【with wedding vol.25】式場の業績管理の基本はKPIを見える化し分解してみること

※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2019年8月号 第108号 の内容を転載しております。

コールセンターがあるとKPIが見えるようになる

2019年も折り返しを過ぎ、年度末が12月の会社は来年度の予算をどうつくるかと、3月の会社は残り半期でどのように業績を達成させるのかと、考えておられることと思います。そんな中でコンサルティングの相談をいただくことも増えています。

「リクシィのコンサルティングって最近どうなんですか?」と質問されることも多いのですが、実績としては累計20社以上で、「成約率アップ!」「単価アップ!」というよりは、インターネットマーケティングや、経営・事業戦略などの事案が多くなっています。既存の取り組みの延長では中々成長に限りがあるという中で、違った角度でのアクションが必要なのではというニーズが強いです。中でも特徴的なのはコールセンター案件で、ブライダル大手8社でのサポート実績をつくらせていただいています。コールセンターの最大のメリットは広告費を増やさずに来館が増える点にありますが、それ以外のメリットの1つに「KPIが見えるようになる」という点があげられます。

ただ、どんなKPIが存在していて、ブライダルの業績がどのようにできあがるのかを理解すると、数字をあげるために何をすべきなのかが自ずと見えてくるもの。今回は、ブライダルの業績がどのようにできあがるのか、基礎的なお話を紹介させていただきます。

ブライダルの業績の構造

図にすると次のようになります。

図1

具体的に数字を入れていくと、

・広告宣伝費を年間6000万円使用する
・反響数が1000件になる(1反響6万円)
・来館予約数が800件になる(アポ率80%)
・来館数が720件になる(来館率が90%)
・総成約数が288件になる(総成約率が40%)
・差引成約数が260件になる(成約cxl率が10%)
・売上が10億4000万円になる(単価400万円)

という流れになります。
これを話して否定する人に会ったことはありません(笑)
来期の予算を策定した際に、「うぅ・・・、どうしても11億円にしいといけない・・・」という状況に陥ることがあると思います。そんな時に役立つのもこのKPIです。

ブライダルの業績は掛け算でできあがっている

11億円にするにはどうすればよいでしょうか。私ならこう考えます。

・広告宣伝費を年間6000万円使用する
・反響数が1000件になる
・来館予約数が810件になる(アポ率81%)
・来館数が737件になる(来館率が91%)
・総成約数が302件になる(総成約率が41%)
・差引成約数が275件になる(成約cxl率が9%)
・売上が11億1100万円になる(単価404万円)

見事に11億円に到達しています(笑)が、やっていることは全てのKPIを1%ずつ改善するということです。1%改善するとは、「100回の機会に今までよりも1回だけ多く成功させる」ということ。これならできそうな気がしませんか。実際に、ブライダルの業績はバケツリレーみたいなもので、少しでも水をこぼさずに施行当日まで運べるか、というとらえ方をすべきだと言えるでしょう。この1つ1つのKPIをコントロールできていれば、「オペレーションの強い組織」と言って良いでしょう。これがわかると次のような経営判断の失敗はしなくなります。

失敗例①:部分最適にフォーカスして他のKPIを下げてしまう

ブライダルフェアの予約をweb上で受ける際に、「希望人数」「挙式予定日」などを細かく入力してもらいたがる会場が非常に多いのですが、これらの項目を減らすだけでwebからの来館数は確実に増えます。1.5倍になるということも珍しくありません。このようなミスは成約率にしかフォーカスできていないことが原因で、その手前の数字に対する意識が及んでいれば違った判断があるでしょう。

失敗例②:広告宣伝費を無駄に削ってしまう

「広告宣伝費を6000万円⇒5000万円に減らせば1000万円浮くじゃないか」と誰もが考えるものですが、ブライダルにおいては非常に危険です。6000万円を使った結果を検証して来館に寄与しなかった無駄な広告が混ざっていれば即刻停止すべきでしょう。ただ、効果がある広告を減らすとその瞬間反響数自体が減るので成約が増えることはないのです。

必要なのは考え方の確認と見える化

例えば、広告宣伝費の議論ひとつとっても、効果検証をしていない会社が未だ多いというのが現実で、一刻も早く把握する方法を確立すべきでしょう。例えば、その解決方法の1つがコールセンターです。冒頭で、導入のメリットに「KPIが見えるようになる」ことを挙げましたが、来店予約の瞬間にどの広告から反響が得られたのかを把握できるようになり、その反響が来館予約に結びついたのか、来館キャンセルをせずに来館されたのか、簡単にわかるようになります。ダイエット自分の体重がわからないまま「1%減らす」という目標を立てても意味が無いように、数字をとらずに「1%改善する」ということは不可能なので、データを取得して、記録することから始めるのが良いでしょう。ポジショントークになりますが、コールセンターで失敗したという事例は今のところありませんので、強くおススメしたいと思っています。

さいごに

「見える化」したら個々のKPIを改善するプロセスに進むことができるようになります。スペースの観点から詳細に記すことは省きますが、ポイントは分解して見ることです。「アポ率」の観点では、「対応したスタッフ別」「来店希望曜日別」「リードタイム別」「認知経路別」などの軸で差異が無いかを見てみると、「エージェントからの反響がアポになっていない」ということがわかったりします。そこで、アポイントにならなかった反響を見てみると、「ドレス持ち込みできるのか?」という質問に「来館されてから相談を」という回答をして来館につながらなかったというケースが発見されたりします。場合によっては認めているという会場ならば「持ち込み自体は可能で、その他の条件面ですり合うのかを来館いただいて確認してもらえるとありがたい」などの返答をすることで、アポイントにつなげる確率を高められるのではというアイディアが生まれてくるものです。(持込みをいかなる時もNGにしている会場の場合は、他の反響で対応できそうなものを見つけると良いでしょう)

1%改善するとは、「100回の機会に今までよりも1回だけ多く成功させる」ということ。ブライダルの業績は掛け算で成り立っており、1.01倍の5乗で1.051倍になります。
伸び白がどこにあるのかを見つけて、改善を重ねることで、確実に業績はあがります。年度末に向けて、あるいは来年度に向けて、ひとつのヒントにしていただければと思います。

安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表

花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。

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