【公開終了→目次は読めます】『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』を全文公開します。
はじめまして。プロ格闘ゲーマーのときど(谷口一:たにぐちはじめ)と申します。メディアでは「東大卒プロゲーマー」として取り上げていただくことが多いです。
年間を通じて「ストリートファイター」シリーズの大会に出場し、ゲームの対戦をすることが主な仕事です。
12月5日に『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』を出版させていただきました。
今回、この本をもっと多くの人に知っていただきたくて、1/5(日)いっぱいまで、内容を「全文公開」することにしました。
このタイミングでなぜ全文公開をすることにしたのか、ご説明したくてnoteを開設しました。もしお時間あれば、読んでいただければうれしいです。
僕が、本の全文公開を通じて伝えたいこと。それは格闘ゲームへの思いです。プロゲーマーである僕にとって格闘ゲームは大切な生業ですが、それだけにとどまりません。
若い頃からほかに趣味らしい趣味もなく、学校の課外活動もしてきませんでした(籍をおいたものもありましたが数合わせの幽霊部員でした)。ずっと格闘ゲームを夢中で遊び続けて、気がつけば20年以上の月日が経ってしまいました。
遊んでも遊んでも遊び尽くせない。僕のキャパシティーは格闘ゲームで十分に充たされていたのです。これまでもそうでしたし、これからもそうでしょう。
「ときど」という人間にとって、格闘ゲームは切っても切り離せない存在なのです。
自分自身は夢中になって遊んでいたものの、それと同時に格闘ゲームの世界は閉じたものであるという感覚はどこかにありました。広がりに欠けるというか、仲間内だけの私的な営みに過ぎないのだろうという思いです。
学生の頃に親戚の集まりで「一(はじめ)はゲームの大会で1位を取ったのよ」と母に紹介されて抵抗をおぼえたことがありました。プロゲーマーになってから「格闘ゲームの魅力は?」とメディアの人から聞かれて言葉に詰まり、どこかから借りてきたような言葉になってしまったこともあります。
「自分にとっては最高の娯楽だけれど、多くの人に受け入れてもらえるものではないだろう」
「やってない人に本当のところはわかってもらえない」
「あまり大っぴらに勧められない」
脳天気な性格の僕でさえ、そのような思いはありました。あまり自信がなかったということです。
そんな僕が、できるだけ多くの人に(ゲーマー以外の人にも)「格闘ゲームって素晴らしいよ!」と正面から伝えたいと思うようになったのには、明確なきっかけがあります。僕自身が今回の本に書いてある大スランプを体験したからです。
「勝つための正解」だけを求めてあらゆるムダを切り捨てていた僕は、いつしか勝てなくなっていました。(本文を読んでいただければ伝わると思いますが、)無意識に「格闘ゲームをナメていた」。そのツケが回ってきたのです。
試行錯誤の日々、それは自分の原点を確認をする作業でもありました。
格闘ゲームはもともと、ゲームセンター(以下、ゲーセン)が中心の文化です。ゲーセンではバックグラウンドを異にするいろいろな人が「格闘ゲームが大好き」という点だけでつながっていました。
強くなったからといって、誰に褒められるでも認められるでもない。自分にとって特別だと思ったものを、心の底から楽しんで、やり切って、真剣勝負する。そんなゲーセンに集まっていた「ちょっと変な人たち」が、コミュニティの中心でした(僕もその一人です)。
その「ちょっと変な人たち」の中には「自分だけのテーマを持って格闘ゲームと向き合う」といったプレイヤーが少なからず存在しました。
自分の使っているキャラクターの魅力をどう引き出すのか。自分にとって理想の戦い方とは何なのか。それらをどうすれば表現できるのか……。勝敗だけにとどまらない彼らの取り組みが、格闘ゲームの可能性を大きく拡大したことは間違いありません。
「勝つための正解だけを追う」。無機質かつデジタルなやり方を続けて袋小路に陥っていた僕にとって、そんな彼らの取り組み方には、たくさんのヒントが隠されていました。
勝てなくなって初めて、僕は彼らがやってきたことの価値を思い知らされたのです。いわゆる効率を追求するだけなら、そもそもAIにはかなわない。人間であることの意味や必要性のようなことを、たぶん生まれて初めて考えさせられました。
僕の新たな取り組みは、こういった学びを背景にしたものです。そして、格闘ゲームが「真剣に挑む価値のあるもの」だったと気づくことができました。
真剣であること。それは四角四面であることを意味しません。軽やかさしなやかさが、真剣な取り組みには必要です。人間らしさと言い換えても良いでしょう。そのようなことを僕も少しだけ実感できるようになりました。
ここ数年、僕らの業界は「eスポーツ」と呼ばれ、見てくださる方々もいっきに増えました。ありがたいことに、プロゲーマーが「子どもたちのなりたい職業」にも選ばれたそうです。
でも、そういうかっこよくてクリーンなeスポーツのイメージとは真逆の「人間らしさ」「人間くささ」こそが、格闘ゲームの魅力だと僕は思っています。この本から少しでも、そのことが伝われば幸いです。
下記にアマゾンのリンクも貼っておきました。もし内容を読んで、「手元に置いておきたいな」と思っていただけた方は、お買い求めいただければうれしいです。全国の書店様にも置いてあります(読めば読むほど味が出る、するめみたいな本になっていると自負しています!)。
ここまでお読みいただいた方、ありがとうございました。最後に、今回の無料公開について快く応じてくださったカメラマンの大須晶さんに、改めてお礼を申し上げます。本にはない写真も載せたので、お楽しみください。
令和元年 12月29日 TOPANGAチャリティカップを終えた翌日に
ときど(谷口 一)
【1月6日追記:全文公開は終了しました】
今回の無料公開をきっかけにたくさんの方にお読みいただき、本当にありがとうございました。これからも、僕の格闘ゲームのへの思いが一人でも多くの人に伝わるよう、活動していきたいと思います。
目次は引き続き公開しておりますので、もし「面白そう」と感じたら、amazonや書店でお買い求めいただければうれしいです。そして、ぜひ感想をSNSなどでお寄せください!
【目次】
写真(ページ内全て):大須晶 @ohsuAK https://ohsuakira.smugmug.com
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