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第28回 日本と海外のアップセットについて考察する
こんにちは、Tokiです。昨年2022年では多くの日本選手が海外大会に参加し、多くの結果を残しました。そして今年2023年においても日本人選手の海外大会での活躍が期待される中、日本と海外の違いに触れる方もいます。
個人的日本と海外の選手層の違い
— すいのこ/Suinoko (@Suinoko0614) January 25, 2023
優勝争い常連:各国同程度だけど、アメリカに集結しやすいから結果的にアメリカの層が厚い
Top8常連:大差ない
Top64~8あたり:圧倒的に日本が厚い
Top96前後:大差ない
Pool1:日本がやや厚い(+海外はオフ主体なためノーシード強者が少なく、波乱が起きづらい)
そこで今回は日本と海外の大会におけるアップセットについて分析していくことで、日本と海外の環境の違いを数値化して明らかにしていきます。
過去海外との違いを分析していますので、興味のある方は是非ご覧ください。
分析方法
今回は国内大会と海外大会のアップセットとTOP8のシードを比較して分析・考察します。
比較する方法としてPgstatsが考案したSeed Performance Rating(以下SPR)とUpset Factor (以下UF)をもとに分析します。
簡単に説明するとSPRはシード通りの結果となった場合、優勝までに必要な勝利数と実際の順位での優勝までに必要な順位となります。例えばシード1で優勝の場合、SPRは0、シード4で優勝したらSPRは3となります。
UFは2人の選手がシード通りとなった時の優勝までに必要な勝利数の差です。例えばシード1位の選手がシード4位の選手に負けた場合UF3となります。説明がややこしいので値が大きければ大きなアップセットが起きたのだと思ってくれれば問題ありません。
国内外の大会のUFを集計・比較して分析していきます。
分析には以下の3か所から集計しました。
対象大会は2022年下半期から2023年2月の篝火9までの間に開催された以下の大会です。国内はJSRでA Tier以上となっている大会を対象とします。
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篝火8は上記の3つでUFが見つからなかったためアップセットは除き、Apex2022はTOP3までのシード選手全員がDQとなったため除きました。
国内・海外大会のアップセットについて
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Blue : Other than UF1 Gray : UF1
こちらは1大会当たりのアップセットの回数です。灰色はUFが1、青色はUF1以外の回数を示します。
これを見ると日本のほうがアップセットの回数も多く、UF1以外の大きなアップセットが起きる割合も高いことがわかります。
数値にすると全体に対するアップセットの回数は日本が75.4回、海外は49.9回と日本が1.5倍ほど回数が多くなっています。またUF1以外の割合は日本が75.2%,海外が69.1%で日本のほうが1.1倍ほどUF1以外の割合が高くなっています。
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Japan : World
こちらはUFの大きさ毎の割合です。
これを見るとUFが2以下は日本は50%程度、海外は60%程度となっており、大きなアップセットは日本のほうが多いことがわかります。
こちらは1大会当たりの合計UFを示しており、アップセットの回数よりも海外との差が大きくなっており、アップセットの回数は日本が海外の1.5倍、合計UFは1.8倍となっていました。先ほどのUF詳細と合わせても日本のほうが大きなアップセットが多いことがわかります
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Japan : World
こちらはUF全体とUF1以外の平均値を示したもので、このグラフからも日本のほうがアップセットが多いことがわかります。UF1以外とUF全体では日本と海外での差に違いはほぼありません。
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Green : percentage other than UF1
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Green : percentage other than UF1
これらは各大会のUFの回数とUF1以外の割合を示したものです。
これらを見ると国内大会はUF1以外の割合が7割程度で落ち着いているのに対し、海外はばらつきが大きく、7割以下になることも何度か見られました。
また海外と比較してもウメブラSP9や篝火9の合計UFやアップセットの回数が世界的に見ても非常に多いということもわかります。
グラフはありませんが、一人当たりのUFは日本で0.7/人、海外は0.2/人と大きな差が見られました。
ただし日本大会の平均参加者数は378.4人, 海外大会の平均参加者数は795.1人で倍以上差があり、さらには外れ値と言えるウメブラSP9,篝火9、SSC,Genesis9を除いたとしても日本大会は257.9人、海外大会は627.5人と2倍以上の差が見られます。そのためこのデータのみで単純に1人当たりのUFが多いとは言えない可能性はあります。
国内・海外大会のTOP8について
続いてTOP8を見ていきます。
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これらはTOP8になった選手のシードをそれぞれ示し、色が塗っていないところはシードが8以下、色が濃くなっていくにつれてシード16、シード32、それ以上としています。
