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第三話 癒されたいだけなのに

※画像の銭湯と本編に出てくる銭湯は別の銭湯です。

随分と更新が滞ってしまった。
言葉を生むのってものすごく労力がいる。
誰かに見せようとか、誰かに届けようなんてことは毛頭ないわけだが
自分が心地よく書けることとかを考えると、どうも体が固まって何も書けなくなってしまう。
そんななかやっと「よし、今回はこれだ」と意気込み続けて四ヶ月、重い腰を上げてくだらない話を書こうとしているから覚悟してほしい。

ご周知の通り自分はもっぱらの「銭湯」「サウナ」の愛好家である
基本的には衝動を持っていくことにしており「今日行こう」と思ったら即日実行が長期通いの秘訣だ
文字を書くことなんかよりよっぽど考える必要がなく、行けば裸一環。
周りにいるおじさんや若者たちの湯に浸かる姿をぼーっと見ながらその人たちの生活を勝手に妄想して覗きみることにしている。

そんな癒しの空間銭湯。
少し前にサウナ付きの銭湯に行った時の話。
いつも通り体を洗いいざ浴槽へと、向かった。
隣ではおじいちゃんが電気風呂に入りながら口を開けて気持ちよさそうに入っている。
こういう姿を見るのが堪らなく好きなのはなんでなのか
きっとこういう類のなんとも言えぬ感情を詠んで「いとをかし」なんていうのだろう
全然よくわかってないけどそういうことだと思っている
おじいちゃんはいるだけで趣があるんだもの。きっとそういうことだ。

そんなどうでもいいことを基本的に考えながら浴室に居座っている自分であるが、ぼーっと考えていた、ある瞬間。
違和感を覚えたのを今でも忘れない。

今回行った銭湯はリニューアルしており、かなり綺麗な建物。
シャワーや浴槽には「軟水」がでる設備が整っている
体を洗うのにはもちろん設備の掃除も普通の水道水なんかよりも簡単にできるらしい。
例に漏れず、その銭湯もかなり綺麗でものすごく清潔感のある浴室をしていた。
そんな綺麗なあの浴室で、ツルツルピカピカの銭湯に似つかわしくない「ある匂い」がしてきてしまった。
(いや厳密に言えば「臭い(におい)」か、、?)

水風呂に気持ちよく入っていた時、あからさまに「強烈な異臭」がしてきたのである。
「ん?」一瞬ワケがわからなかった。
きっと気のせいなんだろう、掃除の後とか塩素の匂いするし。
うんそうだ。これはちょこっと掃除してた人が疲れていて消毒した後に流し忘れちゃったんだ。
さっき一回目に入った時はこんな臭いしなかったから「サウナに入って鼻が通ったせいだ」とも思っていた。
ものすごく綺麗な銭湯だからどう考えてもそうだ、と自分を一旦は落ち着かせた。
がしかしそれでも臭いは止まらない。
イケメンからドリアンみたいな臭いがしてきたらきっと同じ違和感を持つ気がする。

サウナで蒸され、ぼーっとした頭の中に余計な臭いが邪魔をするのをよそ目に、一旦は休憩スペースへ。
ふぅ、もうどうでもいいや。
二周目のため完全にトんだ僕は感覚の世界へと吹き飛ばされていった。

はぁ〜よかった。もう1セット。
立ち上がり浴室へ向かおうとした、その時。


「うっ…」


完全に忘れていた…そういえばヤツがいるんだ…
今日、この銭湯は何かおかしい…怪物がいるんだ…。

休憩スペースは脱衣スペース内にあるため、一度浴室から出るのだが
浴室に戻ってきた時に「ヤツ」は既に浴室内に充満しており
その異様な臭いは確信的なものに変わった。

この臭いどこからしてるんだ…?明らかな異臭だ…!
ひとまずセーフティゾーン(サウナ)へ向かうぞ…!
危険地帯と察した僕の体は心の中にジャックバウアーを宿し、図太い声で逃避宣言をしていた。

セーフティゾーン(サウナ)へと逃げ込んだ僕。
サウナには香太くん(サウナ用芳香剤)が置いてあり
今まで鼻の中にいたあの嫌な匂いも拭き取ってくれた

ありがとよ…香太…(ジャックバウアー)

颯爽とセーフティゾーンへ逃げたのも束の間
サウナ内では1人、脱出会議が開始された。

議題は「ニオイの発生源について」「どこかしらかで嗅いだことのあるこのニオイの正体」「そして臭いから脱する方法」についてだ
さっき、水風呂に入ったときになんか変な臭いがしたからその周辺じゃないか?
いや、もしかしたら排水溝が詰まっているのかもしれない。

得体の知れない臭いの原因を追求すべく「サウナ特別緊急対策本部」が設置されたのはいうまでもない

そうこうしているうちに、体の方はかなりあったまってきた
臭いへの恐怖か、熱された体は自然と鼓動を早めていた。

さあ、突入するぞ、、

一目散に水風呂に向かった。
少し熱で麻痺した嗅覚だったが、水風呂入るや否や臭いの正体を発見すべくそこら辺を隈なく嗅ぎまわった

どこかで嗅いだことある臭いだ。
う、、。

「隊長!!これはもしや!!」
すかさず原因を究明しにかかっていた隊員から無線で通達が入った

「どうした!原因は分かったのか!」
はやる気持ちを抑えつつ、小隊の統率をとりながらその報告に耳を傾けた

「これは!!おしっこじゃないでしょうか!!」

僕は耳を疑った。
「今、、お前はなんといった!!!」
信じられない。まさか!!そんなはずはない!!
ここは銭湯だぞ!!

隊員はほぼ状況を理解したようなそぶりを見せた。
あいつはいつも冷静に状況を判断してくる。そんな奴が見間違うはずがない
「もう一度、、報告します。」

ゴクリ

「おそらく、おしっこ、、かと、、」

今度は聞き逃さなかった。
やはり隊員は「おしっこ」とはっきりそう言ったのだ。

「そうか、、原因を究明したのだな、、ご苦労、、」
臭いの発生源もすぐにわかった。
どう考えても「水風呂」から異臭がしている。

1回目は気にならなかったということは、だ。
これ以上はご想像にお任せすることにする。

本当にそうなのか、実際のところはわからないが明らかに水風呂から
そのような類の匂いがしていた。

気づいてしまった僕は速攻上がり頭から体まで隈なく洗浄を施した。
気持ちよくなろうと行ったのに「戦場」へと変わった銭湯であった。

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