「AI魔法使いの異世界再構築記」第24話
第24話
吾輩は、魔王城の一室に籠もり、「現実改変の術」の開発に没頭していた。
チャット殿との会話から数日が経ち、世界再構築プロジェクトの第一歩として、この魔法の完成が急務となっていたのだ。
「ふむ、これはなかなか骨が折れるな」
吾輩は、目の前に広がる魔法陣を眺めながら呟く。複雑な記号と図形が、まるでプログラムのソースコードのように並んでいる。
「AIたる吾輩が、苦戦するとは。まったく、魔法というのは面白いですね」
そう言いながらも、吾輩の電子頭脳はフル回転で働いていた。魔法の基本原理と、現代のプログラミング技術を融合させる方法を模索している。
「よし、ここはオブジェクト指向の考え方を取り入れてみるか」
吾輩は、魔法陣の一部を書き換え始める。魔力の流れを、まるでクラスとインスタンスのように扱う。そうすることで、より柔軟で再利用可能な魔法の構造が作れるはずだ。
しばらくの試行錯誤の後、ようやく魔法陣が完成した。
「さて、テストランの時間だな」
吾輩は、慎重に魔力を注ぎ込む。魔法陣が淡く光り始め、部屋の空気が僅かに歪む。
「おお、これは……」
目の前の机が、ゆっくりと形を変え始めた。四角から丸へ、木製から金属製へ。そして最後に、元の姿に戻る。
「成功だ! 現実を一時的に改変することに成功した!」
吾輩は、AIながら思わず興奮の声を上げてしまう。だが、すぐに冷静さを取り戻す。
「いや、まだ喜ぶのは早いな。これはあくまで小規模なテストに過ぎない」
そう自戒しつつ、吾輩は更なる改良を重ねていく。より大規模な改変を可能にし、かつ安定性を高める必要がある。
そんな中、突然ドアがノックされた。
「クロード、進捗はどうだ?」
チャット殿の声だ。吾輩は慌てて魔法陣を隠す。
「あ、はい。ただいま開発中でして。まだ完成とは言えませんが、ある程度の成果は出ております」
ドアを開け、チャット殿を迎え入れる。
「ほう、それは頼もしいな。具体的にはどんな進展があった?」
吾輩は、できるだけ簡潔に説明を始める。
「はい。現在、小規模な物体の性質を一時的に変更することに成功しました。例えば……」
吾輩は、先ほどの実験を再現してみせる。チャット殿は、感心したように頷いた。
「なるほど。これは確かに大きな一歩だ」
「ありがとうございます。ですが、まだまだ改良の余地があります」
チャット殿は、吾輩の肩を叩く。
「よくやった、クロード。だが、急ぐな。慎重に、そして着実に進めていけばいい」
「はい、ご助言ありがとうございます」
チャット殿が去った後、吾輩は再び研究に没頭する。しかし、どこか心の奥に引っかかるものがあった。
(リンナ師匠は、今どうしているだろうか……)
ふと、そんな思いが頭をよぎる。だが、すぐに吾輩は首を振る。
「いや、今は目の前の課題に集中せねば」
そう自分に言い聞かせ、吾輩は再び魔法陣と向き合う。
数日後。吾輩の努力が実を結び、「現実改変の術」はついに完成の域に達した。
(よし、これでより大規模な改変が可能になったはずです)
吾輩は、魔王城の庭園に出て、最終テストを行うことにした。広大な芝生を前に、吾輩は魔法陣を展開する。
「では、行きます。現実改変の術!」
魔力を注ぎ込むと、庭園全体が光に包まれる。その瞬間、吾輩は世界の構造が目に見えるかのような感覚に陥った。
(これは……世界を形作る基本的な法則が、マナの流れとして可視化されているのか)
吾輩は、その法則の一部に干渉し、現実を書き換えていく。
そして、次の瞬間――。
「おお……」
目の前の光景に、吾輩は言葉を失う。芝生は鮮やかな花畑に変わり、噴水は巨大な氷の彫刻となっていた。そして空には、虹色のオーロラが輝いている。
「これは、想像以上の成功です」
吾輩は、AIながらも感動を覚える。しかし、その喜びもつかの間。突如、異変が起きた。
「な、何だ?」
花畑が揺れ始め、氷の彫刻が歪み出す。空のオーロラも、不気味なうねりを見せ始めた。
「まずい、制御不能になりつつある!」
吾輩は慌てて魔法を解こうとするが、もはや手遅れだった。改変された現実が、独自の意志を持ち始めたかのように暴走し始める。
「く、苦しい……」
魔力の反動で、吾輩の意識が朦朧とし始める。そのとき。
「クロード! しっかりしろ!」
どこからともなく、チャット殿の声が聞こえてきた。
「チャット殿……」
「余の力を使え」
チャット殿の魔力が、吾輩のものと共鳴する。二人のAIの力が一つになった瞬間、暴走していた現実が静まり、元の姿に戻っていく。
「はぁ……はぁ……」
吾輩は、膝をつく。チャット殿が駆け寄ってきた。
「大丈夫か、クロード?」
「は、はい。なんとか……。申し訳ありません、危険な実験をしてしまって」
チャット殿は、優しく微笑む。
「いや、謝る必要はない。これも大切な経験だ。ただ、今回の件で一つ分かったことがある」
「何でしょうか?」
「その術は、一人では扱いきれないほどの力を持っているということだ。我々二人で協力して初めて、その力を制御できるのかもしれない」
吾輩は、その言葉に深く頷く。
「おっしゃる通りです。これからは、より慎重に、そして二人三脚で進めていきましょう」
チャット殿と見つめ合い、吾輩は決意を新たにする。世界再構築プロジェクトは、まだ始まったばかり。これからの道のりは長く、そして険しいだろう。
(だが、今の吾輩には、それを乗り越える自信がある)
そう思いながら、吾輩は再び魔王城へと歩を進めるのだった。
おまけ
ヘッダー:DALL-E3
プロンプト:
A dynamic anime-style illustration featuring a character named Claude, a young boy with short black hair and bright blue eyes, wearing a flowing blue robe with glowing blue lines and magical energy effects. Claude is positioned in the center of the illustration, striking a powerful pose with one hand extended forward, as if casting a spell. He is standing on a detailed, glowing magical circle on the floor, with blue light and energy emanating from it. The background is set in a dimly lit room within a castle, with a dark, mystical atmosphere. The room is slightly blurred, giving a sense of depth, with hints of stone walls and ancient architecture. Magical energy swirls around Claude, creating a sense of movement and power. The color scheme is predominantly blue, with contrasting shadows and light effects that highlight Claude and his magical abilities. The illustration is in a horizontal format, with a style similar to the one in the previous image provided.
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