機動戦士ガンダム水星の魔女23話感想「兄弟喧嘩と姉妹喧嘩」

公式「丸1日待っててね」

 突如コロニー落としを食らったかのような衝撃の、配信開始日大幅遅延。これによって情報格差が生じる羽目になったわけだが、流石にトレンドに「フェルシー」が見当たった瞬間

私「そんな、う、嘘だ……ウゾダドンドコドーン!」

次回こそ全ての情報を遮断し、真のリアタイを誓う音霧カナタであった。

※この感想記事は「機動戦士ガンダム 水星の魔女 23話」のネタバレを含みます。視聴済みであることを前提になりますので予めご了承ください。

OP変化

 OPの剣戟かっこよすぎて! 何度でも見れる! どんなに長距離な砲身持っていても、ガンダムの最後は近距離戦が物を言うのだ! シュバルゼッテも仮面ライダーナイトみたいな片方マントでカッコいいぞおい! プラモデルが売れる!


無限軌道彗星キャリバーン

 美しい。煌めく宇宙、交差するビームの瞬き、まるで風を切って飛ぶようなキャリバーンの姿はとても美しい。多分スロー再生じゃないと真価が分からないですねこれ。  

 エリクトの言うデータストーム圏を広げる=反発勢力の排除=またも始まる大規模殺戮の幕開けなので、止めなきゃいけない。止めることが家族に息苦しい思いをさせることであっても、「悪い存在」にしたくはないというのがスレッタの答えだ。進み続けて仲間とともに歩んだ、彼女だけが持った理念理想。そしてどんな物語でも、特にガンダムでは、強い夢や理想は必ずぶつかり合う。例えそれがエリクトであっても。


エリクトの出来なかったこと

 夫を失い、GUNDの理想も仲間も喪ったプロスペラ。まだその手に残る娘すら、僅かな蝋燭を燃やし尽くし果てようとしている。例え人ならざる存在に仕立てようとも、娘を必ず救ってみせると誓った。

 エリクトはそれを知っているから、どんなに薄汚れた手段であっても、娘として母と心を1つにするつもりなのだろう。後少しで計画が上手くいくというところで、エリクトの覚悟も決まっていたはずだった。

「抱きしめてあげたい」「そばにいてあげたい」激戦の中でスレッタが発した言葉は、エリクトの心にあった急所を突いた。それが自分に出来ていたら、母はここまでおかしくならなかったのだと知っているから。


姉妹喧嘩に割って入るモノ

 著しくパーメットスコアが低下したのか、ガンドノードの動きが鈍化した瞬間。誰の何の力か? 僕らは知っている。

 エリクトが怒る相手「なんで邪魔するの?」「データストームのお陰で願いが叶うのに」この2つを夢として共有し、スレッタの友人やスレッタを害する者を止める行為をする。そんなの、誰だって分かっているじゃん。

 初めてパーメットスコア6に到達した、シャディク戦。スレッタは言った。

「良かった、居たんだ」

 プロスペラがあの時流した涙は、データストームの中に微かにあったエリクトの存在をその眼で確認できたからでしょう。……つまり、それまではエリクト=エアリアルではない。あくまでもエリクトは、エアリアルから溢れる呪いを受け止めていたフィルターだった。

 だから、ミオリネが乗り込んだ時やる気のなかったあのAIも、スレッタをずっと見守り続けていたのも、それはエリクトだけではない。

 エアリアルくんが、ここに来て再び目覚めたのだ。それはまるで後述する兄弟喧嘩に割って入った者のように。こういう、意志を持っていないはずの無機質な存在が主人公の後押しをする展開に弱い。


まがい物でも役立たずでもないものは何?

 シュバルゼッテでディランザと戦うラウダ君。しかしその剣一本だけの装備でどうするつもりなんだろうと思ったら、大剣→勇者パースからのビーム砲(集弾性悪し)→ビット→実体剣と盛り沢山。00のラスボスを思い出すよ「意外にもギミック多い」ギャップは。

 更には仮面ライダーナイトのようにマントを展開したり(最近だとキュアスカイ)、拡散ビーム砲を使ったりとやりたい放題の性能。ダリルバルデと並べたい。
 
 そんな凄い機体でなんでラウダ君がここにいるんだ!?

