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裂けた腹筋は元には戻らない【出産レポ②】

Previously...

予定日前日の出血に危険性が怪しまれ、出産予定産院から大病院へ救急車で搬送された私。

前駆から含めるとまぁまぁ長い陣痛を経て出産終了!と思いきや、なぜかまだまだ終わらないお産。

出産レポ後半戦です。

出産!終わり!!!じゃないようです…

噂の胎盤が見たい!と身を乗り出したし、一言見たいと言ったけれどちゃんと見せてもらえず、しょんぼりした。
あとあと知るのだけれど、経膣分娩にしてはまぁまぁな出血量で、そんな悠長な時間はなかったのだと思われる。

赤子を出したあとも、ズルズルどろどろと出てくる感覚があり、ドクターにガッツリ手を入れられ蓋をされつつ、ひたすらお腹をぐりぐりされていた。

ドクターが手を抜く、どろどろぉ、入れる、お腹グリグリが繰り返される。
担当していたドクターは目の前で汗だく。
全くなにもわからない私は、はて、何が起きているのかとキョトンとしていた。

産んだら終わりじゃないのか?
周りの人に聞こうにも、エコーやら何やらの準備してーと凄いバタバタで口に出せない状況。
輸血がどうのという会話も聞こえて、あり?意外となんだかまずい状況?と内心ソワソワになる。ドクターもいつの間にか増えてた。ついでに研修医の方も増えていた。

そのうち色々セッティングされ、お股の中に何か入れられる。
入れられた上でさらに何か注入される。その様子エコーで見ながら、正直何がどうなってるの?とずっと頭にハテナが浮かんでいた。
どのタイミングだったか忘れたけれど、会陰もチクチク縫われる。なんか凄い変な感覚だった。布を擦られているような、体内を布で引っ張られているような、そんな感じ。会陰縫合後のカットは研修医くんがやってくれてた。

結局輸血はなくて、そんなひどい状況ではないのかなぁと処置を受けながらなんとなく察する。

出産してから、色々と処置が終わるまで1時間半が経とうとしていた。

普通なら、産後2時間は分娩室で経過観察して問題なければ部屋移動ないしトイレチャレンジに移るらしい。
しかし色々と処置された私は、ベッドから移動できない状態だったのでそこで一夜を明かすことになった。

子宮収縮がうまくいかない

何が起きていたかというと。
産後直後から急激に収縮するはず(いわゆる後陣痛の原因?)の子宮が、なかなか縮まらず緩んだ状態だったようだ。

子宮が収縮しないとどうなるか。
出血が止まらないのである。

処置中、追加で現れた男性ドクターに「生理痛とか酷かった?」など聞かれた。
お産と生理は、収縮して中身を出し切るということでは原理は一緒らしく、生理痛が普段から辛いと言う人は、お産の時も収縮が上手くいかなかったりするらしい。

お腹グリグリは子宮の収縮を促すためにしていると、その説明の時に理解する。
担当のドクターが下で物理的に蓋をしつつ、追加のドクターがお腹をグリグリマッサージ。
マッサージをやめると、子宮すぐおさぼりして収縮を辞めてしまう。

「マッサージしてないとすぐおさぼりする」と男性ドクターがひょうきんに言う。助産師さんを含む女性陣はお母さんせいじゃないですよ、とフォローしてくれるが、個人的にはおもろくて、性格が反映されちゃってますねってコメントを返していた。

処置中は、そんなひょうきんなドクターがずっと小話をしてくれていた。
力説していたのは、柔道の谷亮子選手がいかに優れた才能ある選手であるかということだった。

それはなぜか。

妊娠・出産で女性の腹筋は、程度に差はあれど、縦に裂けてしまいがちである。(腹直筋離開)
実は、その裂けた腹筋は二度と元には戻らないものらしい。よほどの重症でない限り、日常生活を送る分には問題ないものらしいけれど、スポーツ選手はそうもいかない。わずかな違いが勝敗を分ける世界。確かに、踏ん張りが効くか効かないかは素人感覚でも重要そうだなと思う。
特に著しいのは柔道だと、そのドクターは仰っていた。

