【with wedding vol.42】2021年、結婚式場各社の動きを4分類で大予測
※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2020年12月号 第135号 の内容を転載しております。
本稿が2021年の初回になります。2020年は大変な1年となり、自分にとっても生涯忘れえぬ1年になりました。失ったものは多い、ただ、得られたものに目を向ける必要がある。何を得たかは各社異なりますし、そこへの様々な工夫自体にも高い価値があると、様々な会社の方々と会話をしていて感じるところがありますが、会社・産業とも強くなった1年だったと思います。
結婚式業界の変革は、どこか1社がダイナミズムを起こすのではなく、各社の自然発生的な動きが1つのうねりとなって、結婚式離れを起こしている顧客層───なし婚はもちろん、消極的に今の結婚式をしている離反予備軍まで───に新たな価値が届くことで成し遂げられるシナリオが有力と見ています。新たな価値とは、多様化(=ザ結婚式以外の選択肢)と透明化(=ブラックボックスの無い状態)とも言えるでしょう。
もちろん、どこかの会社がシェア15%以上を握れば話は変わりますが、既存の大手企業にはリソースが無いでしょうし、誰かが1000億規模の結婚式特化のファンドを組成すれば話は変わるかもしれませんが、その可能性は低いと見ています。
産業全体の状況を知り、自社が勝ち抜くため、そして顧客の期待に応えるために、必要なことを実行していくことが、2021年の最重要テーマ。その視点から、「①全国展開系多店舗式場」「②地域密着系多店舗式場」「③地域密着系単店舗式場」「④ホテル・互助会」に敢えてシンプルに分類して、それぞれの動きをうらないたいと思います。
①全国展開系多店舗式場 ⇒ 既存の顧客層を既存の集客ファネルで狙う
いわゆる大手式場とも言われるこの群ですが、その多くが事業構造変革の難しさから、2020年は雇用調整助成金を活用して嵐が過ぎ去るのを待つというスタンスであり、コロナ後も少人数化が進むマーケットにおいても、基本的にはコロナ前の顧客層───70名程度の参加人数で、平均よりもアッパー目の顧客───を獲得するという前提で事業展開を考えているケースが多いです。
コロナ前のやり方で勝っていた影響が強いと思われ、多様化や透明化について否定はせずとも積極的なアクションはしない印象です。
「自社集客」と掲げていても、HP比率を高めるというレベルで、認知獲得は今まで通り媒体を利用し、顧客への提供価値も変わらないことから、顧客層を拡げる作用は起こらず、従来の”ハード中心でザ・結婚式を基本に考える”層を中心とした競争環境がより一層激化し、ここをターゲットとしている式場にとってはレッドオーシャン感がますます強まるでしょう。
②地域密着系多店舗式場 ⇒ 多様な顧客層を独自の集客ファネルで狙う
コロナ以前から、広告宣伝費の過剰な投資競争からの脱却を狙いとして、商圏内で多店舗を有する強みから認知向上の恩恵を受けやすいと、積極的なPR、SNSの活用、レストランやイベントによる顧客接点づくりなどを実施or計画してきたところにコロナが来襲し、その施策をより大胆に展開するという考え方で2020年にシフトチェンジを行った企業がこの層です。多店舗でなくても、エリアNo.1のシェアを有する式場もここに該当すると言えるでそう。
2021年もその路線を強めていくと思われますし、追随する動きも各地ででてくると予想されます。多様化する顧客ニーズをSNSでの発信と自社会場魅せ方の変化で対応し、規約の運用を柔軟化させその内容も公開するなど透明化にも意欲的で、「ザ結婚式に違和感があり、ハードだけで選べない」層へのアプローチが強まることになります。正に、①の群とは対象的な動きをしていると言え、注目すべき存在と言えます。
③地域密着系単店舗式場 ⇒ 既存か独自かで戦略が分かれる
2021年、どう動くか最も注目されるのがこの群です。機動力を活かして取り組みを進めている会社もあれば、リソースが不足していたり、ノウハウが無い、オーナーや親会社の理解が得られないなどの背景から右往左往している会社もあります。
現実には多くの式場が大手のフォロワー的な動きを続けていくことになるでしょうが、従来の流れに戻っても資本力とノウハウを有する①の式場との競争は今まで以上に激化することが予想されます。
同じ商圏内に②のような式場がある場合はこちらをベンチマークする方が有効かもしれませんし、②のような会社が不在ならば①の追随ではなくシェアNo.1然としたアクションで状況の打開を図るのも有効な一手になるでしょう。2021年の動きは1つの分岐点となります。
④ホテル・互助会 ⇒ 変わらない
ホテル・互助会は、元々ウェディング業界でも最も保守的と位置付けられてきましたが、コロナを受けてもそのスタンスは継続されそうです。ホテルは元々媒体への投資競争にものらない立場でいたため、ゲストハウスブームでも堅調に残ったホテル層の顧客を取り込むことで組数のキープは可能と考えられますし、ホテルでの顧客接点を転換率高く婚礼の顧客化するアクションができればさらに増やすこともできます。コロナとは関係なく、SNSやLINEの発達と共に選択肢も増えているので、諸々の制約を乗り越えてアクションでれば良いのですが…。今のところ、市場を変化させる作用をもたらす可能性は低いでしょう。
●おわりに
2020年、コロナの危機で、産業全体がどうなるのか、各社の動きはどうなるのか、ゼロベースとなり、関心を集めましたが、上記のように分類せさせていただきました。
エリアにせよ産業にせよ、構成しているのは1社1社であり、1人1人。会社が違うがゆえ、強制的な連携はできませんが、大きな方向性をシェアすることで、自然と産業全体の方向性も浮かび上がってきて、各社がアクションしやすい環境をつくることには寄与すると期待しています。
最も興味深いのはエリアごとの違いです。シンプルに言えば、②の群に該当する会社があるか無いかでエリア差がでるでしょう。コロナの影響度合いも大きく違いが出ましたが、コロナ後もそれは続くかもしれません。
コロナの第3波の影響がどこまでくるのか、変異種の懸念もあれば、ワクチンの期待もあります。強い危機感をもって長期化への備えをしながら、この動乱の時代に、環境の変化を前提にどのような会社が勝つのかを想像して、適応していくこと必要があります。
今まで通りに戻るというスタンスを否定はしませんが競争が激しくなるのは自明なので、それで本当に良いのかどうかを考えておくべきでしょう。変化には、web・SNS等へのキャッチアップが生命線になるので、知識なのか組織の姿勢なのか、今までと異なる挑戦をすることへの覚悟が必要になります。
確実に難易度が高まるウェディング事業でも、産業全体としては歓迎すべき流れだと思います。「世の中から結婚式はどこも同じ」といつまで言われ続けるのか。私はこのままで良いとは全く思いません。
変えるためには、当日の体験の違いを伝えるだけでは不十分で、式場選びの段階から違いを伝える方法が重要になります。媒体の活用術のような範疇ではなく、「そうそう、こんな結婚式ならやってみたいんだよ」とお客様に感じていただけるマーケティング上の工夫が極めて重要です。
それまでのほとんどの企業が同じようなターゲットに同じような広告を出していた状況から、媒体以外でどんな発信をするかで差が伝わっていくことで、結婚式の見え方もエリアごとに異なってくるでしょう。その流れに少しでもサポートできるよう、ブライダル業界の構造改革を掲げるリクシィも努めていきたいと思います。
本年も、よろしくお願いいたします。
安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表
花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。
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