地球寮「知るか!」
プロスペラ「知らないわ」
視聴者「知らん…」

 クワイエットゼロ潜入組にも襲いかかるビーム。死ぬ死ぬ言うな何しに来たんだマルタン! ママー!とか言うな、ママって実際のママかセセリアのことかどっちかわからん! 


嫉妬爆発

ラウダ「どうして黙っていた!?」「後ろめたかったからか?! 僕には荷が重いと思ったのか!?」「そんなにも僕は頼りないか!!?」

 お兄ちゃんのこと大好きすぎだろう!? そしてグエル先輩も致命傷を避け、弟に一切攻撃をせず防戦に徹するのは強すぎる。

「父さんは俺の罪だ、俺が全部背負うべきなんだ!」

 もっと僕を頼ってくれ!!(譲れない思い)
 お前は別に背負わなくてもいいんだ!(譲れない優しさ)

「そういうところだよ兄さん、だからあんな女に付け込まれたんだ!その高潔さ、傲慢さが兄さんの罪だ!」意訳すると「僕は高潔で傲慢な兄さんが大好きなのにあんな女に利用される様なんか見たくないんじゃあ!!」だめだこの兄弟喧嘩、愛情重すぎ!


自己評価の低いラウダ

「この力なら兄さんに並べる! 兄さんを止められる! 目を覚ますのは兄さんだ!」 目を覚ますのはお前や!!! でもグエル先輩も、ディランザの足を失い腕もボロボロ、流石にこれではもうどうにもならない、このままでは斬首を待つのみだ。

 しかもここに来て物理メインの刀!? シュバルゼッテとんでもない武器展覧会だ! ジェターク社の誇る技術を結集したオーパーツである。あらゆる状況に対応できる汎用性で攻めっけも上々、グエル先輩が乗ったらどんな強さだったんだろうかと妄想するのは楽しいけど、パーメットスコア的に死にそうだから無理か。……というか結構無理して戦っている割にはラウダ君まだまだ余裕そうだね。頑丈さが売りのジェターク社製ガンダムはパイロットの安全もある程度担保しているのだろうか?

「すべて罪を背負う、僕は、ラウダ『ジェターク』だ!!」 並んでいる自覚がなかったから、今までずーっと旧姓のニールを名乗っていたのかよ。

 ここで思い切り剣のぶつかり合いになる、そう見せかけてグエル先輩はおそらく、わざとビームサーベルの出力を切った。そして真っ直ぐ吸い込まれるように刀がコクピットへ


麗しき回想

 鬼滅で回想が入るとだいたい勝利フラグだが、普通は走馬灯でそのまま死ぬんだよ! ツンケンしてそうなグエル、腹違いの弟で受け入れられるはずがないと覚悟しているラウダ、「グエルに任せれば問題ない」と確信しているヴィム。ここら辺の家族構成とか知ると余計に感情移入できてグッと来る。

「グエルだ。俺に弟がいたなんて、すっげえ嬉しい」

 堕ちろぉ!! ラウダジェターク!!!! そして視聴者! こんなのガンダムのパメスコ8にしても勝てんよ!! お前がお兄ちゃん一等賞だよ!!


父と重なるやりとり

 シーズン1最終話(12話)でヴィムはグエルに言った。「グエルか…探したんだ…ぞ」グエルとヴィムはよく似ている。これまでの描写でそれはよく分かっている。だったらあれは、最後の最後、憑き物が取れた表情はきっと本心だった。欲と謀略を巡らせようとしていても、上手く愛情が伝わっていなくても、息子のことは本当に大事にしていたヴィム。あのときはすぐに爆散してしまったがためにグエルのトラウマになったが、そこから再起の道を進み続け、「失ったとしても逃げずに進み、1つだけでも手に入れようと藻掻く」唯一無二の高潔な心へと昇華した。

