【with wedding vol.33】「withコロナ時代」に必要なこととは?(前編)

※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2020年4月号 第122号 の内容を転載しております。

コロナ報道は式場にとっては逆風だった

本稿の執筆は20年3月31日になりますが、新型コロナ(COVID-19)の影響余波が日々日々拡がっております。結婚式場各社(特に首都圏や関西)においては、3-4月施行のお客様への対応のみならず、5月以降の施行のお客様にも影響が出つつあり、精神・時間・財政、あらゆる意味で消耗していることと思います。一方、新規来店は想像よりも影響が軽微という見解が多い印象ですが、今後の展開は全く読めず、こちらへの打ち手も必要になるでしょう。シンプルにいつコロナが収束するのかと嵐が過ぎ去るのを待つのも一手でしょう。が、今回のコロナはいつ過ぎ去るのかわかりません。ワクチンが開発されるまでは収束しないという考え方もあり、その場合は1年半程度かかります。その場合、“アフターコロナ”という言葉の手前に、“with コロナ”という期間を見据えなくなるでしょう(本稿が流通する際には感染者が減少していることを願いますが…)。

経営目線ではどのような展開にも対応できる準備が必要不可欠です。そのためには、発生する事態に臨機応変に対応していくこと以上に、あらゆる可能性を想定してアクションできる準備をしておくことがより重要です。そして、何より新型コロナ騒動下であっても成約済のお客様、見学をしたいお客様がいらっしゃるわけで、それらのお客様に何ができるかを考えることが我々の本文と言えるでしょう。コロナの時代は、世界中誰一人経験をしたことがありません。不透明・不確実な時代は、ある意味では横一線のスタートとも言えます。長文になってしまったため、前編後編に分けてお送りしたいと思います。

新型コロナ時の報道は、結婚式場各社にとっては逆風だったとも言えます。実際には延期がほとんどのところをキャンセルという言葉を使われてしまったり、高額なキャンセル料の事例を大きく取り上げられお客様の不安があおれてしまったり。我々も「82%が参加意向(20年3月3日~5日調査分)」というアンケートを発表させていただき応援させていただいたわけですが(ヤフーニュースのコメント「そんなわけねえ」と荒れておりましたが 苦笑)、想像以上の方々にご覧いただくことができたと思います。これを機に、結婚式産業の見え方をアップデートするチャンスととらえ、その考えを発信させていただきたいと筆を執ります。

成約済の新郎新婦に対して何ができるか?

基本的には延期対応時の実費or必要最低限の請求とし、営業の機会損失に相当する費用は頂戴しないというのが望ましい対応という形になると思いますが、残りの施行枠との兼ね合いも切実にあると思います。また、そのような対応をされていた式場でも、5月施行以降のお客様には現状は未適用で、今後どうするかは悩んでいるというケースもあるでしょう。例えば、5~9月のお客様が一斉に延期の相談などの事態になると、ほとんどの式場が経営破綻してもおかしくありません。例えば、キャンセル料は全部ないし部分的に頂戴した上で、延期時に充当するという提案をするのもありな選択肢だと思います。会社の資金繰りにはプラスになるでしょう。それと並行して、融資も積極的に活用すべきタイミングと言えます。幸い多くの支援制度が発表されており、結婚式場の苦境も広く知られるところになっているので相談はしやすいと言えます。ほとんどの式場各社はまずここに時間がとられていることと思います。

未成約の新郎新婦観点に対して何ができるか?

実は、こちらの重要性も極めて高まってきていると思います。未来の売上を決定するのは新規成約です。ではそこで、従来通りの接客サービスを行うのか、コロナ騒動下のお客様の心理を想像し自社の会場でどんな提案ができるのかを考えて行動するのかでは、大きな差がつきます。

例えば、オンラインで相談できる選択肢を提示できるかは重要になると考えられます。詳しくは後述しますが、感染リスクもさることながら、思った以上に在宅でできることが多くなっていることに気づいた方々が増えている中で、仕事もリモートできるのになぜ式場の打合せは行かないといけないのか?という質問に、真正面から回答することは極めて難しくなると思われます。メールが使えない式場に申し込むことに躊躇するように、オンライン相談がそのレベルに格上げされる可能性は十分あるでしょう。

また、今回のコロナ以前にも、2019年秋の超大型台風の記憶もまだまだ健在です。半年以内に2度も結婚式の延期をめぐる費用の問題がニュースになっている以上、延期時の対応について警戒をするお客様はどんどん増えてくるでしょう。特に、昔ほど会場の違いに重きを置くユーザーが減ってきている中では。

この点、対応できる式場は安心感につながり、集客上も成約上も支持を得やすい環境になっていくと考えられます。

ハード面でも、価値感の変化が考えられます。3密(密室、密集、密閉)が無い環境が重視される中では、「郊外(人が少ないロケーション)」「窓が開く換気の良い会場(ガーデン隣接)」「全館1組貸切」といった条件にあてはまる式場は、「安心」というメッセージを訴求しやすくなるでしょう。

特に、マイカーで見学に行く新郎新婦は今のタイミングでも感染リスクは気にして無いケースが多いですし、郊外のアクセスも気になりません。列席者の心理でも人ごみの多いところに行くよりもマシか・・・という考え方で、認知・見学のきっかけになりえます。実際、郊外型の式場が元気という話も聞きます。

ただ、これらの「郊外にある窓が開くガーデン付き会場で、全館1組貸切!」のようなメッセージを出しても響きにくいでしょうし、媒体上でも効果的には映らないものです。SNS広告などで、情緒面に訴求する形でアピールをしていく(費用対効果を考えるとリタゲだけでも良いでしょう)ことが有効と考えられます。もちろんそれに合わせてHPの表現も変えることが理想的です。

おわりに

新郎新婦目線で述べてきましたが、式場サイドに立った時に必要なことなど整理できればと、そこは後編に続けたいと思います。コロナの件をめぐっては3/26の都知事発令以降、一気に不安感が加速したと思います。自分がもし式場の経営者ならどう考えるか、どのような変数で施策の実行可否や是非が変わるかなどを考えて書いてみました。週毎に状況は刻一刻と変化していきます。リクシィとしても情報発信を通じて、式場各社様のお役に立てればと思いますし、具体的なアクションも考えていきたいと思います。

現在、歴史上最も不透明な状況といっても過言ではありません。ただ、だらこそ、この状況を直視して、その向こう側にどうすればいけるのか、今だから見つけられる希望を見つけられるかが全てのように思えてなりません。

世間は「今の状況で結婚式なんて・・・」と思うかもしれませんが、「いま、このタイミングじゃなければならない」という新郎新婦やその家族の事情も現実にはあります。それを理由に「結婚式もやるべきではない」という考え方は、私もリクシィも全否定します。その権利を奪うことは誰一人許されることではないし、だからこそできる限りのサポートをすべきだと考えます。

今、楽しくないニュースであふれています。
だからこそ、未来の結婚式を、楽しくできればと思います。

安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表

花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。

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