故に、「ママでも金」のフレーズで有名な谷亮子選手の功績が本当にとんでもなくすごいものであるというわけだ。

タイトルをやっと回収。

ドクターはずっと、処置に意識行かないように、出血を意識しないようにと、気を遣ってくれていた。

産後1時間以上かかった処置は、出血が止まらないために行われていた。
元々の体質もあるかもしれないけれど、長時間の陣痛のせいで子宮が疲労していたから中々収縮できなかったというのもあるかもしれない、とのことだった。

処置の内容としては、物理的に子宮からの出血を抑えるためのバルーン。中には脱脂綿のような何かも大量に詰められていたように感じていた。
ついでに尿管も設置され、股から2本の管が出てる状態で分娩がやっと終了した。

後片付けを皆さんがしている中、ひょうきんなドクターが最後に一言。

「凄惨な事件現場みたいになっているよ(笑)」

…見たかった!!!!!管に繋がれて身動きが取れないから何も見えなかったのが本当に残念でしかない。

束の間の平穏

その後は、産んだ直後どこかに連れて行かれた赤子と初ご対面。2時間ほど過ぎていたと思う。
カンガルーケアという、横になったまま胸元で赤子を抱え、初乳を与える。
ものすごい勢いで探し当てて吸い付きにかかる様を見て、生き物ってすごいなと思った。なぜわかる?

お腹で抱えていた時よりすごく軽い、というのが印象的だった。
びっくりして小さめですか?と思わず聞いたけれどそんなことはなかった。それくらい、生まれたての赤ん坊は小さいものであるらしい。

5分、10分くらいで終了し、回収されていった。

その後、点滴を打たれながら、抗生物質のんで小休憩。
足にはエコノミー症候群を予防するためのマッサージャーが取り付けられた。

日付変わって0時ごろに、色々書類とか若干書いてその日は終了した気がする。(この時書いたのが出生届の書類だったらしい気づいてなかった)

適宜採血だか血圧チェックだかあった気がするけどもう詳細は覚えていない。

麻酔の管をつけたままにするか確認される。
どっちでもいいなぁと思っていたけど、産科の先生は後処理の時にも使った方がいいのではと言っていたらしいので、そのままにしてもらうことに。
後処理の麻酔代が追加されないと言われたにも大きい。

翌日の後処理

その晩2、3時間はまとまった睡眠とったと思う。
適宜バイタルチェックを受けながら、4、5時からうつらうつら覚醒。

下半身は管が繋がってるので当然モゾモゾ気になるし、会陰の縫合も痛い。

お腹も空いてた気がする。そういえば、一昨日の夜を最後に何も食べていない。
なんということだ。食べずにお産乗り越えたのか自分は。

6時ごろから処置されたところの違和感が、だんだん痛みとして感じられるように。
慎重に体の向きを横や正面に交互に変えつつ耐える。
そのころから、麻酔をいつ打つのか、そもそも処置がいつ始まるのかずっとソワソワすることになる。

7、8時ごろ
陣痛ほどの痛みじゃないけど、陣痛のように間が開くわけでもない鈍い痛みがずっとある。
この頃はもう早く処置してくれという気持ちでいっぱいだった。

9時ごろ
後処理で麻酔使うことほとんどないよーと麻酔科の先生に言われながら、麻酔が入る。昨日のとは違うらしく若干ピリピリするが、即効性あるようで、痛みが引いていく。本当に麻酔は神。

さぁいよいよ処置が開始される。解放されるまで後少し。

昨晩とは逆の手順でガンガン詰め物がとられていく。
大量に詰められた脱脂綿か何かをズルズルズルズルズルズルズル…と出されていく。すごい変で嫌ぁな感覚で地味に辛い。
それが終わるとバルーンに入っていた液体が抜かれて、バルーン自体も取り出された。
ちゃんと血が止まっていて問題なさそう。

立って歩けてご飯食べてって出来れば尿管も外そうと言われ、目が輝いたと思う。
シャワー浴びたい、ご飯食べたいと出産終わったタイミングからずっと言っていたけれど、ようやくごはん…!!
と、その前に、全身も頭もべたついて気持ち悪いので、用意していたドライシャンプーをふりかけまくる。入院中、一番持ってきてよかったと思うものである。

