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英語が話せるようになる方法 part2:大量のインプットで英語を習得する

こんにちは。英語講師の家田啓示(いえだ けいし)です。今回はインプット仮説と呼ばれる理論をベースに、大量に英語のインプットを得ることの重要性についてお話ししたいと思います。

⓪ワンチャンっていつから使ってる?

読者の皆さまは、初めて「ワンチャン」という言葉を聞いたときのことを覚えていらっしゃいますか?

私が最初にこの言葉に出会ったのは2014年頃でした。

はじめは「生徒がよく言ってるけど、どういう意味だろう?」と思ったのを覚えています。

しかし、数ヶ月後、自分自身が「ワンチャン」という言葉を意識せずに使っていることに気づきました。

意味や使い方を解説されたわけでも、例文を暗唱したわけでもなく、気づいたら自然と使っていました

実はこれが言語習得の自然な形です。英語圏に住んでいた人が、文法用語はよくわからないけどとりあえず英語を話せるのに近いです。

①インプット仮説

南カリフォルニア大学のクラッシェン教授は、「インプット仮説」でこのような言語習得の流れを説明しています。安心して学べる状態で、脳内で処理をした理解可能なインプットの量が一定量を超えれば言語は習得される、という理論です。


安心して学べる状態とは、「こんな簡単な勉強をしていてバカにされないかな」「他の人の前で英語話すの恥ずかしいな」などのような心配をしなくてよい環境のことです。


理解可能なインプットとは未知の単語などはあるものの、問題なく内容が理解できる英語を読みことや聞くことを指します。


たくさん読んだり聞いたりすれば、コップに徐々に水を注いでいつかあふれ出るように、英語が自然と出てくるということです。

私が「ワンチャン」という言葉を無意識に使ったのも、処理したインプットの量が一定を超えたからだと考えられます。移住すると方言がうつるのも同じ原理ですね。

インプット仮説には細かい批判はあるものの、「言語習得にインプットが重要である」ということは疑いようがないでしょう。

つまり、自分のレベルに合うものを大量に読んだり聞いたりすることで、言語習得が促されるということです。

また、大量にインプットを得るということが苦痛にならないように、なるべく興味があって楽しいものに取り組めるとよいでしょう。

前回の川上講師の記事

にインプットを得るために最適な素材の選び方がまとめられておりますので、ぜひそちらも併せてご覧くださいませ。

②インプットだけでよいのか?

では、文法を理解したり例文を暗唱したりしなくても、英語を読んだり聞いたりしていればペラペラになるのでしょうか?


それは現実的には難しいでしょう。理由は以下の2つです。
(1) 日本の言語環境では習得に必要なインプットが足りない
そもそも日本では日常的に英語が話される環境ではありません。文法学習や暗唱をしなくても十分なほどの大量の英語のインプットを得ることは現実的には難しいです。

(2) 意味に影響を与えない項目は学習されづらい。
日本に住む外国人で、10年住んでいる人の方が5年住んでいる人よりも日本語がうまいでしょうか?そうとは限りません。インプットによる自然な言語習得は、ある程度通じるようになった段階で成長速度が遅くなります。それ以上うまくなる必要性を感じなくなると、使える表現の幅が増えていきませんし、誤りも放置されがちです。

③大量のインプット+例文暗唱

これらの弱点を補うのが、前回の記事でご紹介した暗唱により英語を自動化する方法です。

反対に、例文暗唱の弱点は「学習しようとしたものしか身につかず、全体をカバーしきれない」ということです。

例えば「仮定法の文を暗唱して、会話で使えるようになろう」とは思いますが、目立った学習項目でないものに関してはなかなか暗唱するには至らないかと思います。

例えば、「間の取り方」や「相づち」は例文暗唱でマスターするよりは、英語をたくさん聞いて自然と身につくものでしょう。

つまり、インプット仮説自動化理論は相互に足りないところ補完しあうものと考えられます。私は以下のように、両方を取り入れて英語を学習しています。


①自分のレベルにあっていて、気に入った教材や素材でインプットを得る
②「いいな」と思った表現をメモして、暗唱する
③英語話者と話せる機会で暗唱した表現を使ってみる

私は基本的に毎日オンライン英会話を続けています。そこで新しい表現を使ってみようとしています。実際にコミュニケーションの場面で使ってみることで新たな気づきもあり、その後のインプットにより敏感になることができます。質問すれば、もっとよい言い方を教えてくれますので、そこでまた暗唱すべき表現を得られることも多いです。

私は留学経験は乏しいですが、こうした学習をしてきたため、ある程度英語でのコミュニケーションには困らないようにはなりました。もちろん、学習を続けることは大変です。しかし、いろいろな国の人と話せるようになって、世界がぐっと広がった感があり、今では毎日のオンライン英会話が楽しみです。私も英語学習者としてまだまだ道半ばですが、皆さんと一緒に頑張っていけたらと思っております。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

《参考文献》

白井恭弘(2012). 『英語教師のための第二言語習得論入門』大修館書店
鈴木 渉 (編著)(2017). 『実践例で学ぶ第二言語習得研究に基づく英語指導』大修館出版
Krashen, S. D., & Terrell, T. D. (1983). The natural approach: Language acquisition in the classroom. Hayward, Calif: Alemany Press.

編集後記:

家田先生の第二言語習得理論の専門的な知見はもちろん、実体験をベースにした話が展開されていて、大変興味深い記事ですね。学習者のスタイルは十人十色ですが、今回の記事は「成功する学習者」の特徴も理解できる内容でした。

個人的に素晴らしいと思ったのは、家田先生が日々オンライン英会話に取り組む中でインプットした表現を今度はアウトプットで使う意識をもっていらっしゃることです。皆さまも学んだ表現をご自身でも使ってみてください。

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