6.夏風邪を引いた時の話
私がまだ小学生低学年のころ、珍しく夏風邪を引いた。
熱を下げるために汗をかかなければいけないのだが、さすがに家の中は暑いのでクーラーのある居間でおとなしく寝ることになった。いつもは2階で寝ている。
昼間。
プール帰りの姉が帰ってきた。
「何?熱あるの?」と状況を知っていながら聞いてきた。
スイカバーを食べながら。
たしか、夏休みのプールの日は、町内会かなんかでアイスを買ってもらえたんだと思う。
スイカバーは言わずと知れたアイス。三角形に切られたスイカの形をしており、種がチョコでなおさら美味しい。
その時の私は熱が出ていて記憶が捻じ曲がっていたと思うが、スイカバーを食べながら姉がニタニタと得意げな表情で私を見下していた。
「お前は今アイス食べられないもんな?羨ましいだろ?」と言っていたはずだ。
私は早く元気になってスイカバーを食べたい。それだけを願った。
それ以来、私は「スイカバー」を神聖な食べ物と思い込んでいる。
表紙の写真はその時の視点を再現したもの。
見えないと思うが、私にはスイカバーを持った当時の姉の姿が見えている。