機動戦士ガンダム水星の魔女 20話感想「胃液が出るほどの神回」
箱庭の終わり。
※この感想記事は「機動戦士ガンダム 水星の魔女 20話」のネタバレを含みます。視聴済みであることを前提になりますので予めご了承ください。
理念は水の星で死にました
エアリアル大暴走から端を発したクイン・ハーバーの事件。その余波は当然株式ガンダムにも、クレームという形で降りかかる。
「GAND医療で、みんなに、笑顔を...」と謳っていた会社のイメージは崩壊。スレッタも匿名メールから「君の社長ガンダムで人殺したがどんな気持ち?」と罵声を浴びる始末だ。よくわからんが叩かれるスレッタ、SNSもいいけど授業はキッチリ聞こう。
リリッケはミオリネにビンタ一発食らわしても良い気がする。
「若社長。まずはサリウス代表の確保からですよ」
「了解! シャディク! サリウス代表をどこに隠した!」
話聞いてましたか?! 頭に血が上りすぎて段取り間違えているよ! ケナンジさんとのバチバチの舌戦からの真っ向勝負にシャディクは当然すっとぼけをするに決まって
「お前がそんなんだからミオリネは!」とこちらも逆上していきなり仕掛けてくる。もう自分たちのことほぼバレていると観念しているわけでもないのに段取りが崩壊したのはきっと
自分をミオリネのナイトだと思いこんでいるからだろうね。キモチワル!
でもここでグエル先輩がまっすぐ質問ぶつけなかったらタイムオーバーになっていた可能性もあるので一概にダメ出しは出来ない。
ガールズVSドミニコス隊(手加減)
まあ、シャディクガールズは強い。強いんだけどさ。「相手が手加減してくれる」こと前提でイキっているの最高にダサいんよ……ドミニコスとはいえ学生を取り調べなしに殺すことは出来ないと知ってる。自分たちは容赦なく攻撃できるけど相手は違う。だからこの戦いはまるで、不良が先生に「ほら殴ってみろよ先生さんよぉ!」と相手の立場を理解して迫るふうにしか見えんのでだいぶ不愉快だった。
解放
クイン・ハーバーの映像を見たノレアが一気に逆上したタイミングで檻を解錠するシャディクは大罪人だ。その後、映画『RRR』で言う動物一斉解放シーンみたいな事態が起こることを承知の上でやっている。
「ここで5号君頑張れば悲劇は回避できたか」と言われたらまあ難しいでしょうね。この時点のノレアを説得できるやつなんてソフィくらいしかいないし、ソフィだとしても成功確率は極めて低い。
死亡フラグは立てれば立てるほど良い
ノレアの大暴走で学園は大惨事。建物も生徒も犠牲になり続ける。授業中だったスレッタも呆然としていたが、ノートを見せてくれたペトラが手を引いて助けてくれる。ペトラ……1話での印象からだいぶ変わったな。
逃げる途中で見つけた負傷者を背負うなどの善性も見せるけど、MS同士の交戦中に行動速度が低下するのは生存率を大幅に下げそうな行為だ。きっとそれを承知の上でやっているのだろうから余計な口は挟まないし、多くの人もきっとやるだろう。
「ラウダ先輩がデートすっぽかすからこんな目に!」
「謝るだけじゃ許さないし」
「好きなところ連れてってもらう!」
「ご飯もランチとディナー両方!」
「私は絶対もう一度あの人に」
この短時間に5つも死亡フラグを! 1つだけだったら死ぬかもしれんが、複数あると死なない不思議。
これって今空っぽのスレッタに刺さるなあ。やりたいことやるのって生きていることが前提なんだ。生きているうちにやりたいことがミオリネを救いたいとかなら、それは親の敷いたレールではなく自分で選んだ道なんだ。
両雄並び立つ
フェルシー出陣
各寮のデミトレも出撃しているようだけど、無人機のガンヴォルヴァ相手にさえ一方的な技量を見せつけられる始末。ラウダもペトラもいない中、再びテロリスト相手に戦わねばならない状況下、不安いっぱいでも「自分がやるしか無い」とハラを括れるのって頼もしい。
