【with wedding vol.12】卒花インフルエンサーの座談会で語られたこと
※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2018年6月号 第83号 の内容を転載しております。
卒花という言葉が誕生してしばらく経ちますが、リクシィでもインスタグラムで5000前後のフォロワーのいる方々にお集まりいただき、座談会を何度か開催して、色々と直接教えていただいています。東京の話ばかりなので、エリアによって異なる面はあると思いますが、遅かれ早かれ全国に広まっていくと考えると、未来を占う上でも示唆に富んだ話と言えるでしょう。参考になればとシェアさせていただきます。
そもそも卒花現象とは
卒花現象が生まれた背景は、インスタグラムの普及があげられます。結婚式を行った側と行う側、それぞれにインスタグラムを活用したい事情がありました。
<結婚式を行った側の要因>
結婚式を挙げて、満足した体験を誰かとシェアしたいと思って場合、その相手がいないという問題に直面します。結婚式の準備のプロセスをゲストに話すこともなければ、結婚式後に「自分の結婚式が最高だった」とゲストに話すのも気が引けるものです。夫は同じ体験をした当事者ですし、facebookは知人とつながっているメディア、twitterでは結婚式の体験をシェアするのは難しい。その中で、インスタグラムは自分の結婚式の写真をアップすれば、相手から見つけてもらえて、自然とリアクションがつく。しかも、実名を載せる必要もなく、自分と同じように結婚式した方からのコメントやDMがきて、価値観の近い方とつながることができるのも魅力になっています。また、これから結婚式をするプレ花嫁からのフォローや「参考にさせてもらっている!」というコメントがきたりすることもあり、今後の花嫁に貢献できている感覚も得られるということから、ウエディングアカウントの運用をするモチベーションが高まっていくという構造があります。
<結婚式を行う側の要因>
結婚式を行う側の観点では、インスタグラムで結婚式の情報を調べる花嫁が増えているという状況があります。自分の結婚式場で挙げた先輩花嫁の情報を得ようと、ハッシュタグで調べてフォローをしたり、ドレスやコーディネート、アイテムなどの情報をインスタグラムで探すようになっています。ビジュアルやイメージが情報として重要なウエディングに、インスタグラムは最適なツールだったと言えるでしょう。新郎新婦から見ると、結婚式場に比べて得られる情報が乏しかった状況の中で、インスタグラムはそれを打開する貴重な情報源になったのです。
実際に座談会で聞いたこと
座談会はこれまでに3回、15名の方々に協力いただいた程度ですが、集まるのは情報リテラシーとセンスのある方々になります。アーリーアダプターと言われる層で、世の中で絶対数が多いわけではありませんが、彼女たちの様子を参考にする方々が増えていくもので、トレンドを産み出す1つのエンジンになっていると言えるでしょう。そこで聞くことができた話の一部を紹介します。
①ドレスは70万円で買って、60万円で売る
ドレスは、気に入るものをインスタグラムで探し、それを着ている方から譲ってもらって(買って)、自分の結婚式が終わったら他の人に転売するそうです。また、このドレスは必ず売れるだろうと考え、転売前提で自分で買ったという方もいらっしゃいました。「70万円で買って60万円で売る」「60万円で買って50万円で売る」という具合にドレスが流通するそうで、10万円で着たいドレスが手に入ると、コスパも良いととらえているようです。知らない人から買うのは怖くないかという点についても、「その不安はあるが、ドレスレンタルでも何回目のドレスかわからなくて不安と思うと、むしろ誰から買うのかが明確なので安心できる」とのことでした。半信半疑に思える方もいらっしゃるかもしれませんが、メルカリがこれだけ普及している実情を見ると、ウエディングだけ違うという方がむしろ考えにくく、なるほどと思わされます。
②わからないことはインスタで先輩花嫁に質問する
プランナーにももちろん質問するものの、プランナーが営業的な役割を担っていることを理解してしまっていたり、会場への不満が生まれていたりするがゆえに、インスタグラムで先輩花嫁に直接聞く方が増えているようです。インスタグラムでイケてる花嫁の情報を入手しているので、それを知らないプランナーには不安を覚えるとのこと。ウエディングにおけるインスタグラムは集客上の観点で述べられることが多いように思いますが、打合せや施行においても、信頼関係づくりや情報の入手の観点でも、インスタグラムは重要なツールになっていると言えるでしょう。
③ネガティブな情報は即刻共有される
卒花の皆さまにどんなアドバイスをすることが多いかと聞くと、「契約前に交渉しておくことが肝心」といった内容が多いそうです。やはりこだわりのある花嫁だっただけに、その体験を伝えるものですから、そのような内容が多くなりがちです。また、「持込みを許可してもらったけど、SNSには絶対にあげないでほしいと念押しされた。ただ、気にせずアップしちゃうよね。」という話まで、「うんうん、あるある 笑」となっている状態なので、契約条件で縛り付けるというのも限界に来ているような印象も受けました。目の前のお客様に伝えていることは、世間に伝えていることと同一と捉える必要があるでしょう。
最後に
ヒアリングをできたのは15人程度なので、サンプルとしては少ないものです。ただ、インフルエンサーと呼ばれるだけあって拡散力は非常に大きいものがあり、口コミサイトのレビューとは比にならないでしょう。
インスタグラムは単にインスタ映えしているかどうかだけではなく、写真を通じたコミュニティとして成立しており、その流れの中でどのように事業を運営していくのかを各社問われているように感じられます。インスタグラム自体はまだまだ変化していくでしょうし、インスタグラム自体がすたれる日もいつかは来ます。
インスタグラムに対応していくことも重要ですが、インスタグラム云々関係なく、誰もが認める、本質的に良い商品サービスを、お客様が満足納得する形で供給できるかが本質であることは忘れてはなりません。
上記では紹介しきれませんでしたが、座談会に参加される皆さまに注目するブランドやクリエイターの名前を聞くと、称賛されるものは集中していました。良いモノは認知される。もちろん昔からそうだったわけですが、インスタグラムによりその流れが一挙に加速していると言えるでしょう。
インターネット、スマートフォン、SNSの普及がもたらしているものは、過剰なまでの透明化された世界です。見なくてもいいものも見えてしまい、知られたくないものも知られてしまう。そのような社会においては、ありのままがいかに優れているかが問われるものです。その方向に世の中や消費がシフトしていくことは間違いなく、結婚式場や関連事業者もそこに対応していく必要があるでしょう。リクシィとしても、時代の流れにアジャストしやすい構造を創れるよう努めていく所存です。
安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表
花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。
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