これを見るとぱっと見でも日本のほうが色のある部分が多く、TOP8にシード8以外の選手が多くなっていることがわかります。
数値での違いだと、シード8以内の選手が日本では平均4人、海外では平均5.1人TOP8になっており、最も国内外で差が見られます。シード16以内になると日本は5.7人、海外では6.5人となり、シード32以内となると日本で7.4人、海外で7.8人と徐々に差は小さくなっており、国内外どちらもシード32以内の選手がTOP8に残る可能性が非常に高いことがわかります。
またTOP4はシード8以内の選手の占める割合が非常に高く、海外は特に顕著になっています。当然と言えば当然ですが、シード8以内の選手がTOP4に入る可能性が国内外どちらも非常に高いと言えそうです。
また世界的に見てもアップセットが非常に多かったウメブラSP9や篝火9ですが、TOP8では他の大会とアップセットの様子はそこまで違いがないことがわかります。
こちらはTOP8のSPRを箱ひげ図にしたものです。×が平均値、青い箱の上が平均値+標準偏差、下が平均値-標準偏差、線の上端が最大値、下端が最小値です。
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Max Value : Average+ Standard Deviation : Average : Average - Standard Deviation : Minimum Value
なんちゃって統計をしているだけなので、間違えているかもしれませんが、標準偏差はそのデータのばらつきの大きさを示す指標で、今回の場合青い箱の部分が大きければばらつきの大きいデータであるということを示します。
これを見ると箱の大きさはかわらず、そのまま下にずれたような形になっており、SPRの分布は国内外であまり差はなく、そのまま5程度SPRがずれているので、その分だけ国内のほうがTOP8でもシード通りになりにくいとも言えます。ただしSPR5の差が具体的にどれくらいなのかはなんとも言いにくいですが。
2023年 3月17日追記
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こちらは先日トレスマ様の動画にあったSPRの活用法と同じく、シードTOP8(DQの場合、その分シードをずらす)のSPRの合計値を示したものです。先日開催されたCollision2023と西武撃13を追加しています。
引用:マエスマTOP,西武撃,Collision...歴史的大荒れとなった3月の大型大会まとめ!【スマブラSP】
これを見ると、Collisionは世界最大規模のアップセットがTOP8の中で起きていることがわかります。またUFの合計値は240と海外大会の中ではSSCの287に次ぐアップセットの多さになっています。(日本では篝火9,ウメブラSP9でUFの合計約600が最大規模)
また、海外と日本を比較すると日本のほうがシードTOP8のアップセットも多く起こっていることがわかりますが、アップセットが非常に多かったにも関わらず、篝火9やウメブラSP9ではシードTOP8のSPRは他国内大会と比べて低くなっています。またトレスマ様の動画によるとマエスマTOP11もシードTOP8のSPR合計値は-13と上記の2大会同様にSPRが低い傾向にあります。
このことから大会規模が大きくなり選手層が厚い大会となると、アップセットはかなり多くなるが、特に上位TOP10レベルの参加選手が多く参加している場合、TOP8でのアップセットは少なくなる傾向があるのかもしれません。もちろん例外があるので、必ずこうであるとは言えないかもしれませんが。
また以下は完全に個人の憶測ですが、TOP10圏内の最上位選手がその他の上位勢への大きな壁となっており、壁を越えられる選手は多くないが、上位勢では実力が拮抗しているのではないかと想像しています。
まとめ
日本と海外のアップセットの違いやTOP8のSPRについて比較しましたが、以下のことがわかりました。
日本のほうが海外よりもアップセットの数や大きなアップセットが多い傾向にある
1人当たりのUFも日本のほうが約3倍多い
TOP8進出者のSPRは日本のほうが平均で約5大きく、日本のほうがTOP8でもシード通りの結果にならないことが多い
そしてこのような結果となったのは以下の要因の可能性が考えられます。
日本の選手の層が厚い可能性
日本は海外と比較して2先が多く、そもそもアップセットが起こりやすい環境である
アップセットはシードをもとに算出していることから、海外大会のシードを決めるのが優れている可能性。逆説的に考えると日本に隠れ強豪(オンライン強豪)が多いためシードを完璧に作るのが難しいともいえるかもしれません。
他にもファイター分布の違いなど分かりませんが、色々な理由が隠れている可能性もあります。今後何か思いついたら他の要因も分析する必要はありそうです。
終わりに
今回は国内外のアップセットについて分析してみましたが、いかがでしたでしょうか?選手の層の違いと言われても客観的な違いを出してみたいと思いこのようなことをしてみましたが、はっきりとした答えは結局よくわからなくなりました。
次回の分析は未定です。
ここまで見てくださってありがとうございました。よければ今後も最上位勢の分析を行っていく予定なのでフォローをしてくださるとうれしいです。また、何か質問やリクエスト、さらなる分析・考察がありましたらコメントをくれるとありがたいです。
参考
すいのこ選手
Twitter
YouTube
JJPR Upsets
管理人:じゃく様
トレスマ様
おまけ
載せきれなかったグラフを載せておきます。興味がある方はご覧ください。
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Green : Percentage other than UF1
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Green : Percentage other than UF1