THE BATMAN ネタバレあり感想

色んな意味で無敵の男なブルース

※この記事は、現在上映中の映画『THE BATMAN』に関するネタバレを含んでいます。まっさらな気持ちで映画を見ることをお勧めしますのでご注意ください。

※上映時間3時間あるのでトイレは済ませておくように。

MCUと雰囲気が違う

 ジョーカーという作品を見た方ならばわかると思いますが、この世界には異星人の侵略や魔法使いの介入、スーパーヒーローチームによる自警団なんてものは存在しません。

 本作はそういった超人的戦闘能力を有するキャラが敵にも味方にも存在せず「銃がジャスティス」みたいな敵が多いです。リアリティ方面に寄せてるため、キャプテンアメリカみたいに肉弾戦で争うなんて大味なことは出来ません。

 ただしバットマンのみ有り得ない強さを持っています。どう考えても世界観を間違えているとしか思えないほど。

バットマンの戦闘能力

 ジョーカーでは主演の方が細い背中に骨の浮き出た肩甲骨を見せる描写が印象的でしたが、バットマンの背中はマッシブです。あと少し鍛えたらキャプテンアメリカになれそう。

 基本的に徒手空拳で銃を使わず、複数相手でも果敢に挑んで堂々と勝つ横綱相撲。身のこなしや戦い方からして相当の修羅場をその身一つで乗り越えてきたことが伺える。

 ワイヤーを使って移動や拘束など、道具を用いての戦闘も達者。身に纏うスーツは至近距離のライフル弾を貫通させない強靭さ。ハンドガンを握った輩が束になっても、その防弾性能のおかげで負けない。

 それらを可能にするのが鍛え上げた体。近くで爆発が起きても少し気絶するだけで致命傷に至らないワンピース次元のキャラとタメ張れるくらいタフネスある。いくら防弾性とかに優れたスーツがあるとはいえあの距離で口元にもダメージはいらないのは流石に笑ってしまうほど強い。

その精神

 ぶっちゃけて言うと「私たちの世界でいきなり強面の黒スーツマンが現れて、それを正義の味方と思えるか」。ただのイカレタコスプレ野郎と断じられるのがオチでしょ。

 本作のゴッサムシティは治安以外は現代に近いため、彼の異質さは際立ちます。黒いスーツで自分がヒーローとして、恐怖そのものとして君臨する。これは怖い。初登場シーンで「正義のヒーローきたあああ」ではなく「やべー奴が出てきた!!?」と思ったのは私だけではないはずだ。

 彼は「目的遂行のためなら自分の命すら厭わない」メンタル崩壊状態。先に述べた常人を超える戦闘能力に加え『これ以上失うものはない』というジョーカーと同じようで全く違う【無敵の人】なので、肚の座り方も異常。一歩間違えればヴィランサイドの人間だ。

カーチェイスシーンはどっちが味方かわからない

 唐突に出てきたバットマンの改造車にワクワクが最高潮になったが、その後の狂気ともいえるカーチェイス、そしてその終焉が最高に怖い。もちろんバットマンが勝利するんだが、私たちは敵の目線で

 爆煙や燃える炎でむせそうな景色を背にゆっくり歩み寄ってくるバットマンを見ることになる。スゴクコワイ!! あのシーンはカッコいいけど怖さの方が上回って変な笑いが起きる。

割と他人の命がどうでもいい

 首に爆弾を巻き付けられている人がいるのだが「助けてくれ」と懇願されても冷静に分析したりするばかりで、「切断は出来ないか」という問いにも「首ごと切断すればいい」とブラックジョークを言う始末(多分ユーモア目的での発言ではない)。不覚にもここは笑ってしまった。緊迫感が失せたので感謝したい。

本作のヴィラン

 事あるごとになぞなぞを仕掛けてくる奴。多分私は1問も解けない。

 スパイダーマンみたいに強靭な肉体を持っている敵……ではない。そんな奴は登場しない。ガスマスクみたいな覆面被って配信する愉快な奴であれば承認欲求満たすだけで平和だったのだが、連続殺人を犯しているのでその未来も潰えている。

 彼の名はリドラー。直接の戦闘はしない。ターゲットには奇襲と惨たらしい殺害、それに伴い「表では皆善人だが裏ではこんなことをしていた」とSNSに暴露して拡散し、ゴッサムシティの行政信頼を地に落としている。今でいうと真偽不明の情報を暴露して対象の信用を毀損する正義中毒者のそれに近いかもしれない。今風のヴィランだ。

