綾瀬川晴美の復活 解説&感想記事
無事に書き切ることが出来た。終わり方はいろいろ考えたけど、タイトルを回収した以上はあれでいいと思っています。
さて。この記事は続編でも番外編でもありません。物語を書き切った記念の記事です。【綾瀬川晴美の復活】という物語はあれでおしまいです。
・各キャラクターの解説
・物語を書こうとした切欠
・各話の解説及びメッセージ性
・選曲理由
・転生などに思う事
(上記を順不同にやっていきます)
「そういう裏話興味ある」という方向けです。
文字数はそんなに多くありません。
物語を書き始める切欠
前後半含めて8話の長尺になりましたこの度の小説。Vtuber界隈における転生等を題材にしようという思いで書き始めたのが切欠です。この界隈の転生(元のガワから別のガワに移行する行為)は結構忌避されており、企業勢の転生は特に嫌悪の目で見られることも多い。それはVtuberというコンテンツが独特で、【声・姿・性質】の三位一体で成り立っているからです。
アニメのキャラとどう違うか? アニメのキャラは【声・姿・役割】の3つであり、重視されるのは【役割】です。声優が変更されても、作画が崩壊しようとも、苦情はあるでしょうが作中の活躍自体に問題なければ酷く叩かれることはありません。
Vtuberは前述の通り【声・姿・性質】であり、転生すれば【姿】しか残りません。会社としても、新たな声と性質を入れることは中々難しく、大枚はたいた容姿を獲得しても、引退や転生などで中の人を失えば、2度と使うことは出来ません。
ですが、いつまでも転生問題にこだわり続けたって始まらないですし、別に転生したっていーじゃんと言う空気に持って行く一助になれる……わけないけどそんな野望を抱いて見切り発車で書き始めたのが、綾瀬川晴美の復活という物語なのです。
元々は3話で終わる予定だった
赤さんの本名は最後まで出ませんし、赤とか青とかめちゃくちゃ簡単すぎる名前だなと思ったのではないでしょうか。
実は物語の構想段階で5色いて、綾瀬川晴美のガチファン戦隊で、赤はスパチャレッド、青はblenderブルー、緑は草生やし(コメ欄盛り上げ)、ピンクはエロ絵師、黒はステマ。それぞれ得意分野のあるスペシャリストで、晴美を支えようと決起するまでの1話。
続く2話目の前半はそれぞれの協力で着々と進むのですが、後半は意見の食い違いや復活後の活動などを巡ってがやがやする展開に終始、不和不和タイムで終わります。
で、最終話では見事一致団結、転生を果たした晴美を見てうんうんと頷いて終了と言う山もなければ落ちもない物語でした。結局1話を書き進めている途中で「いやこれおもしろいか??」と自問自答する羽目になります。省略しがちな文面で行かなければ5人の物語は描き切れないので、そこは嫌でしたし、何よりこの展開で行ってしまうと綾瀬川晴美の出番はほぼほぼないです。
「ファンの力で無理やり復活させればいいんだ」という誤ったメッセージを発信させることになったら責任を負いきれないし、あくまでも中の人が復活をしたいのならと言う前提がなければ、当然復活などしない方がいい。
という諸々の事を鑑みて、綾瀬川晴美主体で進めることを決意。赤さんは影の主役であるけど、主役は綾瀬川晴美。そうなると綾瀬川晴美のバックボーンも、どういう人物なのかも、深く掘り下げる必要が出てくるし、じゃあ何故彼女を雇うことになったのか、何で引退することになるのか等、整合性を付けるには数多くの項目がありました。
よって、3話で終わる夢は早々に捨てました。結果的に2.5倍の長さになってしまいましたが致し方なし。今回の経験を得て、次回は全部書いてから投稿しようと心に誓うのでした。
各話の解説
第1話:Vtuberの重大発表は天と地のどちらかであり、発表される頃、視聴者はある程度の覚悟を持っています。何故ならそれまでの活動で、大体推察できるからです。頻繁に活動しているなら引退はほぼありえないし、ツイッターなどが静かな日々が続いた後に来ると、大体は引退です。引退理由は会社との不和以外にも、山ほどある中から選ばれたものでしょうから陰謀論や運営ブラック説を吹聴するのではなく、その引退とどう向き合うかをまず考えるべきです。タイトルに【綾瀬川晴美の復活】とあるように、彼女はここで1度引退と言う死を迎えます。赤さんは復活を望む晴美の意思を聞き取ったから奔走するのです。もし、復活を望まなかったら、寂しさを何か別の者に求めていたか、スッパリ割り切って仕事に打ち込んでいたことでしょう。
