夜のクラゲは泳げない2話「めいの推しごと」感想
姿は変わっても 変わらぬ推しがある
前回のあらすじ
量産型女子高生として過ごす光月まひるの元に現れた、強い光を放つ元アイドルの花音。ずっと昔に沈めた自分の【好き】をサルベージされたまひるは、覆面アイドルの爽やかな復讐劇に加担することになった。
※この記事は【夜のクラゲは泳げない2話】のネタバレを含みます。
今回のあらすじ
花音がアイドル時代の頃からの熱烈な古参ファンが、みー子のライブ乱入配信を入口に居場所を特定した。狂気ともいえる厄介ぶりを披露する彼女にとって、推しの存在はまさに生きがいだったことが明らかになっていく。
消された写真
どこかの音楽学校だろうか、ピアノ演奏の試験に挑む黒髪の子がいた。試験直前、スマホの写真を消す彼女。映っていたのは黒髪のアイドルと明るいオレンジ色の髪をした女の子。友達との大事な写真のはずなのに消してしまった……関係性が見えてこないが消した瞬間の何とも言えない顔が印象的。
OP
かつて好きを信じていた己と向き合っているエモいOPだ。きっと最終回が近付くごとに破壊力を増すと私は見た。
乗っ取り成功です!
勢いで乱入したみー子のハロウィンライブ配信が伸びている。タイトルは
『仮面女に路上ライブ乗っ取られた』
あまりにも商魂たくましすぎて草。自分のハロウィンライブだったのにタイトル返上してでも再生回数を稼ごうとする貪欲な姿勢は嫌いじゃない。登録者数2523人というのも何だか妙にリアルだ……有名なVtuberやYouTuberを追っている人にとって登録者数1万人以下は少ないと思うだろうけど、後ろ盾無くここまで伸ばすのは並々ならぬ努力を感じるし、CDを販売できるくらいには根強いファンに愛されてここにいるのも分かる。
ただコメント数7000は異次元過ぎて笑える。
恥ずか死
勢いで言った恥ずかしいセリフに後で悶絶する……あるあるですね。妹の佳歩からも見られてからかわれるけど、「お姉ちゃんがようやく昔のように生き生きしている」のが分かってご満悦だ。そうだよねえ、生き生きしている人を見ていると自然と元気が出てくる。
バイト?
め、面接は?! というか、この店なんですか? 公式HPで調べたらカラオケバーのバイトで、今のきれいな人が店長の保奈美さんか。……なるほど、2人で軍資金稼ぎをして動画制作の足しにしていくってことね。受験を控えていても世知辛さは変わらぬよな。
「私の好きなヨルの絵だ!」
JELEE(ジェリー)のキャラクターを描くまひるちゃん。イメージイラストがクラゲと人間のハイブリットで、なんというかVtuberっぽい。ぷにぷにして質感もよさげ、可愛くて愛らしい神デザインだ。
……ところで花音ちゃん、どこに句読点を置きますか? 「私の好きな、ヨルの絵」「私の好きなヨル、の絵」どっちだ!? ええいどっちだ花音ちゃん!! 私、気になります!
完璧な計画
11/10 激エモ歌詞完成
11/17 最強イラスト爆☆誕
11月某日 神曲堂々降臨!
某月某日なる早 超ヤバイMV完成、超バズる!
なるほど、完璧な作戦っすね。かなり無理していることに目を瞑ればな!
とりあえず現在の動画平均再生回数は2ケタだからバズは期待できないものと考えて……、イラスト担当のまひるちゃんがいるからその不安はないでしょう(発注日時を考えて欲しいけど)。問題は作曲とMV。作曲は時間をかければ形にはなるでしょうけど、MVは個人製作するハードルが高すぎる。学校行きながら片手間に作る時間よりも学ぶ時間の方がかさみそうだ。今月中にどうにかするのはまあ……2人しかいない現状は不可能でしょうな。
「ありがとう愛してる」
無茶なスケジュールにダメ出しはする。でも協力は惜しまない。まひるちゃんは良い子だ……花音ちゃんが抱きつきたくなる気持ちも分からんでもないよ。ご馳走様です!
スパチャ直差し10万円
機材……90万円。高校生の間に稼ぐのは無理だな。兎の庭園でバイト……は体つき的に難しいか(年齢的にもアカン)。このままでは絶対に足りないとあって
花音「仕方ない、かくなる上は」
〇〇「ん、銀行を襲う」(幻聴)
花音「秘密兵器 募金箱!!!」
路上ライブで稼ぐか? だったらみー子先輩にご教授願いにでも行くかな? だっているわけないじゃん、いきなり名も知らぬ子たちに投資してくれる大富豪なんて
つ「10万円」PON!
