リフォーム時の持ち込み地金の扱い

リフォーム時にはお客様は何かしら素材を持ち込まれている訳ですが、持ち込んだ地金を本当に使っているの?と疑問に思われる事も多いはず。実際の扱いはどうなっているのか解説していきます。

お客様が思っている流れ

一般的に皆さんが思われているのは
お客様
 ↓ 地金を持ち込む
お店
 ↓ 持ち込み地金を渡す
卸メーカー(入らない場合もあります)
 ↓
職人(加工メーカー)
 ↓ それで作る
卸メーカー(入らない場合もあります)
 ↓
お店
 ↓
お客様
と思われているでしょうが、実際には違います。
お店、メーカー、職人の何処かの段階で地金を相場で現金化計算し、出来上がった製品価格から差し引きし、不足分をお客様に加工代としてお支払い頂く事になります。言うなら下取り買い替えの感覚です。

お店の一般的なセールストークはお持ち込み地金でお作りしますと言われますが、実際の流れはこのようになっています。地金を直接使用することはありません。そのためこれで直接作ってくださいと注文されててもほとんどの場合断られます。

当店の場合

既製枠を仕入れて石留し完成させる場合は同じ流れになります。
当店で金を買入し清算します。

しかし、私が直接手作りする場合は違います。
加工時には色々と損失が発生します。そのため一律、出来上がりの2割を「減り目」として出来上がりに加算します。
例えば5gで出来上がった場合1gの減り目。合わせて6gの地金を持ち込まれた場合、地金の不足分は発生しません。残りをお返しします。

先程の買入と何が違うかといいますと。元々、昔商品を買われた時、地金代には職人、メーカー、販売店と、流通した業者の儲けが入っています。
買入はそれらを全部引いた上で、更にはK18の場合は持ち込み地金の重さを75%にし(純金の含有量)、さらには手数料等を差し引きします。
価格的に大幅に目減りする事になります。

単純に20%を減り目とするだけの計算と比較すれば、大幅に安く計算されます。減り目計算は価格を保ったままの2割減に比べ、その半値くらいと思っても差し支えありません。
今では減り目計算するお店もほとんどありません。
当店でも既製枠を使用する場合は買入計算するように、流通の仕組み上、減り目計算では採算割れするため、このような買入計算が行われます。

では当店の実際の作業で使われる地金は持ち込み地金を直接使っているのかというと、直接は使用していません。当店で持っている地金で製作し、先程の減り目計算し、不足していれば不足分を現金請求。足りていれば必要分を切り取り、残りを返却したします。
持ち込み地金は処理し、後のお客様に使用される事になります。

何故直接使用しないのかその理由は、製品によってはロウ材など不要な成分が混ざっている場合などがあり、そのまま混ぜる事が出来ない地金である場合があります。
その他には減り目は2割と書きましたが、実際に作る場合はパーツを削り出すためにもっと大量の地金が必要で、沢山のパーツを使用する場合、出来上がりの5倍~10倍の量の地金を準備しておかなければ作ることができません。
その為、重さを計りあって物々交換している事になります。

どうしても自分の地金を使って欲しい場合

形見だからどうしてもと言われる場合があります。しかし、一般的には断られます。加工をその場でやっているようなお店以外では、引き受けることはほぼできません。
先程製作には大量の地金を必要とすると説明しましたように、減り目分程度余分に持ち込んでも作ることができないのです。
大量に持ち込める場合にのみ当店では承っています。地金を纏める分の処理費分も加工代に加わる事になります。

もしくは持ち込み分が少なくても、必要であろう分まで当店の地金と混ぜ合わせて作りますが良いでしょうか?と言う事をご了して頂ける場合はお受けしていますが、ロウ材が大量に使用されている製品のお持ち込みの場合は、残る地金の品質低下を招きますのでお断りする事もあります。逆にキャストで出来ている量産品はロウ材の使用がほとんどない為利用できます。

ごく稀に直接混ぜますというお店もあるようですが、実際には色々と問題もあります。

更にもう一つ問題が出てきます。残り地金の問題です。
加工すればヤスリで削った細かい粉が出ます。切れ端などもあります。
それらをお返ししなければなりません。粉のままではお客様は困りますので角材くらいの塊にはしておかなくてはなりません。
しかし、お店の地金を混ぜている場合はどう処理したら良いのか。これが一番の問題になります。
なので直接使用するというのは色々と問題が多く、直接加工しているお店でも処理しにくい問題を抱えているのです。

最後に

大体の流れや処理方法を説明させていただきましたが、地金の取り扱いは条件により様々に取り扱われます。
この記事を読んでいただいて、一回ですんなりと理解できる方も少ないかと思います。
お店にとっても買入処理で精算処理するのが一番問題が発生しない方法なのです。

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