第2話:現実でVtuberと出会うと、まるで容姿が違うのが殆ど。ですのでギャップは大なり小なりプラマイ共々あると思います。そのため地の文にもそういう注意があります。綾瀬川晴美の場合は特殊で、本人の気質的に「自分」というもので勝負する気概が強いため、ガワも同じでした。……というのは後付けで、2話を書いている段階ではたまたま同じ容姿だったということで物語をスムーズに進めました。何も考えていなかったことですが、後付けによって性格声質の補強が出来たので良しとします。因みに赤さんの家の防音室は何度か使う予定でしたが、本人の部屋が既に防音だったので不要になりました。余談ですが、赤さんのように淋しさの極限だからといって、盗聴するのは勿論犯罪です。この作品はフィクションですし、晴美はあの性格なので赦しました。
第3話:青さん登場回ですが、これはアンチ視点からのVtuber論回です。Vtuberに夢を見て楽しむ私たちとは違い、Vtuberという文化そのものが持つ暖かさを、ぬるま湯のようだと忌避する立場。でもそういう意見だってあって良いと思いますし、キッツい言葉だからって何でもかんでも否定しては、重要なことなどを見逃してしまう。何よりまだまだ成長過渡期のVtuber界隈だからこそ、成長につながる要素は必要なのです。……まあ、見ず知らずの人にいきなり誹謗中傷表現で手向かう相手はスルーで良いと思いますが。実はこの話を5000文字程度書き切っていた時に、青さんと赤さんが口論し、赤さんが激しい舌戦の後で言いくるめるというシナリオを想定していたものの前述の「アンチがいても良い」という考えに基づき、すべて削除して書き直しました。書き直さなかったら渋々手伝っていたかもしれませんね。
第4話&第5話:全編通してアリアを主役に据えた回。1,2,3話通して、ほぼ人間だけが主役だったのに対し、4,5話はアリアという別のVtuberを主役にすることで、私たちファンから見た綾瀬川晴美と、Vtuberとして見る綾瀬川晴美の比較をする。赤さんと青さんどころか、熱心なファンの名前すら出てこないので、アリアの精神状態がいかに追い詰められていたかを如実に表しています。当初は登場すら想定していなかったキャラでしたが、晴美があんなあっけらかんとした適当にVtuberやっているキャラなので、Vtuberの苦労を示す存在が必要でした。
夜遅くに行う配信業、不規則な生活、不摂生と、慎重に慎重を重ねるツイート等。精神的な摩耗の激しいであろう企業系Vtuberにおいて、アリアはVtuber界隈の最初期に尊守されていた【キャラ重視】で臨んでいました。ですので、自分の持つ特性と、キャラクターの持つ特性、そしてファンが求める自分の3つの側面に気を使っています。故にアンチ的な意見も感情的に処理出来ず、吐き出すような対象もいない、そもそもそういう姿をファンは求めていないのです。劇中ではその疲労とストレスがピークに達しており、心が砕けてしまう寸前でした。もし。心が砕けたらそれでも配信をしていたでしょう。自我を殺して【アリア】という存在が成り代わって。
第6話:ファンが見る綾瀬川晴美。アリアから見た綾瀬川晴美。では綾瀬川晴美を最後に観測するに相応しいのは誰かと言われたら、綾瀬川晴美本人に他ならないのです。というわけで、綾瀬川晴美の過去話を挟みました。ぶっちゃけ、過去編なんて1ミリも考えていませんでしたので、これまでの行動に則った過去を構築して語っています。こんな強い女になったその理由は何かを突き詰めた結果です。しかし彼女は作中でも触れましたが、強くありません。強いけれども脆さもあり、そこを人生の師匠に酒滝行にて諭されました。綾瀬川晴美の引退理由はここでも明らかにしませんでした。それもそのはず。「どうして引退したのか私も知らなかったからです!」。いや、想定していたのは、「半年で5万人に届かなかったら引退する」程度に考えていたのですが、この子がそんな数字を口に出すかと言えばそんなことはなく。つまりこの6話は私自身知らなかった晴美を描いていたのですよ。めっちゃ時間かかったのはそのためです。