く、黒髪の子が、プラットフォームを介さない直のスパチャを!? 何者!!?
橘ののかの厄介オタク
サンドー(サンフラワードールズ)時代からのファンで、CD・DVDは各5枚ずつ持っていて、その姿は……かつての橘ののかと瓜二つ。推しが好きすぎて推しの姿になっているヤバさMAXだ。ガチ度合いがただのファンと乖離しすぎている。
特定方法:先日のライブ乱入切り抜き動画(OR短時間配信)の横顔から見るライン。で本人と断定。覆面アイドルJELEEで検索しSNSアカウントも特定。バイト先で撮影した写真に会ったお店専用のコースターで位置特定。
「(引退を)認めません」
からの机ダァンで始まる『橘ののか』への激烈な愛とその姿かたちの良さにキャラクターとしての在りようの押し付けが、20秒の間にギュッとつまっている。コワイ! 子の愛が反転したらとんでもない呪物になってしまいそうだ。
まひる「厄介なタイプだ!」
ほんそれ。
こんな変なバッグ実は
個人的に見た目が黒髪姫カットで私の好みすぎる謎の厄介オタクさんは、なんとも味わい深いデザインのバッグを持っている。これ……ののか時代に作ったノベルティバッグ? この頃から独自のイラストセンスを持っていたようだ。
しかしまひるちゃん、これで分かったでしょう。あの時自分の描いた壁画を「変」だと言った子達も、そんなに悪気がなかったってことを。
NOT 橘ののか
「【ののたんが】再び起ち上がるための準備金10万円」
を、花音は突っ返した。この厄介オタクちゃんが望んでいるのは、再起を誓う山ノ内花音の成功ではなく、かつて自分の推しだった【橘ののか】の再来なのだ。
この愛の貢はまさに「解釈違い」であり、今を生きる花音からすれば到底受け入れられるものではない。
花音「残念だけど、橘ののかはもう、いないんだ」
突き放すような言葉にしばらく沈黙し、厄介ちゃんの口から出た言葉は「嘘つき!」だった。……嘘つき?? 何か約束をしていたのだろうか? でもこの子とは初めて出会ったはずなのだが、いったいこれはどういう
それも金
花音「受け取っとけばよかったああああああああ!!!」
ええ…(ドン引き) あんなに威勢よく啖呵を切った割には未練がましいじゃないか。やはりこの世は金ののか……。10万円は大金だが、それを得ると色々取り返し効かないので返して正解だよ。
お荷物交換
同じ柄のノベルティバッグを意図せず取り違えてしまった花音。バッグの中には……音声録音機材が……! 盗聴!? いやいやそんなやましい事はありません断じて! これは事故、事故なんです!
厄介ちゃん「すぅうううううううううううううううううううううう」
当然のように推しのニオイをジャージから摂取するな!? 少しは悩みなさい! でもあれだけ「嘘つき」と叫んでもこの反応ってことは心の奥底から橘ののかを愛しているんだろうなあ。反転アンチになる気配はないのが救い。
Vtuber竜ケ崎ノクス
ゲーム配信画面を見て「あっ、Vtuberだ」となるのは時代を感じる。今ではすっかりおなじみの光景になったんだなあ。タテキタの生徒会長、受験、コメ欄の速さからして人気Vtuber! いやいや……やっぱり多忙すぎるでしょうって。設定盛り過ぎではございません?
ガチ
荷物から通学先を割り出し、待ち伏せをする2人。押しに包まれようとジャージを着ている厄介ちゃん。こんなところで変態性をアッピールするなって! 返す時にもマシンガントークするくらい推しへの愛が留まるところを知らない。解釈違いであるとはいえそれでも推しの今やろうとしていることは知っているし、花音から褒められたら歓喜の衝動を得るくらいまだまだ大好きである。
そんな彼女の名前は【高梨・キム・アヌーク・めい】公式HPによればドイツ人とのミックスらしい。
花音「高梨さん、私たちJELEEに曲を作ってくれない?」
ここに【橘ののか復活のために】を付ければ当然一発OKを貰えただろうが、それはもう過ぎた話だ。今でも高梨さんの中には、色濃く推しの姿が残っている。
Vtuberで言う所の「転生」に近い。好きだったVtuberが引退して、別の姿で復活を果たした時に「自分が好きだったのは今の姿ではない」と、「同じだと理解しているのに」どうにも受け入れがたい戸惑い。
高梨さんが推しを「山ノ内さん」と呼んだことで、本当に推しが消えてしまったという現実を受け入れてしまった。試験に行く彼女に、学生証を返しそびれた2人。しかも卵かけご飯の汚れまでついて髪部分が隠れてしまったではないか……というアクシデントで、
木村ちゃんの物語
日々厳しいレッスンの末に身に着けた音楽センス。音楽学校に入学し、ひたすら頑張って、しかし友人らしい友人は出来ないばかりか周りに合わせることも出来ずに孤立して、名前の「キム」も変と言われる。そのストレスの行き場が音楽に……とはならない。
割と神経すり減らしながら生きていたであろう日々の中で出会った、まだまだ営業を頑張っているサンフラワードールズの橘ののかに「顔が良い」と引き込まれた。名前を尋ねられた時に、思わず「木村」と言ってしまったことが全ての始まり。
……本当に……今の高梨さんとかつての花音は瓜二つの見た目をしている。しかし明るさ満点のひまわりなののかとはまるで正反対だ。共感して、ボケと突っ込みと、2人だけの秘密の話、絶対に意識していないであろう巧みな話術は木村ちゃんを掬いあげてガチファンへと昇華させた。
木村「ふへ」
いかん! 可愛くないオタクの鳴き声が聞こえた!
