【with wedding vol.18】結婚式はなぜ変わらないのか、変わるべきなのか

※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2018年12月号 第94号 の内容を転載しております。

結婚式を変えたい気持ちは業界内の人の方が強い

この原稿を書いているのがちょうど2019年になったタイミングです。記事が本紙で紹介されるときはもう時が過ぎていると思いますが、「あけましておめでとうございます」と申し上げさせてください。さて、いよいよ平成も終わろうとしていて、どんな元号になるか楽しみですね。個人的には、「前進」「進化」「光速」あたりにしてもらって、何かに日付を書くたびに前向きになれるようなものにしてくれないかと勝手に期待しています。どうですか、「前進1年」「進化1年」「光速1年」。日本中が基本前向きになれるような気がしませんか(笑)若干、ブラックな香りのする国に見えますか。ただ、世間の空気とはそういうものだと思っており、結婚式も増えれば増えるほどこの国の幸福感は増えていき、減れば減るほど失われていくと考えています。

インターネット上では定期的に「結婚式に価値はあるのか」「しなくて良いと思っている」というようなリサーチのレポートなどが発信されたり、それに言及するblogやtwitterも散見されたりするわけですが、それはそれで見飽きた感もでてきています。

私が2016年にリクシィを起業したのは世の中に結婚式を増やしたいと思ったからで、コンサルティング、キャリア、gensen weeding、Chooleとやってまいりました。ただ、力不足が強く、世間のウエディングを変えたかと言われると、全く何もできていないなと悔しさと焦りを抱えながら、頑張ろうと思う日々です。

さて、なぜ結婚式は変わらないのでしょうか。実は結婚式を変えたい気持ちは、ウエディング業界外の人よりも業界内の人の方が強いと感じてもいます。いわゆるプロデュース会社をされている方はもちろん、結婚式場に務める方々もそう感じている方が多い印象がありますし、ドレスショップなどのベンダーの方々も同様に感じられます。私もこれまで結婚式を変えられるかどうかは我々次第というメッセージを発信してきて、変わるデメリットを減らす、変わるメリットを増やす、という観点も意識して、サービスを立ち上げてまいりましたが、ある種感じている限界を紹介します。

なぜ結婚式は変わらないのか?

結婚式が変わらない理由、「画一的なイメージが浸透している」「結婚式場と関係各社がガッチリ提携している」「内製している」など様々なことが言われていますが、最も難関になっている要因をあげると、ゲストの存在だと考えています。

例えば、新婦の手紙。結婚式=新婦の手紙と言っても過言ではないと考える人は多いでしょうし、私も新婦の手紙は新郎の気持ちになっても、親御様の気持ちになっても、登場する弟の気持ちになっても、必ず泣いてしまいますし、どの映画よりもドラマを感じるシーンで絶対に欠かせないと信じるひとりです。ただ、あれを読みたくないから結婚式をしたくないという方もいることでしょう。そのような方が結婚式を申し込んで担当プランナーと相談をしたとすると、どうなるか。「いや、絶対読んだ方が良いと思います。」と言って新婦を説得する構図があるでしょう。およその新婦はそこで渋々読むことになります、そして、「読んで良かった!」となるわけですが、残念なことに、それを見て、「あー、自分の時は絶対やりたくねーな」と感じるゲストが、「自分の時は絶対にやらない」「面倒だから、結婚式自体やりたくない」となっていることでしょう。

「じゃあ、そういうゲストもいるから花嫁の手紙はやめておきましょう」とできるかというと、そうもいきません。そういうゲストが本当にいるかどうかわかりませんし、私のように期待をしているゲストもいるでしょうし、何より親御さんも期待していることでしょう。でも、やると、「あー、自分の時は絶対やりたくねーな」と感じるゲストが増えるかもしれません。

結婚式は変わった方が良いかもしれない。でも、参列するゲストの価値感が加速的に多様化している現代では、旧来型のフォーマットであれ、新しいフォーマットであれ、誰かの支持を得て、誰かの不支持を得てしまう。この構造に直面した時、「リスクがあるからベストじゃないけど今まで通りのままにしておこう」と消極的に現状維持を選び、変化が起こらない構図を生んでいるような気がしています。

ウエディングプランナーは新郎新婦と会話し、参列するゲスト1人1人の顔を思い浮かべながら結婚式を提案する責任があり、その難易度が高まっているとも言えます。ただ、使命感としてその姿勢は正しくても、実際に会ったこともないゲストがどう思うかまで想像することに限界があるのも事実です。その渦の中にいる新婦も大変だろうなと思ってなりません。(花嫁の手紙は絶対に読むべきと信じすぎていて、おまけに男性であるがゆえ、そこに悩む人の気持ちがわからないのも輪をかけているかもしれませんが・・・)

重要なのは社会的な合意形成とゼロベースで捉え直すこと

この話、結論は簡単で、「結婚式は自由だから、本人がやりたいようにやればいい」だと思いますが、真の意味で実現するためには、それをしやすい環境をつくることが重要になります。

ウエディングプランナーは目の前の新郎新婦に向き合うとして、社会に対して「結婚式はやりたいようにやればいい」というコンセンサスをつくることは産業全体ですべきことになります。例えば、「花嫁の手紙は読むべき、だってこんなに感動するんだから」というマーケティングメッセージは多く見られますが、もしかしたら現代のスマホ世代にはちょっと重たいと感じられるかもしれません。「親への感謝は誰よりもしているつもりだから、誰かに強制されてやることじゃないし、みんなの前で言うのも違う」という意見の層には逆効果でしょう。宿題をやろうとしているのにしていないように見えただけで決めつけで怒られた、に近い気持ちになっているかもしれません。

ゼロベースで現在のフォーマットを捉え直し、積極的に変えていく会場やプロデュース会社があっても良いでしょう。現在のフォーマットの意義を再定義して、今の世代に伝わるような工夫をしても良いでしょう。私個人はどちらの価値感も賛成です。価値観が大事なのではなく、ましてや対立する必要など微塵もなく、自分たちは何を伝え、どうアップデートするか。重要なことはそれに尽きるなと思います。それはまさに、我々自身ができることなのではないでしょうか。

終わりに

日本の結婚式文化を自分なりに調べていたところ、今の形式ができたのは戦後、1960年以降だそうです。人口ボーナスを追いかけるように、ホテルでの結婚式が流行り、芸能人の結婚式が全国中継され、共通の価値観が形成されていき、今に至っていると。私たちと同じ人間がつくったものであり、歴史もせいぜい50年程度のもの。その揺らぎが今まさにきているというのが、大局的な流れなのでしょう。すべては人の意思で創り上げられるものす。結局は我々次第ですね(笑)
動かすべきは目の前の新郎新婦だけではなく、社会全体であると。そこに向かって「前進1年」になるよう、私たちもがんばっていきたいと思います。

安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表

花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。

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