境遇

 孤児であり、未来に対する希望もなく、約束は踏みにじられると散々な生い立ちだが、2019年公開の【ジョーカー】も同じような出自だった。

 違うのはどん底から上を向くことすら出来なかった(ジョーカーは父親がいつか来るという希望があった)ため、過去の妄執に囚われている。この部分、彼は本作におけるバットマンと似ている。

復讐

 しかし、バットマンは両親を殺され、ゴッサムシティをどうにかするための活動をしてきた。これは過去への、父への妄執などがさせた行為だ。

 リドラーは元々が孤児で、ゴッサムシティそのものへの社会的体制を恨み続けてきた。そんな時バットマンの正義の在り方に感銘を受けたという。
だが「恐怖が必要」という部分を切り取って自分らしく都合をつけた曲解になった。

 やり場のない怒りの矛先を「死んで当然」と勝手に判断した人間に向け、更にはこれからを紡ぐ次世代すらも、何の恨みもなく処刑しようとした。一切殺し(一線を超える象徴)をしなかったバットマンとは、この部分でまるで違う存在になっている。これも全部自分の、自分に由る復讐劇。一世一代のエンターテインメントなのだろう。

ラスボス戦

 本作のラスボスは【過去のツケ】【復讐】。透明人間たちが表舞台に立った。彼らもリドラー同様に、いつも高い場所から見下ろされてばかりだったためか、高所からの暗躍に終始する。

 そして可哀そうなほどに【弱い】。弾込めもロクに習熟していなかったのだろう描写もある。リドラーの意志に賛同した者たちによる群衆、ヒーロー映画のラスボスとしてはあり得ないほどの弱さ。そもそも頭目のリドラーがこの場にいないという有様。

 虐げられてきた者たちならジョーカーくらいハッチャケた「失うことを恐れない」強さを持っていると思っていたが、全部が全部そうではないのだ。リドラーほど世界を恨んでいるわけでもないだろうただの群衆では、バットマンが真にやってほしくないことを率先してやる頭もない。ただただ彼のド派手な登場シーン(ベストシーン)に吞まれて終わってしまった。

 しかし本作は「嘘や虚構」から生み出された弱者や透明人間、リドラーという怪物が現出する物語である以上、【強い敵が出ないのは当たり前】なのである。そういうバトルシーンを期待する人には申し訳ないが、戦闘においてはほぼバットマンが無双する。【金と技術とマッシブがある強者】が弱いはずがないのだ。

この映画はバットマン・オリジン?

 過去に囚われていたブルース・ウェイン。リドラーとの謎解きに付き合う内に、図らずも自身の父の過去を知ることになる。揺らぐ心と、それでも自分で戦う道を選び突き進む、「過去を乗り越えた」バットマンとして、

 最後は自ら降り、自らが火を灯し導く存在になった。

 闇に隠れて恐怖になることが正義だったバットマンは、しかし最後に「助けたい」想いをあのような形で示した。ラストシーンでヒロインとの会話にニッコリしましたよ……。

追加映像について

 日本語解説を見たけど、あれで翻訳が合っているなら

「確かに要らない、削るべきシーンだった」と私は思う。尺の都合じゃなくて、物語上入れちゃダメ。

 何故ならほぼ答えを言ってしまっているから。リドラーという怪物的で得体のしれない人間性をラストの遥か前で看破している。それは駄目だ。ほぼ今回と無関係のキャラに答え合わせをさせたら、視聴者が萎える。見て、考えて、導き出したいんですよこっちは。

最後に

 大満足の映画でした。この興奮はしばらく心をのた打ち回りそう。バットマンカッコいいけど怖かったし、物語は3時間もあるのに一切中だるみしなかったのが本当にすごい。

ベストシーンは

1:ラスボス戦に颯爽登場(文句なしにカッコいい)
2:炎の中から車登場(敵からすれば絶望感パない)
3:唐突にエンジンふかしての車シーン(「!?」となった)
4:着地失敗!(思い切り心の中で笑った)
5:灯りを点ける(感動した)

 次回作があったら是非とも見たいです。それではこれにて終幕です!

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音霧カナタ
サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。