【with wedding vol.27】自社集客の実現には、真のマーケティング思考が必要

※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2019年10月号 第111号 の内容を転載しております。

今回は、「自社集客の実現には、真のマーケティング思考が必要」です。リクシィを起業して3年、まだまだ全然世の中は変えられていないなと焦りにまみれていますが、一番難しいと感じているのがマーケティングです。マーケティングはこの10年で、あり得ないレベルで複雑になったと言われています。今でこそこの感覚がかなり理解できるつもりでいますが、結婚式場に勤めていた時の自分が同じように感じられていたかというと全然違っていました。

昨今、媒体の効果が落ちてきていると自社での集客を模索されるウエディング企業が増えていると思います。実際に我々がサポートをさせていただくケースもあります。例えば、インターネット広告は重要です。リスティングを効果的に活用しているか、受け皿となるホームページはどうか、インスタグラムの運用は正しいか・・・。広告代理店に無駄金を投じているケースも多数あります。最適化することで効果も上がりますし、そこには注目すべきでしょう。ただ、この範囲で取り組むだけではいずれ頭打ちになります。理由は、「自身の会場の結婚式自体の価値をどうつくるか」の視点が無いからです。

そもそものマーケティングとは?

一般的にマーケティングでは、4つのP(product、promotion、price、place)が重要だと言われています。結婚式場の場合、マーケティングの範囲が、promotionにフォーカスされていることがほとんどで、マーケティングを行っているとは言い難いのが実情です。どの結婚式場もそうなので、今まではそれで差がつくことはわずかでしたが、自社集客を目指すのであれば、promotionだけでなく、他の3つのP、とりわけproductにフォーカスする必要が高まります。ですが、結婚式場各社はこれが非常に苦手です。理由はいままでやってこなかったから。消費者から見た際に、結婚式の違いが非常にわかりにくいという点も困りどころです。しかも、現代ではその難易度はさらに高まっています。

自社集客で最も重要なことは、誰にどんな価値を提供するかを決めること

マーケティング自体が複雑化する中で、インスタならインスタ、twitterならtwitterの特徴をハックしていくというやり方も作戦上はアリだと思いますが、自社集客を本当に目指すならば、最も重要になるのは、結婚式自体の特徴を磨き上げることです。具体的には、誰にどんな価値を提供するかを決めることです。

消費者から見ると、ほとんどの結婚式場が「その会場だとどんな結婚式ができるのか」「どんな便益を提供できているのか」が非常に曖昧です。裏を返せば、ここに独自性を元にした便益を定義できれば、他の結婚式場では満たせないニーズをもつお客様を獲得できる可能性が強まります。

例えば、ある会場では、エントランスにゲスト1人1人への手紙を入れられるボックスを用意していて、新郎新婦がそれを用いて、挙式前に想いを伝える時間を設けています。すべての新郎新婦がそれを利用するのかと聞くと、全員それをするそうです。これ独自性となって、「人生の出発を祝う日にしたいが、いわゆる画一的な結婚式は違う」というターゲットのニーズを満たしています。

例えば、ある会場では、少人数のウエディングを検討されるお客様向けに、少人数の結婚式を考えるお客様特有の不安を洗い出し、それを解決できる相談会を開催するというフェアを行って、集客につなげている事例があります。「普通の結婚式と違うし、少人数の結婚式に参加したことが無いから盛り上がるかわからない、ドレスは2着着たいけどそれが許されるのかわからない」と心配なお客様のニーズを満たすことに成功している事例です。いずれも、会場のスペックをアピールしているのではなく、「どんな体験ができるのか」を「ニーズをもっているお客様」に訴求することに成功しています。

「自分の会場が1番」という矜持が邪魔をしてしまう

結婚式はサービス業なので、目の前のお客様の想いを叶えることに腐心する必要があります。かつ、「自分の会場が1番」と信じることで自信を持ったサービスをお客様にも行えるわけで、どの結婚式場も「どのお客様も自分の結婚式場を選ぶべき」というスタンスが非常に強いです。ただ、マーケティング上は、「こういうお客様はうちを選ばない」「このようなお客様はうちしか選ぶところがない」という考え方をする必要があります。

全てのお客様に対して自分の会場を1番にする必要はないわけですし、それはどのお客様にも1番になりきれないというリスクもあります。「違った結婚式をしたい」というお客様をターゲットにするなら「ケーキカット」「デザートブッフェ」のようないわゆる定番のコンテンツをアピールしてはいけません。自社の提供価値を定めると、何を発信すべきで、何を発信すべきじゃないかが自ずと定まりますし、それにふさわしい集客手法が見つかります。

先ほどの事例で言えば、前者であれば手紙の内容にフォーカスして結婚式を通じてどんな体験が新郎新婦とゲストに残ったのかのインタビュー動画をyoutubeやインスタグラムのストーリーズで伝えていくような方法が考えられるようになります。後者であれば、yahoo知恵袋のような悩み相談系のメディアに告知をしたり、ウエディングのキュレーションメディアに露出するという方法もあり得るでしょう。

よく、youtubeは効果があるのかとか、インスタグラムはどうなのかという話がありますが、何を発信したいのか次第で全然変わるというのが実情です。

さいごに:世界のマーケティング自体が複雑化している

マーケティングの世界は、2000年頃までは非常にシンプルだったと言われています。良い商品をつくり、マスマーケティングに投資すればリターンがくると。もちろん、良い商品をつくることが難しいわけですが、それさえできればプロモーションは難しくなかった。だって、どの家にもテレビがあって、新聞を読んでいて、価値感も似ていて、消費行動を大きく捉えていればよかったわけです。ところが、インターネットが普及して、価値感も多様化し、情報の取得方法はバラバラになりました。PCの世界から、ガラケー、タブレット、スマートフォンの世界へと変化をしています。テレビが無い、新聞もとらない家も珍しくなければ、インターネットと言っても、その人が良く使うサービスがインスタグラムなのかヤフーなのか、信じているのはtwitterなのかgoogleなのか、見ているのはテレビかyoutubeか。実際には、それらをみな、多様な価値感のもと、併用しているわけで、その組み合わせのパターンはバラバラです。確実にその人にリーチする方法は、もはや存在しません。多くの結婚式場が媒体を頼っているため、媒体の効果に注目していることと思いますが、媒体の立場で言うと、この複雑怪奇なマーケティングの世界に立ち向かっているわけです。自社集客といっても難易度が高いのは事実です。ただ、複雑であるがゆえに、攻略できれば大きな武器になるのも事実です。重要な局面にあると思いますが、ひとつのヒントにして頂ければと思います。

安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表

花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。

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