暴太郎戦隊ドンブラザーズ 44話「しろバレ、くろバレ」感想
鳥獣喜劇
今回のあらすじ
遂に対峙する鶴の獣人(以下【鶴】)と犬塚。秘策を手に撃破寸前まで行くがある者に阻まれてしまう。その後、みほが傷付いて帰ってきたことに狼狽した雉野は「犬塚翼にやられた」と聞いて決着を付けるべく全力で立ち向かう。
誰もいない写真
喫茶ドンブラは今日もドンブラザーズの溜まり場。
またも田舎に帰ることになったジロウは、一緒に行こうとタロウ誘う。「ドン家の者が世話になった恩人に挨拶がしたい」とこれを承諾するタロウ、本当に律儀で好感が持てる。
可愛い幼馴染と一緒の写真があるんだと雉野に見せるジロウだったが、その写真にはジロウ以外の人が写っていなかった。もう軽くホラーだよ。そういえば前回里帰りしたときには寺崎さん以外誰とも会った描写がない。でもるみちゃんは看病の際に料理を作ってくれたしいるはずなんだよなあ……
もしかしてだけど映画『JOKER』みたいなオチじゃあるまいな?
ガードベント(自発的)
夏美と同じ姿の鶴を討つことがどうしても出来ないと弱音を吐く犬塚に、「お前の愛はその程度だったのか」と発破をかけるソノニ様。悩んだ末にみほの姿をした鶴と対面し、アバターチェンジで戦いを挑む。
生身では不利と悟った鶴が本来の姿に変身すると、犬塚はチェンジ解除、ドンムラサメを呼び寄せて「夏美でないなら!」と刀を一閃! 深手を負った鶴に止めを刺そうとした時、様子を見ていたソノニ様が咄嗟に体を動かして鶴を守った。
「夏美がいなくなった時に愛の形はどうなるのか見たい」というのは初登場時のソノニ様がまだ観察する立場での発想。
「夏美がいなくなれば、犬塚は自分を向いてくれるだろうか? 恨まれるだろうか? 喜ぶだろうか? 自分はどうなのだろうか? あと少しで夏美を仕留めてくれる。そうなれば……でも本当にそれで良いのだろうか? アレだけ犬塚が愛してやまない、愛する者をこんな形で引き裂いて良いのだろうか。……やはり、駄目だ」というのは、形ない愛の本質を知ったソノニ様であれば思いつく発想だろう。
愛する者に寄り添いたい、同じことをしたい(前回のキグルミ逃走)、一緒にいる時には立場を忘れてしまう。嘘をつくなんてことをしてでも誰かを排除したい。でもそれが出来ない。純粋と汚さと弱さが混ざり濁った感情の塊。これが愛だ。ソノニ様がずっと知りたがっていた愛の根幹だ。
人の心を知ってしまった者
犬塚に、自分が嘘をついていたことを白状するソノニ様。鶴を倒すと夏美も死ぬことに衝撃を覚える犬塚だが、「そういう嘘をついて夏美を倒させようとしたのか……じゃあ何故止めたんだ?」と困惑の表情を浮かべる。詳細を聞きたかった犬塚だが、脳人のソノイ・ソノザ編集長が来てしまい話は有耶無耶に終わった。
ソノイ「ドン家は人間を愛した。イデオンの世界を放棄し、人間界で脳人と人間の共存を唱えた。それは脳人の堕落を意味する。だからドン家は処刑された」
ソノニは脳人としての立場を忘れて人間と友好を深めようとした=処刑対象とし、ソノイはその剣を振るったが、寸前でどうしても斬ることが出来なかった。ソノザ編集長も同様に、刺突出来ずに終わった。
この2人も、人間と関わる内に何もかも変わってしまった。物語序盤では描けなかった絵画が、心の色彩増加によって豊かに描けるようになったり、決闘やサンタ、おでんに心を動かされるようになったソノイ。ソノザ編集長も漫画やハルカに触れていくことで人間の心を深く理解できるようになり、また近づいていった。
犬塚が鶴を倒すことを渋った理由を、ソノニ様はここで理解できたのかもしれない。人の心があると迷い恐れて、合理的ではないと知っていても実行できないものなのだ。