3つの約束
「いつか木村ちゃんの演奏を聴きに行くね」
「私はファンを絶対に一人にさせないって決めているんだ」
絡めた小指。「はい」の言葉に滲み出る陶酔感が、説明不要なほど愛に満ちている。そうして撮ったチェキにかかれた『いつか有名になって私の曲を書いてね』の言葉。この日約束した3つの、全てがもう叶わないという残酷な現実を前に「元に戻っただけ」と平静を保とうとする高梨さん。
しかし人間は、満たされない日々を耐えることが出来ても、満たされていた日々を知ってから全てを失うのでは耐え難い苦痛を伴う。明日以降はどうにか立ち直れるかもしれないが、今日はもう無理だ。涙で視界がぼやけるほどダメージを負っている。2話冒頭で消した写真ってそういう事だったのか……
「約束は守ったよ、【木村ちゃん】」
試験演奏の直前。高梨さんの事を思い出した花音は、その演奏を聴きに来た。1人に戻りかけた彼女の手を取るように大きく呼びかけた。
君が花音でも ののかでも
木村ちゃん。その名を知っているのは、橘ののかだけ。山ノ内花音として生きている=過去の一切を捨ててしまったと思い込み「嘘つき」と叫んだ高梨さん。違った。
姿も名前も立ち振る舞いも全て違うのに、自分の事を1ファンではなく、色んな約束をした木村ちゃんだと覚えてくれていた。
そんなかつて橘ののかだった推しの姿が被るのだ。
姿も名前も立ち振る舞いも全て違うのに、心の底から愛してやまなかった存在が自然と1つに溶けた。
何もかも変わり果てたのではない。変わったのは表面的なものでしかなく、推しは今なお変わらずに応援してくれる。
最愛の推しで
推しが応援してそこにいるんだ、恥をかかせるは推しへの裏切り。怖いものなどない。約束は2つも果たされたのだから。
最高に好きな物【推し】が出来た木村ちゃんは無敵だ。打ち込んでいた音楽に、推しとの約束を果たすための技術アップ目標が出来て、日常が極彩色で溢れて止まらなかったのだから。金賞のトロフィーとかが霞むほどに入れ込んでいた、作曲だって頑張っていたけど苦になっていなかった。
「ののたん!! ののたん!!」
普段大人しいけどライブの時ははっちゃける高梨さんは愛しさ抜群。こんな日々がずっと続くと思っていた矢先に、引退という事実が重くのしかかったのだ。
高梨さんの絶望がどれほどかは察するに余りある。
だから例の乱入動画で推しを見つけた時、どれほど舞い上がったのかも想像に難くない。解釈違いだとか失礼な事を言ってでも、どうにか元の彼女に戻ってきて欲しかったのだ。
君の存在が
「ののたーーーん!!!」
演奏が終わり、試験官に一礼する一瞬すら惜しむように走り出す。推しは約束を果たしてくれた。覚えてくれていた。今自分を受け止めて頭をなでてくれた。
だから今度は、【木村ちゃんがした約束】を果たす番だ。私はこのシーン、何度も見て、何度も涙が出そうになる。一途過ぎた想いが報われる瞬間。色々な障害は『好き』の前に何の意味もなさない力技の推しごと。最高です。
私のハコ
こうして仲間になった高梨さん改め、木村ちゃん。作曲が入り、これで残るはMV。それを解決してくれるヒーローはどこか? 今日も配信しているのかもしれない。
新しく出来た『まひる』『花音』と一緒に写真を撮った時、彼女は確かに笑っていた。冒頭で写真を消した時の表情と完璧に遂になっている美しい締め。1話の完成度も高かったけど、2話はもうそれを超えるやもしれん。
情熱的で面白可愛い木村ちゃんがただただ愛しい。このアニメ、私の推しです!