【with wedding vol.29】ウェディングビジネスにおけるYouTube活用
※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2019年12月号 第115号 の内容を転載しております。
5G到来を受け、今、最も熱いアプリに
今回は、YouTubeについてです。結婚式場自身が媒体を通さずに、ダイレクトにいかにお客様にアプローチできる環境にするのかが非常に重要になっており、Instagramへの注目もその流れの一部だと思いますが、5Gの到来を受けて、今まで以上に盛り上がりを見せているのがYouTubeです。ここ数カ月でハウツー系の動画が顕著に増加し、11月を前後してダルビッシュ有さんや中田英寿さんといった著名人や芸能人がチャンネルを開設し始めるなど、目まぐるしい変化が起きています。私自身も、「今、最も熱いアプリはなにか?」と聞かれれば、「YouTube」と答えています。それほどまでに、今までの存在感をはるかに上回る影響が訪れそうな気配がします。
そこで、自分でやってみなければわからないと、2019年11月13日より、自分のYouTubeチャンネルを開設してみました!たまにお話していますが、Instagramに私が初めて投稿したのは2010年でした。その際、今ほど流行るとは全く思わず、5年ほど前に、Instagramが伸びると聞いた時、自分の先見性の無さとトレンドを掴み損ねていたことに衝撃を受けたことがあります(苦笑)リクシィのInstagramのフォロワー数で言えば、Chooleで2.5万を突破し、一定伸びてきておりますが、写真を撮る習慣の無い、もっというと撮影に対する苦手意識の強い自分としてはあまり向いているプラットフォームではありません。一方、YouTubeであれば、普段お話している機会は多いですし、それをアップすれば実行できるのではとやり始めてみました。インターネットでは、トレンドが来る前から入っているプレイヤーが圧倒的に有利になるので、YouTubeでは同じ轍は踏まないぞという思惑もあります。
今回は、本稿をご覧くださる皆さまの取り組みのヒントや後押しにになれば良いなとその模様をお伝えします。良いなと思ったら、ぜひYouTubeを見て、応援の意味でチャンネル登録していただければと思います(笑)
YouTubeチャンネル「あんてぃも社長」
開始2週間で登録者数72人とまだまだ少ないです。100人が最初の壁とのことで、自然増だけでなく直接知り合いにもお願いして登録もしてもらっています。テーマは「えっ結婚式って、そうなの?」という内容で、ファクトをベースにしながらも、ストレートに自分が考える結婚式のあるべき姿を伝えていくスタイルです。産業内ではなく、世の中へのメッセージということで、「即決には気を付けましょう」という話や「持ち込みできるかどうかは式場決定前が生命線」という一部の式場には耳の痛い話もします。一方、「単価が申し込み後にあがってしまうのは、結婚式場を選ぶ際にちゃんと考えていれば違いが無くなる」「どんな結婚式をしたいかを考えて、結婚式場を選ぶ方が良い選択ができる」という消費者サイドへの啓蒙も伝えます。ウエディングの産業がオープンになっていくことがとにかく重要という考え方で、消費者側と提供側(結婚式場・ベンダー)との距離を縮めていきたいという想いです。
とりあえず「YouTuberをやります」は関心をもってもらえる
YouTuberをやります!と宣言したところ、色々な方面から「すごい!」「おもしろい!」といった反響をいただきました。YouTuberという言葉は珍しくない思うと、今でも興味を持ってもらえるのはやや意外でした。私の周りにいるのはビジネス感度の高い方々なので、ビジネス的に「YouTubeに関心をもっているけど、実際どうなのかな?」と考えていて、知り合いの私が「やる!」となったことに反応しているのかなという印象です。とするとその反応があるのも「今だから」という要素が強いということなので、もし関心をもっている式場やベンダーがあれば、今がラストチャンスかもしれません。世の中の流れは速いので、この連載が出ることにはもう遅いかもしれませんが・・・。
何を流すのか?