第7話前半:まとめたら絶対長くなるだろうという事で、前後編に分けました。前半は各人物の行動に終始して、復活のためにどういう経緯があるのかを示しています。で、実は没になった出来事がありまして。綾瀬川晴美の絵師様と、赤さんによるVtuberへの愛談義がありました。ですが、これは必要ないと思ったのでボツ。この物語はあくまでも綾瀬川晴美のものであり、赤さんとて影の主役です。赤さんたちは復活のおぜん立てをするファンであるため、3話を境に過度に出しません。主張も、綾瀬川晴美のことが好きで一貫しているのは既に分かっていることですので、今更捻じ込む必要はないのです。アリアが酒配信を始めたのは完全に晴美の影響で、元々のキャラ重視を壊したことで復活をしたことを意味しています。
そしてこの第7話のみ、何故か漢数字になっていますが、これは晴美がユーチューバーにもなるという変化の伏線だったんだよ!!! ……という壮大なものではなく、単なる入力し間違いです。しかし変化の伏線としてはありかもしれんと思ったのでそのままにしました。
第7話後編:前作からリアルタイムで2か月程度空けて復活する。私が中々筆を手に取れなかったってのもありますが、この長い期間の後の復活はある意味演出にも貢献しているので気にしません。と言うのも皆さま、意中だったVtuberがいなくなって、半年経った時唐突に復活するとなったらどうします? もちろん喜ぶでしょうけど、前と同じくらいの熱量で推せますか? きっとその期間Vtuberファンを続けていたなら、別の推しが沢山出てきていると思います。リソースを割く余裕がないかもしれない。去る者は日日に疎しというのは本当で、前と全く同じように接する人は稀だと思っています。それでも推す人が多いのがまあ、創作物だからと言うのもありますが、彼女自身の持つ我の強さ故でしょう。
半年間の空白後に登場する綾瀬川晴美。彼女の転生後はどんな姿になるのか、名前はどうなるのかも既に決めていました。炎上することが多い火属性で、それでも涼し気に立ち向かう姉御肌で、配信も媚びない姿勢、やりたいことをやっていく。かつて。Vtuber界隈の最初期に実在したVtuberの中に、【天使】と呼ばれる方がいました。Vtuberたちの引退の、その初めては彼女でした。もう2年ほど前になりますが、未だに彼女はどこかにふらりとやってくるのを信じているので、私自身は誰かが引退とか言われても「またどこかで」という気持ちでいつも送り出しています。ショックはショックですが本人の意思を捻じ曲げてでも残ってほしくはないので。
選曲理由
第5話にて、歌とかロボとか青春とかがメインの作品のEDテーマを扱いました。ちょうど私がマクロスフロンティアの曲を色々知る中で、一番カッコいいと思ったのがこの曲なのです。これは第4話を構想段階で、これをもとに動画にしてみようと閃きました。努力家のアリアならば動画も作れるという信頼があったので、作れた理由は後付けと違います。
最終話で晴美が歌う曲は当初、歌で世界を救ったり、やたら熱血要素多かったり、奈々様の曲が毎度物語の最終奥義名に使われていたりする作品の最終作OPで行こうと思っていました。熱い炎の中をくぐった晴美が、新たな体となって炎の中踊り狂うというイメージです。ところが、第6話の晴美の過去を書いたことで、イメージがぶれました。このまま、晴美がVtuberとして再スタートを切る……だけで終わって良いのかな? と。
晴美が辞める理由を想えば、それだけでは終わらないし、アリアへのアンサーソングとしてはあまりにも勢い任せになっている。ですので、急遽差し替えて7話後半に描きました。習字アニメのOPです。迷ったり考えたり立ち止まったりする中でも前に進みたくなるような歌でしたので、実に彼女らしい選曲だと満足しています。
各キャラクターの解説
赤さん:僕の考えた最強の石油王。金で札束ビンタして復活を迫るようなキャラではなく、復活対象の意見を尊重し、段取りを付けて方々に金を撒いて経済を回していく。そういう自分の欲望と他者への投資などの深根に思い遣りを感じるような人物になりました。構想段階から決まっていたキャラクター性とほぼ変わりません。裏で手回しはするけど裏表のない好漢。