ニカ参戦
解放されたのはノレアだけではない、5号君とニカ姉もだ。セセリアのツテで試作型のデミバーディングを、チュチュ仕様にチューニングする時に活躍する。まあでも帰ってきたら万歳で済むはずもない。だって前回マルタンの口から、ニカはテロリストと内通していると皆知っている。
それでも「てめぇどの面下げて」と食って掛かりそうなチュチュを押さえてマルタンは「僕はもう一度君と話がしたい」と冷静な判断を下す。見ているかコードギアスの扇! これが仲間だ!! 結束のチカラだ!(なおスパロボで許された模様)
チュチュ出陣
「全部ちゃんと聞かせろよ。でないと、許すも許さないもないだろ」血は上っているけど暴力には至らない。オープンキャンパスのときもだけど、ノレアとチュチュは本当に対象的。
あの時チュチュは一線を越えかけたが、フェルシーの救援要請でどうにか踏みとどまり、今回もマルタンの静止で冷静になれた。暴走しがちな自分を止めてくれる人がいるってどれほど恵まれているのか、彼女らを見ていると身にしみる。
そして短時間でチュチュ専用にチューニングされたデミバーディングは、フェルシーを狙うガンヴォルヴァの頭部をスナイプ! 頭に響き渡るターンピックの音、むせる構図! 装甲騎兵ボトムズ好きにはたまらねえ! 採算度外視スペックとはいえ見た目は完全に量産機っていうのもラビドリードッグみたいでカッコいい。
「おいスペーシアン(フェルシー)。手伝え、コイツラぶっ潰すぞ」
助けてもらった上でこのぶっきらぼうな台詞、惚れるわ。小さく「ぁっ…」と呟くフェルシーちゃんが今回のハイライトまである可愛さ。
ふたりは
背中を任せて戦える戦友、今後ドンドン親密になるかもしれん。装甲の厚いMS乗りのフェルシー、火力重視の突撃スナイパー(スナイパーが前に出るな!)で良いコンビだ。でもデミバーディングって確か羽もあるんだが、今回はなかったな……これは重力のある地球に行く展開もありうるね。
グエルVSシャディク
出力制限を外してコクピット狙えるし、途中に増援も来るし、5分耐えれば勝ち。有利条件満載で負ける気がしないシャディク。でもBSSで脳だけではなく声も焼かれたのか何か声色が低い。ラウダが真相を知っちゃったのは結構曇りポイント。
「全部俺の罪だが全部お前のせいだ!」
「力がなければ理不尽な平和は崩せない」ということで自分の罪を肯定するシャディクだが、そうやって得る平和の先に何があるかっていうと戦国時代だよな。どう取り繕うとも、テロリストを支援していた事実や秘密裏にガンダムを作っていることを黙認していたこと、無用な戦火を地球にも学園にも広げたことなど、君の犯した罪は重い。そしてそれを、次世代の若者たちの死で成し遂げたのでは、いつまでも終わりなき憎しみの連鎖が広がる。
自戒して視野を広げたグエル先輩
地球生まれでその過酷さを十分理解していたはずのシャディクは理想を求めるあまり平和を打ち壊すような真似をする。対するグエル先輩は大人の視点で地球の現実を見て、一朝一夕では解決しない問題であることを知った。無論、武力を与えるとかパワーバランスを取るとか、そう単純な解決策では真の平和が訪れないということも。
自分の犯した大罪を背負い、目をそらさずに進み続けたグエル先輩が到達した答え
「何も分かってないんだな。奪うだけじゃ、手に入らない!」
またしても目の前の相手ではない、意識外からとどめを刺されるミカエリス。その猛攻に耐え抜いて、搭乗者がコクピットから脱出するまで爆散しなかったダリルバルデ。どこで差がついたかといえば、父から受ける愛情をどう受け止めたのかなのかもしれない。
それにしてもサビーナを瞬殺してシャディクも倒すとか、父親の残したAI執念強すぎではあるまいか?