そうして、実に33時間ぶりのご飯にありついたのであった。

しかし若干麻酔が残っていて左足がめちゃくちゃ重い。
しかし!次はシャワーと意気込んでいる私は、やる気に溢れていた。
おトイレまで3メートルくらい。それくらい余裕だろうと思っていた。

が、しかし。

そこへ向かうのすら、のそのそでふらふら。1回目は途中まででLDRへリターン。
ちょっと休んで、2回目。さっきより慎重に歩いて、なんとかトイレ入り口まで行けた。頑張った甲斐があり、尿管外してOKとなる。

定期的な点滴は続く中、30時間ぶりくらいにベッドから出れて自由の身に…!!!これにてお産処置終了。

初めてのトイレは、便座に座った状態でナースコールが義務。見守られながら立ち上がる。産後って大変だ。

さて次はシャワーに入りたい私。

無理せず明日がいいのではと看護師さんには何度か言われるが、ご飯食べたり、トイレ行けたりしたので、意外と元気だねという事で許可が出る。

気持ちよかったです。座って入ったのでおまたは痛かった。痛み止め万歳。

落ち着いてくると、緊急入院故に手続きが何もできていないことが気になりだす。手続きのためには階を移動しないといけないらしく、じゃあそこまで午前中で行っちゃおう!と勢いに乗っていたが、流石にNGがでた。

翌日向かった時に実感したけれど、感覚的には元気でも体は貧血状態。おまけに大ダメージも受けている。
産後二日目でも、エレベーター移動を含めて往復500mくらいの距離で動悸がした。

お産って、前も後も大変だ。

あれから半年

なんだかんだ大変だったお産。
流れに身を任せるしかなかったといえば、それまでだけど、本当に予定通りなんてそうそういかないものなんだなと思う。

振り返って思うのは、医学の進歩に、現代医療の発展にとても助けられたということ。時代が時代なら、それこそ100年かそこら前であれば私は死んでいただろうなと思う。
だいぶ助かるようになったとはいえ、お産が命懸けなのはきっと変わっていない。
大袈裟かもしれないけど、妊娠・出産は病気や怪我ではないけれど、生と死と隣り合わせの事象であると声を大にして言いたい。

今は赤子のいる生活にも慣れて、あの時の痛みや不安はもう忘れつつあるけれど、助けてくれた方々への感謝を忘れずに今日も明日もなんとか生きていきたいなと思う。

これから出産を迎える方、または、もしかしたら、万が一、限りなくそのつもりはないけど、もう一度出産するかもしれない自分へ。

お産の予定は未定だよ。覚えててね。

出産で用意していてよかったもの

最後にこれだけは書いておきたい。

1位 限度額適用認定証

保険証を発行しているところに事前に申請する必要がある、かつ有効期限1年以内に返却する必要がある、と少しばかり面倒くさいけれど大事!
万が一保険適用される範囲の高額医療費がかかった場合でも、自分の年収に応じて支払うべき限度額が設定されるため、想定外の医療費の負担が減る!

何も問題がないお産であれば、適用されないけれど、今回の自分のようなケースだったり、緊急帝王切開などの医学的処置が発生した場合はお世話になると思う。

ちなみに、マイナンバーカードと保険証が紐づいていると申請不要になるらしい。

2位 ドライシャンプー

お産はとても汗をかく。冷や汗だったり、力み故の汗だったり、空調が効いているはずの空間なのに、もうべったべたになる。
にもかかわらず、お産の状況によっては1日2日お風呂に入れなかったりするわけで。私もそういう状況だったけれど…
そんな中、頭だけでもさっぱりするとだいぶ気持ちが変わる。
ぜひ、入院バックに忍ばせておいてほしい。

3位 モバイルバッテリー

長いケーブルの充電器でもいいかもしれないけれど、やはり医療機器が周りにあるので、取り回しのいいモバイルバッテリーがおすすめ。
お産中でもスマホいじれました。それでだいぶ気を紛らわせられていたところも、たぶん、ある。

腹筋について

あと、そうそう、腹筋について。
だいぶお腹のお肉が減ってきた今、腹筋をさわると、真ん中に若干の穴のようなものがあるのがわかる。
確かに裂けてしまったようで、二度と回復しないのだなと思うと少し切ない気持ちになる。

まだお腹が出てきていない妊婦さんには、自分の腹筋の感触確かめていて欲しい。


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