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話しませんか2

真珠女」 奈帆さん、憂美さんへの手紙


第二章 語らい

「憂美さん、すっかりエプロンが似合うようになったわね。まさか作家さんが、珈琲屋さんに勤めるとは思わなかったわ。」

「え、ほんとに?嬉しい。ときさんにお願いして、合間に、手伝わせて頂いているの。 社会勉強です。」

「いやぁー、助かっているんだよね。前の娘がオフの時に来てもらって。 安くて申しわけないんだけど。」

「で、どうなの?憂美さん。執筆はうまく行ってるの?」

「それが、うまく聞き出せなくて…」

「え!?誰から? その小説のモデルはいるの?」

「秘密です。」

語らい

「憂美、秘密はだめよ!」

「あーん怒られちゃった」

「まぁまぁ、今日は白州の珈琲店、ブビレカウレからエチオピアが入っているから。それとそのお菓子はビスケットタイプのチーズケーキだよ、美味しいよ。」

「ねぇ奈帆さん、あれからあの人とはどうなっているの?」

二人は、嬉しそうに、カウンターに身を乗り出した。
ふと、甘い香りとウッディな香りが漂って来た気がした。

俺も、と身を乗り出したら、
「だめよ、だめ!」
「女子会の話しだからだめ!」
 と、二人は口を揃えて言う。
まるで、カップルか母娘のようだ。


後日、知り合いのカフェで会うことになった。
俺は憂美さんのリクエストに応えて、ケーキは自由が丘のモンブラン、ビスケットは横浜のモンブランミルフィユを用意、珈琲はもちろんビブレカウレのルワンダ。友人の店なのに特別に置かせてもらった。

カフェにて

憂美さんからは、仄かに甘い香りが漂うのが、微かに感じられるが、奈帆さんからはあの、ウッディの香りがしないことに、何か違和感を感じた。

「ときさん、これ美味しいね。前に食べたアフタヌーンティーのケーキより美味しい。」 

「奈帆さん、でしょう! 憂美さんのリクエストにお答えしました。」

「ときさん、合格!」
憂美さんの溢れんばかりの笑顔が美しく、嬉しかった。

それにしても、奈帆さんの陰りが気になる。

他愛もない話しが続く。俺はこの場が永遠に続くことを願った。


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奈帆さんが、突然いなくなったらしい。
憂美さんからの連絡だ…


残された真珠の指輪

             第二章終わり、続く




※この文章は、小説「真珠女」作者、春野憂美さんの許可・監修を得て、投稿させて頂いています。





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