2度目のガードベント
みほちゃんを傷付けた犬塚を絶対に許さないと、彼を呼び出して決闘をする雉野。生身での戦いだとどうしても犬塚に勝てない雉野は迷わずキジブラザーに変身して犬塚に体当たりを仕掛けた。速度からして、犬塚が変身しなければ死ぬ程の衝撃だったろう。イヌブラザーVSキジブラザーになっても特に驚かなかった2人、それほど頭に血が上っていたこの戦いは、回避力に優れていても耐久力がないイヌブラザーが不利だったようで、変身が解けて満身創痍になってしまう。
キジブラザー「止めだ」
一度敵と定めた相手であれば、事情など知ったことではない。犬塚の正体が40話も一緒に戦ってきた仲間だったとしても知ったことではない。みほちゃんが、みほちゃんだけが、雉野の世界の全てなのだ。
脳人は仲間を処刑することを最後まで躊躇った。
しかし雉野は躊躇わない。
人ならざる存在が人の心を持ち、
人なのに人の心を失ってしまう。
強化形態の必殺技を放つ寸前、ソノニ様が犬塚を庇って致命傷を負う。このシーンでもうソノニ様は死ぬのかもしれないとハラハラして見ていた。
キビポイント
命からがら逃げたソノニ様を追いかけ、今にも死にそうな彼女に呼びかける犬塚。そこに現れたマスターが、犬塚のキビポイントを殆ど使ってソノニ様の傷を完治させた。
「よせ!話すな…来るな…俺を見るな…二度と、お前には会いたくない」と去り際に言い残した犬塚だが、彼女が復活した時に安堵の表情をしたのは、嫌いだからとかそういう意味ではなく、好きになりかけているからという想いもありそうなのがまた切ない。夏美を救うために、夏美一筋で行動してきたはずなのに、自分の志を揺るがすほど多感な女性が自分を見ること、想うことは辛い。
犬塚はきっと彼女がしたことの意味を理解している。基本的に彼は孤独の存在であっても、人の善性を信じている。だから今回命の取り合いをした雉野との共闘もしたし、ソノニ様のためにポイントを使うことを良しとした。
嘘をついたけど、しかし自分でそれを精算したり、死にそうな局面で助けてくれたり。これまでも色々と重ねてきた思い出があったから、なんでそんな嘘をついたのかという理由にも察しがついてしまうだろう。それはつまり自分に好意を寄せているどころの騒ぎではなく、それ以上の愛を向けている事実に気付かないはずがない。
だからこれ以上の接触をするべきじゃないと自分から突き放した。本当に嫌いなら、声のニュアンスが違うはずなんです
「よせ!話すな、来るな、俺を見るな! 二度とお前には会いたくない!」嫌いならばこういう、拒絶も込めた突き放す声色になっているはずなんです。切ねえ……
全員変身
そういえばようやく全員一緒に変身したんだよなあ。いつまでもイヌブラザーの正体がわからないまま終わる可能性もあっただけに、感慨深いものがある! でも驚きの描写は次回に持ち越しだ。
じか~いじかい
何でソノニ様(変身)とイヌブラザーが一緒にいるんですかねえ……???
1話で会いたくなったのかいじらしすぎでしょもう! でもジロウがいないのはなんでなんだろうな……。あと雉野は本格的に精神病んでいるなこれ……人形をみほちゃんに見立てて精神を安定させることはもう出来ないのだろうな。
それとも気付いているんだろうか。みほちゃんは本当に存在しない、鶴の獣人っていう事実に。今回犬塚とのやり取りの中でも「いい加減に目を覚ませ雉野!」「うるさああああい!」と、聞く耳持たないというより聞きたくないような表現。そして駄々っ子のような抵抗。知っているけど現実を見たくない。そんな様子に私は見えた。