ウエディング業界のYouTube活用はまだまだこれからという状態だと思います。成功事例も私もあまり知らない中で申し上げると、挙式会場の様子を伝える動画や、会場内の様子を伝える動画は、一本あっても良いと思いますが、連続投稿にはほとんど価値が無いのではという印象です。理由は簡単で、「ついでに見る」という視聴態度のユーザーに対するニーズがほとんど無いと思われるからです。
YouTubeの特性として、検索で動画を見る人は1割にすぎず、9割が関連動画でナチュラルに表示されたものが見られています。そう言われると、自分も確かにそうだな…という感覚が皆さまにもあるのではないでしょうか。実際に、この関連動画の精度の高さがYouTubeの強みにもなっています。
その状態で、たまたま皆さまの会場に関心のある人が見てくれれば良いと思いますが、その可能性は極めて低いです。「ついでに見る」という視聴態度のユーザーに特定の結婚式場のコンテンツだと具体的すぎて、ピンとこないでしょう。例えば、自社会場のサイトに来たユーザーに見てもらいたいという目的なら別ですが、それであれば動画コンテンツをつくるという観点であって、YouTuberをやるということではないように思います。それでは、抽象度を程よくあげたコンテンツとは何が考えられるでしょう?
仮説は、「地域」×「どんな結婚式ができるか」or「こんなノウハウホルダーがいます」
前者は、その地域地域に根差した結婚式ニーズに対応したやり方を伝えるものです。会場のPR戦略として、「こんなステンドグラスもある素敵なチャペルで挙式ができるよ!」ではなく、「こんなフレンドリーでミュージカルのようなオリジナルな挙式ができるよ!」を伝えるとするなら、「オリジナルな挙式の事例を動画で伝える」「それを考えるコツを伝える」といった形で、汎用度をあげて、「あ、こんな挙式もあるんだ」「あ、そこからこんなパーティスタイルもあるんだ」と伝えることが可能になります。例えば、「オリジナルにするために、おふたりの家族にサプライズでコメントを撮りに行くことをスタッフがやっています」とか「野菜は当日朝に新鮮なものを仕入れています」といった様子も、動画で伝えると裏側のリアルが、「サプライズ映像を準備する事例」「野菜市場の様子を見られる」といったニーズにも応えながら、視聴者を増やせる要素をつくれます。
後者は、結婚式場で仕事をされている方々のノウハウを発信するという観点です。例えばシェフなら、料理の作り方や賄いを動画で発信するのはありでしょう。フォトグラファーなら、撮影のコツでも良いと思います。「他にもそういうことできる人いるから、自分はやっても意味がないんじゃないか」という声があがるかもしれませんが、YouTube上にまだないコンテンツであれば差別化は可能です。また、明確な独自性を設けるならば、「地域」という概念を入れるだけで、効果はあがるでしょう。「特産品を用いた賄い」「そのエリアのフォトスポットで上手に写真を撮る方法」などのニッチなもの、かつ、エリアという意味でターゲットに合ったユーザーに喜んでもらえる可能性のある内容にできるかもしれません。
おわりに
「なかなか自社の良さが伝わらなくて、来館くだされば伝えられるのに…」と悩んでいる結婚式場はあまたあると思いますが、YouTubeはそのソリューションになる可能性があります。ポイントは、「こんなところできます」ではなく「こんな結婚式ができます」にシフトすること。時代は明確に変わっています。Instagramはリアルな情報を画像で見られる点が好まれていますが、YouTubeはリアルな人を映像で見られる点が好まれていると言えます。もちろんどんなリターンがあるかわかりませんが、先行者がモノをいう分野です。ローリスクハイリターンの精神で取り組んでみても良いのではないでしょうか。私も、自分自身でやりながらアップデートした情報があればお届けしたいと思います!
安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表
花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。
twitter:https://twitter.com/antimo
Clubhouse:@antimo0926
note:https://note.mu/masakiando