老いらくの恋 2
我が老いらくの恋に落ちた相手は、現在の妻です。
もちろん美人です。しかし、彼女の魅力はその美貌だけでは有りません。
文才詩才にあります。いくつか紹介しましょう。
「暖かき 多きなる腕で
我は いだかれたし
されば 我は
父からも 母からも
はたまた われを こよなく愛されたまいし
祖母からさえも
受けざりし やすらぎのなかで
いねむらむ 赤子のように
君がみ胸は 我のためにこそ
我のためにこそ あるらめ」
「二人が知り合ってから四年
二人で何か作っていけそうだ、
つくってゆけると感じはじめて
すでに二年
会える日に胸のときめきが無かったことは
かつて一度もなく
手紙の封を緊張して切らなかったということを
思い出すことはできません
二人の間に流れた四年は
どんなことがあっても 貴方を信じていると
いいきることのできる確信を
いつの間にか 私に持たせてくれたのです
あと4ヶ月ですね」
これは4ヵ月後に結婚を控えた時に送られてきた手紙に記されていました。
「九月が 重い頭を 軽やかに もたげると
春がくるのです
いいえ、私は間違ってなどおりません
あの風のやさしさが 何よりの証拠です
さようならの季節はおわりました
それは
はずかしそうに 私たちの前からきえるのです
その時
二人は旅にでるのです」
これは新婚旅行にでる直前に詠まれまれました。
私も節子に手紙をおくりました。
「僕は貴女に会うことが出来た事を幸運に思います。
貴女の愛を得た誇りをじっくりかみ締めています。
この素晴らしい貴女にとって、
僕もすばらしい恋人たらんと努力するでしょう。
男は愛の対象であるよりも、
尊敬の対象であることを望みます。
貴女の尊敬に値するだけの力と、ひたむきな情熱、
なによりもこころと肉体の健康を
手にいれるよう努力します。
次に会うとき僕の瞳を見てください。
最近消えかかっていたなにか、
光に似たものを見ることでしょう。
次に会う時僕の肉体を見てください。
健康を取り戻しています。
貴女を抱く手に
力がこもっている事にきがつくでしょう。
次に会う時僕の声を聞いてください。
希望だけが歌としてながれるでしょう。
次に会う時気を張り詰めてください。
上の事柄の一つでもかけていたら
横を向いて走ってにげてください。
僕はそれを見て、より大きい努力をはらう。
愛する人 節子へ」
これは、52年前節子にあてた手紙に書かれていました。
私傑は、一人の女性節子に、2回目の恋を感じています。
なんと幸せな男か、つくずく思います。
つづく
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