ムハマド・ユヌス氏 講演会
先日10/5夜、グラミンサンパワーの川村さんのお計らいで、ムハマド・ユヌス氏のオンライン講演会が開催されました。経営者やソーシャルビジネスを担う方々43名、15ヵ国が参加する中で、私も貴重な参加の機会をいただきました。
多くの方へお伝えしたく、内容を記載します。
※実際に交わされた言葉の翻訳ではなく、私を通した意訳であることをご了承ください!
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〇コロナ禍における経営者・リーダーの役割
ユヌス氏:
コロナは、世界の誰も予測できない事態に人類を追い込んだ。こういった事態において、リーダーの果たす役割は大きい。
経営者は、まずショックを吸収すること。次にコロナによる影響を最小限に抑えるように工夫していくこと。そして、ビジネスに何が起こっているのかを冷静によく見る。人々に何が起こっているのか、国や世界に何が起こっているのか。ビジネスと人の両方をバランスよく見ていくこと。全世界が非常に大きな課題に直面している。世界規模の観点にしたがって、ビジネスをどう立て直していくかを考えていく。
〇自分と向き合う
ユヌス氏:
これは機会でもある。全てのものがトランスフォーメーションに向かっている。組織のリーダーも内面に向かって問いかけてほしい。私たち一人ひとりが、想像力を最大限に発揮することが必要。自分と向き合い、自分を変化させていく必要がある。自分たちで構想し、これからをデザインしていく。
課題が大きければ大きいほど、内面に問いかけて、自分もビジネスもドラスティックに変えていかなければいけない。これは自身が創造力を発揮する機会であり、成長する機会であり、自分自身を再発見する機会である。
このような機会はもう二度と巡ってこない。
この最大の危機を、自分自身が何者であるかに気づく機会にしてほしい。
〇コロナ禍のソーシャルビジネスとは
ユヌス氏:
コロナの前の世界に戻りたいか?
今のコロナ後の時代は、新しい世界を創る最大のチャンス。コロナの前に戻るのではなく、新しい世界を創り上げていくチャンスである。
コロナの前に私たちが直面していたのは、気候変動、富の集中、格差、AIのネガティブな側面など。人類は様々な課題を抱えていた。
元の世界に戻ったのでは、間違った道を歩むことになってしまう。コロナは、新しい世界へ行くための貴重な機会。私は新しい世界をつくりたい。
既存のビジネスが、今の気候変動や格差を創り出した。古い資本主義の経済は、色んな問題を引き起こした。コロナを、新しい世界を創っていく機会にしていく。
今までのビジネスは、富の最大化を目指したことで、同時に弊害を引き起こした。利益の最大化のためのビジネスではなく、地域の諸問題、人々の課題を解決するビジネスをつくっていくべきだろう。ソーシャルビジネスを作っていくべき時期に私たちは来ている。
〇新しい世界へ向けて
ユヌス氏:
全ての間違いは、コロナ前の私たちの思考が導いている。同じ思考をすれば、同じ悪い世界を創ってしまう。新しい思考をしなければならない。
コロナの前の世界に戻るのは、自殺にコミットしているようなものだ。
私(ユヌス氏)が目指すのは、3つのゼロ。
貧困ゼロ、失業者ゼロ、二酸化炭素ゼロという世界。
おそらく新しい世界は10年では創れない、長い道のりになるだろう。
でも、始めることはできる。ここが出発点になる。
リーダーとして大切なのは、どこに向かうのか。その方向が大切。これから我々はどういう方向に向かっていくのか?
この方向を見出し、そこへ向かっていくことが重要である。10年かけて模索しながらその方向へ広げていくこと。
もっとも難しいことは、豊かな世界や国を創り出すこと。
先進国の人々が彼らの習慣を変えていかなければならない。
富める国が様々な問題を引き起こしている。二酸化炭素を排出し、格差を生み出している。富める国がどういう振る舞いをしているかによって、新しい世界が生まれるかどうかが決まる。
今後もクライシスはどこでも発生しうる。免れる人はいない。
傍観者としてこの危機を眺めるのではなく、この機会に新しい仕組みを作ること。この素晴らしい機会に感謝している。
コロナは最大の危機。
私たちの内面に問いかけて、最大のチャンスにしていかなければならない。
そのマインドをもって、組織のマネジメントに活かしていく。
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以上です。
バングラデシュでは、6月には毎日3,000人を越える感染者が報告されていましたが、9月には毎日1,500人程度とやや落ち着きを見せています。これまでの感染者は37万人、死亡者は5,440人とのこと(10/8時点)
経済の混乱は大きく、貧困層が大きな打撃を受けている。それは先進国の比ではないでしょう。私たち先進国の人間は、色々あるけど、多くは生き延びるでしょう。でも途上国では、格差がさらに広がる。地球上の格差は、コロナによってさらに広がる。
私は経営者ではないのですが、一人の先進国に住む人間として何をすべきか、考えるだけでなく、行動していかなければと強く思います。
貴重な機会をくださった川村さんに感謝します。