て、ね?」。
ゲストは劇場版『必殺!THE HISSATSU』(1984年)に登場した蝶々の朝吉。今回の必殺ワイドは彼のバックボーンを描いたものともなっている。
「俺が昔、花屋だった頃、よく花を買いに来てくれたもんだ」。
朝吉の妹の平尾真弓は、政とは花屋時代からの知り合いという設定。過去作への言及は仕事人ブームの頃を懐かしむようでもあった。登場人物の一人がこんなことを言っている。
「むやみに走らせるな。ムチを入れるな。馬も生き物だ、労ってやれ。馬と心が通じ合わねば、真の馬術ではない!」。
『剣劇人』以降、スタッフは馬面の同心にムチを入れすぎたのかもしれない。