【with wedding vol.26】イールドコントロールと粗利の概念で業績をあげる

※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2019年9月号 第109号 の内容を転載しております。

出し惜しみや人数縛りで陥りがちな失敗例


前回、「結婚式場の業績管理の基本原則」というテーマを紹介させていただきましたが、今回は「イールドコントロールと粗利の概念で業績をあげる」です。ウエディングでイールドコントロールとは、聞きなれない言葉かもしれませんが、ホテルや航空業界ではよく耳にする言葉だと思います。ざっくり言うと、1部屋あたりの収益を最大化する販売戦略のことで、満枠になりそうであれば金額を高くして、売れ残りそうだったら金額を低くする。売れやすい部屋は高くして、売れにくい部屋は安くする。このコントロールにより、全部屋合計の収益を最大化させようという考え方のことです。ホテルはどこでもやっていることだと思いますが、そう聞くと、ウエディングでも思い当たることがあるはずです。1年後の大安土曜日午後は人数の多いお客様だけ、直近であれば割引をしてでも販売するなどといった調整は、どの結婚式場でも行っていることだと思います。ところが、大安土曜日午後を出し惜しむがあまり、4か月前でも受注しておらず結果割引をして受注をしたり、場合によっては空き枠のまま当日を迎えてしまう・・・といった現象を起こしているケースがあります。これは大きな機会損失と言えるでしょう。それ以外にも、「40名以上しか受注しない」というルールで受注活動を進めた結果、稼働率が50%で空き枠まみれというケースも見られます。聞くと、「単価が下がるのでダメだ」という話で一見正しそうに見えますが、ビジネス的には大きく間違えていると言わざるを得ません。数字に弱い方や、、ウエディングを経験していないトップの方の場合に、このような話題がでてきがちですが、裏を返せば、この点を工夫するだけで受注が伸びるという話でもあり、コツとして活用いただければと思います。

「大安土曜日午後は1年前に売ってはいけない」の間違い

最も分かりやすいのがこの例で、このように盲目的に判断している結婚式場がいまだに多いなと思っています。正確には、「大安土曜日午後は1年前に安売りしてはいけない」であって、「大安土曜日午後は1年前に高く売る」というのが正解です。理由は以下のようなことが起こるためです。

A)大安土曜日午後を売らない代わりに他の日程で40万円値引で受注して、大安土曜日午後を半年前に値引きなしで受注した。2枠合計で40万円の値引となった。
B) 大安土曜日午後を値引きなしで売り、半年後に大安土曜日午後じゃない日程を40万円値引で受注した。2枠合計で合計40万円の値引となった。
C)大安土曜日午後を売らない代わりに他の日程で40万円値引で受注して、大安土曜日午後を半年前に30万円値引で受注した。2枠合計で合計70万円の値引となった。

まず、AとBを比べると、同じ結果になっていることがわかります。値引きしないなら先に売っても問題ないということです。もちろん半年前に値引無しで売れるなら問題はありませんが、半年後に値引きなしで売れるのかという保証はどこにもありませんし、値引きなしで売れない場合、Cになるリスクがあります。Cになると、トータルの値引が増えてしまいました。

結婚式場の経営においては、施行枠全体でいくらの売上・粗利にするかが全てです。大安土曜日午後を売らないことで全体の成約数が増えることにはなりません。「後で、大安土曜日午後がマストのお客様がいらっしゃった時に、その枠が無いと決まらない」ということを気にするなら、大安土曜日午後の販売ペースを決めておくということには意味があります。ただ、「その枠があれば決まったのに」という話はどの枠にも一定言える部分があり、諸々考えると値引きなしで買ってもらえるならその方が良いと判断するのが良いと思います。

本当に重要なのは粗利、基準額をクリアするなら割引しても持ち込みしても構わない

値引きよりも重要なのは、1枠あたりの粗利です。例えば、「値引き40万円、人数100名、売上500万円」のお客様と「値引き0万円、人数40名、売上250万円」のお客様の場合、どちらを優先すべきかというと、明確に前者だと誰でも判断できると思います。例えば、粗利率60%とすると、前者は500万円×60%-40万円=260万円、後者は250万円×60%-0万円=150万円と全然違います。

逆に、「値引き0万円、人数40名、売上350万円」と、「値引き80万円、人数80名、売上400万円」のお客様ならどうでしょう。前者は210万円、後者は160万円となり、前者の方が有利になるとわかります。「40名基準」などと人数で受注するしないを考えるケースもあると思いますが本質的には意味がなく、値引きをしなければ喜んで受注した方が良いというケースは山ほどあります。

値引きや人数や色々な指標がでてきますが、最も重要なのは粗利です。極端に言うと、粗利さえ確保できれば、値引きをしても良い、人数が少なくても良い、持ち込みをしてもらっても問題ないわけです。土曜大安午後を出し惜しむべきなのは高い粗利を期待できるからです。裏を返せば、日曜赤口午後などはその他の枠ほど粗利を期待できるわけではないので、低めに設定しても良いでしょう。各枠ごとに基準額を設定されると管理がしやすくなっておススメです。基準額といわれるとどうやって算出するのか困るかもしれませんが、単純に過去実績を平均して、人気の高そうかどうかに合わせて増やしたり減らしたりするところから始めれば良いでしょう。

さいごに

枠の出し惜しみをしてしまっていないかどうかを確認する最も簡単な方法は向こう3か月を見て、受注枠に余りがなかったかどうかです。特に施行のオンシーズンである10-12月に売り残っている土曜日があるようなら、販売戦略を誤っていたと考えるのが良いでしょう。満枠になるのが珍しくないという商環境時には、日程の枠入れの難易度を考えると、土曜大安午後を出し惜しみするというのも正しかったのだと思います。ただ、枠が余っている会場が増えている現状ではその考え方は正しくありません。
時代の変化や商環境と共に何が正しいのかも変わります。ここを見直すだけで、業績があがる会場もあるはず。ぜひ参考にされてください。

安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表

花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。

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