 自分を失ってもラウダを手に入れる。取り戻す。シュバルゼッテの機能を喪失させ、こう言うのだ。

「ガンダムなんて、もう乗るな」
(お前は紛い物・忌み子(シュバルゼッテ)なんかじゃない)

 この台詞が「お兄ちゃん」の慈愛を感じるんだ。もうここで命を落とすことを何一つ後悔していない穏やかな表情。12話では死にたくない気持ちに押し潰されそうだったグエル先輩は、進むことを恐れないスレッタ・マーキュリーを目標に掲げ、それを実行していく内にいつの間にかこんなに強くなっていた。


一線を越えさせない女神

 きっともう間に合わない、惜しい人を亡くした、グエル先輩はもう、このまま爆散して

 消火弾乱射!!

私「ワッツ!!!??」

 今、何が起こった?? ガンダムなら100%死んでしまう場面だったぞ!? どうして生きているんだ?! 誰の助け舟だ!?

「2人とも馬鹿なんすか!? 兄弟喧嘩で死ぬとか、マジ笑えないっすから!!」

鬼脚本「う、動け死亡フラグ!! 何故動かん!?」
視聴者「わかるまい、視聴者の心を曇らせる脚本には、この視聴者を通して出る奇跡が!」
鬼脚本「奇跡は殺す、みなごろす! 俺は奇跡の殺戮者に!!」

 救世主降臨!!! 女神生誕!!! 崇め奉り怯えて竦め!! 天下無双のフェルシーロロが来たからには死亡フラグなどあっという間に叩いてみせるわ!!!

 マジ足向けて眠れん。ありがとうフェルシーちゃん、自分の死亡フラグどころか兄弟の死亡フラグも崩した手腕が見事すぎた。ジェターク寮が光のカタマリすぎてどうしたらいいんだこの尊さは。この瞬間、ジェターク寮の皆は生き残るだろうと確信した。

 思えばフェルシーちゃんが救ったのはチュチュ先輩もだった。ランブルリング襲撃時にコクピットを狙い撃って仕留めようと鬼の形相になっていた彼女を、どこからともなく聞こえる助けを呼ぶ声で引き止めたのだ。あの時そうしなかったら、チュチュ先輩も因果に飲まれてどうなっていたかわからない。人が越えてはいけない最後の一線を絶対に守り抜く。

 今わかりました。宇宙の心は彼女だったんですね。


完璧で究極のくそオヤジ

「私の名はデリングレンブラン、今から議会連合に地獄を見せる男だ」

 命を燃やしながら「総裁健在」を示して見せるデリング。総裁としての責務……というよりも、娘が戦場に出向いているのに眠っていられない、親の意地だろうね。

電気を大切にね!

 今の世の中電気は大事。電気代も馬鹿にならない。だからこそ、めっちゃ電力あると嬉しい。そう例え、送られた先が滅びても嬉しいはずだ。

L(ラグランジュ)1惑星間レーザー送電システム「ILTS」

 もうあるんかいソーラーレイやコロニーレーザーみたいなゲテモノ兵器! 誤射上等で盤面ひっくり返そうとする最低野郎どもに風向きが移りつつあるのやばいって。どさくさに全部壊して支配しようとするのはやり方汚すぎて辟易するわ。


窮鼠猫を噛む

 ベルメリアさんの声優『恒松あゆみ』さんは、ガンダム00だとマリナ・イスマイール役を演じていた。記憶が正しければあちらでも終盤に護身用の銃を握るよう促されたが、最後の最後まで危険であろうとも非武装を貫く、ガンダムWのリリーナみたいな平和主義を体現してみせた。

 だがベルメリアさんには非武装を貫く理由がない。護身用に銃を持っていなかったのはこれまで被害者の位置にいたからであり、未練がましく生き残る意地汚い精神が、戦って切り抜けるという選択肢を放棄していたからだろう。「もう逃げ場のない敵地」にいるなら、生き残るために持つのだ。逃げ道があるなら鼠はそちらに逃げるが、全ての逃げ道を塞ぐと死中に活を求めて猫にだって襲いかかる。これぞまさに、窮鼠猫を噛む。

