【with wedding vol.30】「音」や「挙式」は集客・成約の要因になりうるか?
※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2020年1月号 第117号 の内容を転載しております。
令和2年となり、改元が昨日のことのように感じていたがもう元年が終わってしまったというのは寂しい気がしますね。2019年12月に、「令和からの新しい挑戦」というイベントがありました。ウエディングジャーナルNo.116でも特集されていましたが、堀江庸雄さん、齋藤伸雄さん、今野秀尊さんといった、日本のウエディングの先駆者であり50年近く携わっておられるという皆さまとパネルディスカッションの機会をいただきました。また、ブライダル総研落合歩さん・ゼクシィ森さんのお話で大局的なデータと展望のお話を教わる機会を頂戴し、私にしては珍しく「音と挙式」というテーマから未来の話をしてみたいと思います。
結婚式における音
当日、お三方の話で共通していたのは、とにかく音や挙式に対するこだわりが非常に強いということ。恥ずかしながら自分自身、前職で音にフォーカスしたことはほとんどないですし、今のコンサルティングのお仕事でもそうです。もちろん結婚式当日、音が占める役割が大きいことは言うまでもないのですが、なぜ自分がここにフォーカスしていないかというと、音が集客や成約につながりにくいと考えているためです。もしかしたら当日のイベントに参加されている方も、「音が大事なのは異論がないんだけど、そこにこだわって果たして来館・成約が増えるのだろうか」という空気もあったように思います。逆に、「結婚式当日の話をここまでこだわって話を聞く機会が久々なので、大事なことを思い出せた」という感想をもたれた方も一定いらっしゃったように思います。
■結婚式における挙式
挙式についても、現在の教会式が一挙に広まったのは1981年のダイアナ妃のロイヤルウエディングがきっかけで、それまでは人前式や神前式がスタンダードだったそうです。バブルや人口増のプロセスで現在も多くつかわれているチャペルが広まり、今の形式になったわけですが、39歳の私からすると「教会式がスタンダード」という固定観念に染まっており、人前式が珍しい・クリエイティブであるという感覚で、最近増えてきている感覚をもっていますが、50年のスパンで見ると、一周しているという感じでとらえられるようです。イベントでは、今後人前式がより広まるだろうという意見が大勢になりましたが、こちらももしかしたら参加者の中では「人前式が増えているのは事実だと思うけど、そこから何かが生まれるヒントになるのか?」と、どう次につなげればいいかイメージできなかった方もいらっしゃるかもしれません。
音と挙式が示す2つのヒント
結婚式の音と挙式ですが、実は大いなるヒントが隠されていると自分は思います。1980-90年は、インターネットはもちろんのこと情報誌も無かったということで情報が限られており、良い結婚式を提供している式場の人気が高かった時代でした。結果、音や挙式を始めとする、当日のクオリティや満足度の高さが来館や成約にも直結しやすかったと言えます。一方、情報誌やインターネットにより、それらのフォーマット最適な情報が届くようになったため、そこに適さない情報(結婚式でいう当日やソフトの情報)が来館や成約に影響を及ぼしにくくなったという違いがあります。そう考えると、「音や挙式は本来は来館や成約につながるはずなのに、今の集客フォーマットの問題でそれがつながりにくくなっている」という言い方が正しいはずです。ですが、集客フォーマットが変わる可能性があるとすればどうでしょう。
①さらなるデジタル化による変化
今のお客様はリアルな情報を求めているというニーズと、5Gの普及やサウンドテックの発展により、当日の様子や音の具合・挙式の価値がよりストレートに伝わりやすい環境に変わっていくでしょう。音なり挙式なり披露宴やパーティ自体のクオリティがより評価されやすくなる可能性は大いにあります。既に、SNSを通じてお客様のリアルな口コミや体験が拡散されやすくなっていることは賛同するところでしょうし、程度の具合の議論こそあれ、よりオープンになっていくことは想像に難くないでしょう。アクセスの優位性なども、自動運転が普及することで今ほどの価値が失われる可能性も十分あります。むしろアクセスは悪いけど価格が安い方が良いという価値感になる可能性も十分あり得ます。
②歴史は繰り返すという事実
先日、「ミヤネのナンバーワン」という特番にChoole(チュールウエディング)を取り上げていただいたのですが、その中で「ゴンドラに注目!?」という内容がでていました。ゴンドラ、、、どうでしょう。「いまさらゴンドラって・・・」という意見が大半ではないでしょうか。ただ、20代前半の方は、ゴンドラが流行ったことを誰も知らないのです。その世代の方々には新鮮に映って、純粋に「やってみたい!」となる方もいらっしゃるとのこと。私の周りでも20代後半の男性が「ゴンドラに乗ってアリーナ!と叫びたい!」と言っているのを聞いたことがあります。もちろんまだまだ一部の声であり、これがスタンダードになるかはわかりませんが、昔、流行ったものが復活するという可能性もあるということは忘れてはならないでしょう。現代ではコンテンツは消費され、全く新しいものが出てくる可能性が低い中では、過去流行っていたものが、時代背景と共に意義を変えて再度隆盛するということは何ら珍しいことではなく、むしろそういうものの方が確度が高いとすら言えるかもしれません(タピオカもそうですね)。歴史は繰り返す、というのは真実です。
おわりに
画一的と揶揄される結婚式ですが、令和になり、変化してきているという報道も増えてきました。その中で、やはりハードやスペックではなく、結婚式当日が大事だという話にお客様もどんどんフォーカスされていくのは必然です。結婚式当日の差別化でお客様が式場を選ぶ世界、非常に素敵ですね。ウエディング業界に携わっている方々全員が、そういう世界になることを本来望んでいるのではないでしょうか。音や挙式の話は、今この瞬間来館・成約につながるかと言われればまだまだわかりません。ただ、そうなる可能性を排除するのと、「もしかしたらそういう時代になるかも」とアンテナを立てておくのとでは、時代の流れに対応する際のスピードが変わります。それは、ホームページの表記を変える変えないというレベルかもしれませんし、ハード自体の見直しをするしないというレベルかもしれませんし、スタッフの教育方針という話になるかもしれません。
歴史は繰り返す。結婚式自体、一周回って「やって当然」のものからなし婚の増加を経て「やることがイケてる」というシナリオも十分あると思います。今回は、未来を考えるということで、仮説ベースのお話が多くなりました。そうなるかどうかは半分は時代の流れですが、半分は産業次第ということで、2020年もがんばっていければと思います。
安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表
花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。
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