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話しませんか
「真珠女」奈帆さん、憂美さんへの手紙
都会のオフィス街、その裏道にある珈琲屋「時」はその想いが、シンクロした時だけ、出会えるお店です。
第一章 出会い
「あのーぅ」
手を止めてカウンター越しの女性に顔を向ける。何回か、この店と出会えた、ほぼ常連さんだ。
色白く、整った顔立ちだが、表情が暗い。この店と同調するぐらいだから、何か抱えているのだろう。
「はい」
あまりの綺麗さに、俺は気圧されながらも悟られないようにと、落ち着きぶって返事をした。
「窓際に座っていらっしゃる、お綺麗な方もこちらに、よくいらっしゃるのですか?」
窓際に座る、その綺麗な女性は完全に常連さんだ。
どういうわけかここを探し当ててくる、いわばお友達、仲間だ。
「そうです。毎日のようにいらっしゃっています。
なんでも作家さんのようです。 よろしければ、ご紹介いたしましょうか?」
目の前の女性は、塞ぎ込んでいた顔をパッと輝かせ、
「よろしいんですか!お願いいたします!」
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「憂美さん、少しお時間頂けます?」
離れて見ると大人びて見えるが、実際は若い作家さんに、俺は声を掛けた。
憂美さんがゆっくりと顔を上げたのと同時に、目の前の女性がスッと立ち、
「突然すみません、少しお話してもよろしいでしょうか?」
突然の語り掛けには、俺は少々驚いた。
憂美さんは、笑顔たっぷりに
「もちろんです!私もあなた、奈帆さんと話したかったの。」
「え!私の名前をご存知なのですか!?」
「もちろんよ、私も奈帆さんと話したかったの。話しません?」
「わぁ!嬉しい」
初見とはとは思えぬ、会話が弾んでゆく
第一章終わり、続く
※この文章は、小説「真珠女」作者、春野憂美さんの許可・監修を得て、投稿させて頂いています。