青さん:黙々と3Dを生み出していく寡黙な頭脳……というのが構想段階だったのですが、実際にはアンチVtuberに片足突っ込んでいた中途半端な技術屋と言うキャラになりました。おまけにネット番長と言う、普通にならあかんようなキャラ付けです。次第に健康になったり仕事が増えたりして、彼自身も復活したといえます。
アリア:【Vtuber蟲毒】のことを思いながら出来上がったキャラです。魂だけが評価の優劣基準である蟲毒で敗北したことにより、自分のキャラではなく次はガワのキャラに合わせようということで、アリア・ヴェール状態になりました。実のところ運営からは「実力は抜きん出ているけどメンタルが心配」と評価されており、その少し後に現れた晴美の登場で「この子とデビューさせよう」という判断になりました。Vtuberという存在に可能性を抱きながらも、ある意味憎んでもいたようなキャラであり、描いている内に魅力が高まっていきました。元々出る予定すらもなかったキャラでこれは良いなと思った次第です。これだから小説は面白い。
綾瀬川晴美:本作の主人公で、実在したVtuberの【天使】を若干モチーフにしたキャラです。言いたいこと全部言ってくれるようなキャラですので、描くのが非常に楽しいし爽快でした。彼女の言葉は、Vtuber界隈に対する意見の1つと思ってみていただけると幸いです。ここで語るほどの裏話は特にありません。本編で語りつくしたので。
赤さんの家のお手伝いさん:防音室を使うために晴美が訪れる際、何度も出そうと思っていたキャラです。が、晴美が防音室を不要としていたので出す機会が殆どなかった……。赤さんの身辺をサポートするお手伝いさんでありかなりビジネスライク。武術も凄い。……待てよ? 今考えたのですが、いっそ彼女にVtuberやらせればよかったんじゃないか。いや、それだと何を伝えたい物語なのか散漫なので書かなくて正解です。
人事部長:苦労人。社長やCOOに振り回されているけど縁の下の力持ちポジション。作中ではそれを活かせる場面が少なかった。
親方:晴美の人生の師匠であり、今も交流のある人物。配信は見ようとしたらしいが、PCが分からなかったので後日やって来た晴美に見せてもらった。親方曰く「楽しそうじゃねえか」と満足げに語っていた。
絵師連合:出す予定だったけど全然出せなかった、晴美の絵師達。彼らが復活を最初に知るポジションだったけど、テンポが悪くなったのでその部分バッサリカットさせていただきました。
転生に思う事
推しが生きている。そして再び活動を初めている。転生って良いじゃん。不満があるとすれば元々のガワでやってほしいとか色々あるでしょう。けれども私は最初の引退をこの目で見たときに、何の形でもいいから復活をしてほしいと願った勢なので、この時の衝撃や、実際に推しを失ったりした人にしかこの気持ちは理解できないかもしれない。理解しなくても良いし、そうならない方が一番最善です。
転生に不満はないです。この物語を書いている時に、実際の企業で引退後に別の団体へ転生したという例を2つほど見ています。恐らくどちらも、より自分のやり方にあった場所に移っていっただけだと思うのです。彼女たちの事を推している立場だったら、その選択を尊重したいし、行く先に幸あれと願います。だって別段悪いことして去ったわけじゃないんですから。
最後に
完成まで時間がかなりかかった本作。Vtuber界隈に対する想いとかも載せたら結構なボリュームになりましたが、それでも最後まで読んだ下さった方には本当に頭が上がりません。次回はVtuber小説ではなく、オリジナルで行きます。必ず完成させてからの連載にしますので、今度やるときはお待たせすることはないでしょう……多分。
なお、Vtuber関連の記事はどんどん上げていく予定です。流行り始めて2年とちょっと、まだまだこれからの界隈ですので、皆さまどうか色々な目線から彼らを見てやって下さいませ。
それでは、また次回お会いいたしましょう。サラバっ!!
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