逃げ道だけは優秀
なまじ賢いだけに、真っ向勝負よりも計略を主とするシャディク。負けても目的を叶えるように仕向けていたらしいが、君がミオリネから信用されないのってそういうとこやぞ。決闘やっているのに決闘に本腰入れんで、勝っても負けても美味しいを維持したい欲張り者。目的さえ達成できるなら穏便であっても生徒虐殺でもどっちでもいいとか考えちゃえる酷薄さ。
「(その頭の良さがありながら)愚かな息子よ」サリウスも沈痛の面持ちである。
君が手にして良い平和はこの世にない
一頻り暴走してもう命のロウソクが消えかかっているノレア。生きることを諦めている。そんな彼女に「逃げてもいいから、生きるのを諦めるな!」と逃げ恥論で説得する5号君。乗っている機体はルブリス・ウルってソフィの機体じゃないか。
嫌なことからは逃げたって良いと熱く語るアニメは『モブサイコ』以来だ。目を閉じたら鬼滅の刃でも聞けそうな5号君の説得に、ようやく心を開いてくれたノレアは、呪いではなく約束を結ぶ。「後で教えてよ。アンタの本当の名前」
刹那、閃光がコクピットを貫く。静止している間に射撃、図らずもノレア撃破に貢献した5号君だったが、この死は可愛そうだと思う以上に当然の帰結としか言えない。逃げるにはあまりにも人を殺しすぎた。憎しみを振りまきすぎた。生きて罪を償いきれないほどまで。
先程のグエル先輩の台詞がここに来て刺さった。
最後に5号君突き飛ばしたのは、狙撃によって爆散するかもしれないMSに巻き込まないためなんだろう。
5号君もそれは理解している、許されることはないと思っている、知っている。でも納得できない理不尽さに、あれほど死にたくないからスコアを挙げないといっていた彼が、ガンヴォルヴァ起動できるくらいスコアを上げた。そして逃げた。命惜しさに逃げると言うよりも、何かを成すために逃げたのかもしれんと私は勝手に思う。
ペトラは死んでないよ(望み)
一見死んだように見えるけど、この作品の死んだときって「もう手遅れ」感が見てわかるから、そうなっていなければまだ生きている可能性も高い。目から光を失ったシーシア、パーメットに侵食されすぎたソフィ、末期の言葉を述べたジェタークCEO、明らかに潰されたトマトの人、フォルドの夜明けの名もなき奴ら、PROLOGUEでの惨事等。
今回死んだ学生たちも、瓦礫に押しつぶされていたり付き添いが嗚咽していたりと、そういう印象的な場面を用いている。
もしもペトラが死んでいるならこの作品の見せ方としては、うつ伏せで力なき手と髪と血が瓦礫からはみ出しているくらいの描写がある。或いはシーシアみたいな虚ろな瞳を見せるなど。だから彼女は何とか生きているよ。きっと、多分。
スレッタ、大地に立つ
親しくしてくれた人でさえ血を流し倒れた。スレッタの精神はボロボロだろう。それでも瓦礫の撤去に一所懸命になっているのは、水星で培ったレスキュー精神と、彼女本来の善性が2本の足に踏み込む力を与えるから。
「進んでも得られないことがある」
「奪うだけでは何も得られない」
「チカラがなければ救えない」
突きつけられる数多の理不尽。敵は母とエアリアル。対話での決着か、それとも。
おまけ(2023/06/05 21:30追加)
シャディク「ダリルバルデはぁ!金縛りにする!」
サビーネ「コピー!」
シャディク「完全無敵論破ぁああああ!」
何か勢いに飲まれそうになるけど熟考したらよくわからん理論武装
シャディク「グエル・ジェターク、ミオリネを生涯支えるのは俺だ! ブレードアンテナの前にその生命貰い受ける!」
グエル「このダリルバルデ凄いよぉ! 流石AIのお父さん! ミカエリスの人気は全てもらっている。いつの間にか出番のないファラクトのようになああ! 分かっているのかイエール・オーグル!」
シャディク「身バレはやめろォオオオ!」
グエル「プリンス様である!!」