 ハロのオートマトン化とかマリナ様とか、00味をひしひし感じる。


「今度は殺させはしない」

 ケナンジさんに5号君が言った嫌味は、マジでノレアのことでしょう。それとも「アンタはもう殺さなくていい」というひねくれた優しさなのかもしれない。

 どちらにせよ5号君としてはノレアの件であたりが強くてもよさそうなもんだが、そうしないのは「無駄なこと」とわかっているからだし、「そうされても文句の言えない状況だった」のも理解しているからなんでしょうね。大人や……

愛は不滅

 間に心があるから愛なんだ。「スレッタにはあなた達がいる」からと【割り切って】しまえる言葉には、心が挟まっていない。プロスペラの計画には色々と穴がありすぎた。どこかの選択肢が違っていたら、1つでも風向きが変わっていたらとっくの昔に頓挫している。

 好きな者のためならどんな修羅の道にも笑顔で飛び込める、危うくも愛しきスレッタが母親に立ち向かう理由は決して怒りなどではない。愛があるから。心があるから。データストームで死にそうになっても、そうすれば止める力を得られるなら、怖くても躊躇なくその身を差し出せる。眩く、すぐに散ってしまいそうな彗星の母親にミオリネは説教をする

「母親なら…等しく愛してあげなさいよ!!」

 色んな言葉を投げかけてもレスバトルでプロスペラに勝てなかったミオリネはここでようやくぐうの音も出せないほどの正論で殴りつけた。エリクトが自分の全てになっているプロスペラは、それ以外の一切合切に心を注ぐことを疎かにしていたのかもしれない。ただスレッタを愛していた気持ちは本当だったからこそ、割り切ったほうが幸せなのかもしれないと思ったのか? どうしてもすれ違う気持ちは辛い。

『How are our tomatoes』

 プログラムに仕込まれたメッセージの意味は「私達のトマトはどうかしら?」前回トマトにあったメッセージ『いつもアナタを見守っているわミオリネ』とはまた別の言葉。ここで言うトマトは2つの意味を持っている。

・トマトの遺伝子コード
・トマト(親子の愛)はまだあるか

「私も、愛している」と継承し続けてきたトマトの遺伝子コードをプログラムパスに入力。

プロスペラ「母は強しよ? お嬢さん」

 そう、母は強かった。

『I love you. Flom Mom.』

 死んでなお、娘の窮地を救えるほどに。

 神がかった作画で凛々しいエランくんが最後の最後でプロスペラの意表を突き、メットを射抜く。もう君が本物で良くない?

そのドテっぱらにハッキング!

 無防備になったクワイエットゼロの権限をハッキングするべく地味な電子戦。でもこれが1番確実に効く。

5号君「人殺しは向いてないね。【次から】は人助けにしときなよ」

 もう逃げてばかりではないベルメリアさんへのエールを送れるほど君は強くなったのか……ここまで死ぬ思いをしてでも行きたい場所、きっと綺麗なんだろうな。


さらばエアリアル?

 水星の魔女の代名詞でもあるガンダムエアリアル。送電システムの「誤射」を防ぐため、全てのガンドノードとエアリアルが盾になった。全ての企業体制を白紙にするはずの一撃がお釈迦になった。議会連合は責任だけを負う羽目になり、美味い汁を啜れなくなったペイル社は人体実験・謀反の件を、今回一切の出番がなかったシャディクによって白日のもとに晒され凋落するだろう。(今回の戦に関わっても活躍できなかっただろうし)

 でもスレッタにはそんな大人の交渉がわかるはずもない。世界がどう動くのかもわかるはずがない。今はただ、母を止めたこと、そして姉が死んだかもしれないことだけしか分からない。

 次回。水星の魔女最終回。

 また配信メイン勢は1日割りを食うのかよおおおおおおおおお!? ゔぉおおおおおおお!!!!!

※※この記事が面白かったと思った方はあと一手間、いいねのクリックで励みになります※※


サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。