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ピカタの存在感。
きょうのランチはお気に入りの洋食屋さんにしよう。そう思うと、いく前から、なにを食べようか考えはじめます。頭の中には、お店のテーブルに置かれている、あのメニュー表が浮かんでいる状態です。
🍽洋食ランチの定番は
まず候補に挙がるのはハンバーグ。トッピングが選べるお店なら、目玉焼きを載せるか、チーズを載せるか、そんなところを考えるのもわくわくしますね。
フライ系ならエビフライにするか、メンチカツにするか。どっちも食べたければ、ミックスフライという手もあります。メンチにデミソースがかかっているなら、エビフライのタルタルとソースも2種類楽しめて満足度は十分。
候補はほかにもあって、ポークソテーに生姜焼き、ビーフシチュー。ライスものならカレーにオムライス、ハヤシライス。スパケディならナポリタンにミートソース。どれも、ほとんどの洋食屋さんのメニューに載っている定番人気です。
🍽ピカタの存在感
そんな中で、このひと品。
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豚のロース肉に卵ベースの衣をつけて焼きあげたこれ。
ぱっと見て、すぐに名前が浮かぶでしょうか。
ピカタです。
名前を聞くと、ああ聞いたことあるなぁ、といってもらえると思うのですが、近ごろ洋食屋さんにいっても、あまり見かけないメニューではないでしょうか。おなじ豚ロースのメニューとしては、ポークソテーやしょうが焼きに比べて存在感が薄い気がします。
🍽見かけないなら作ってみよう
そんな隠れた存在をふと思い出したのには訳があって、子どもの頃たまに実家の夕飯に出てきたことがあったんですよね。そんなこともあってか、急に懐かしさがこみ上げてきました。洋食屋さんで見かけないなら作ればいい。よし、今回のテーマはこれにしよう。
ただ、やっぱりおうちごはんでも、もともとハンパーグやポークソテーより出番が少なく、大きくなって外食する機会も増え、家で晩ごはんを食べる機会が減ると、自然と実家のメニューからも姿を消したように思います。なのでちょっとうろ覚えな感じですが、そんな記憶の糸をたぐりながら、ピカタを作ってみたのが今回のお話です。
🍅まずは付け合わせとソース
洋食なので千切りキャベツを添えます。そんなサラダのドレッシングをひと工夫。ケチャップとマヨネーズをベースにした、サウザンアイランドは、これも昔からある懐かしい定番ドレッシング。それをアレンジしたソースにします。
🍅材料
・ミディトマト
・玉ねぎ
・マヨネーズ
・オリーヴオイル
・フレンチマスタード
・こしょう
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トマトと玉ねぎをみじん切りにします。
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ボウルに調味料とともに合わせます。
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あとは混ぜるだけ。ケチャップを使わずにフレッシュなトマトを使うことで、さっぱりとした風味のドレッシングになりました。
続いてピカタのソース。甘酸っぱい感じのソースだったようなあの頃の記憶が頼りです。
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🧂材料
・ケチャップ…小さじ1
・お好みソース…大さじ1
・ウスターソース…大さじ1
・砂糖…大さじ1
・こしょう…適量
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さっと合わせて砂糖を溶かせばできあがり。けっこう甘めが美味しいので、味を見て砂糖を足してもOKです。
ちなみにこのソース、冷めたフライにもとてもよく合うので、お弁当に入れるフライものにからめるのもおすすめ。カツサンド的な感じに仕上がります。
🐽ピカタにとりかかります
ソースが準備できたら、いよいよピカタ。
ピカタって子どもの頃に母親から「卵つけて焼くねん」みたいな話を聞いた記憶があって、豚肉を溶き卵にくぐらせて焼くだけだと思ってたのですが、よく考えると、それではきっとお肉と衣がばらばらになりそうです。念のため調べてみたら、やはりもうひと手間必要でした。
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まずはこれ。豚ロース肉に粉をまぶします。お肉はしょうが焼き用の薄切りロースを使います。1人前1枚だと物足りないように思いますが、衣をつけて焼くとけっこう大きくなるので、ご安心を。もちろんいっぱい食べたいよというときは増やしてもらってOKです。
🥚衣の材料
・卵…1個
・天ぷら粉(小麦粉でもOK)…大さじ1
・粉チーズ…大さじ1
・こしょう…ひとつまみ
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衣もただの溶き卵ではなく、天ぷら粉と粉チーズを足してこしょうで香りをプラスします。
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よく混ぜて準備OK。粉が入ることで、豚肉にしっかり絡むのと、焼いたときに、まるで豚肉がお好み焼きの生地を薄くをまとったみたいな感じになって、食べ応えが出るという、ふたつの効果があります。
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衣を両面にしっかり絡めます。
🐽あとは焼くだけ
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オリーヴオイルを敷いたフライパンを火にかけて、温度が上がってきたらバターを入れて中火に落とします。
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衣たっぷりのお肉をイン。
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底になった面が焼き固まったら返します。ほら、なんとなくお好み焼きみたいになってきました。これが衣にプラスした、粉効果。天ぷら粉なので、焼き上がりもさくっとした感じになりました。チーズの焼ける香りも香ばしくていいですね。
🍽ピカタ降臨
ピカタが焼けたら、盛り付けスタート。
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千切りキャベツにフレッシュトマトのサウザンアイランドソースをたっぷりと。
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肉待ち中です。
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焼き上がったピカタ。けっこうしっかりしたサイズになってます。衣ってすごい。
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お肉を焼いたあとのフライパンでソースをさっと温めて、上からたっぷり。
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どうでしょう。これがピカタです。ピカタ降臨。
うん、こんな感じだったはず。
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見た目どおり衣はさくっとした食感です。甘酸っぱいソースが、卵の衣の風味にもばっちり。
洋食はもともと西洋料理が入ってきたとき、日本人の口に合うようにアレンジされたものが、フレンチやイタリアンとは違う独自のジャンルとして根付いたものです。
たとえばこのピカタも、本来は仔牛のお肉を使っていたものが、手に入りやすくてなじみもあった豚肉で作られるようになったメニュー。洋食の文化はそうして生まれて、さらに進化して現在を迎えています。
🍽洋食の歴史の中で
ときが流れ食材の幅が広がり、食卓の世界が広がっていく中で、だんだんと主役の座から脇役に回っていくメニューもあって然りだと思います。
たとえばいずれもひき肉メニューなのに、ハンバーグやメンチカツが今でも大人気なのと比べて、スコッチエッグは見かけることが少ないように思います。
ピカタの存在も、洋食が日本人の食生活に定着していく中で、少しずつ昔とは変化していったのではないでしょうか。洋食の歴史は今も進化を続けているのです。
流れゆく洋食の歴史の中、ピカタはおなじ豚肉が素材のカツレツにポークソテー、しょうが焼き、そんなメニューの影に隠れてしまったのかもしれません。スタート地点では同じ場所にいたはずなのに、いつしかピカタは洋食界の絶滅危惧種になった…そんな考えが頭に浮かびました。
🍽でもピカタは息づいている
それでも消えてなくなったわけではありません。
今回のピカタ作りからほんの数日後にはいった、洋食屋さんの日替わりランチがこちらです。
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アジフライの隣には、きょうのメインをはる、ピカタの姿がありました。
ひと口食べてあらためて懐かしさを感じるとともに、記憶をたどって作ったピカタが、けっこうちゃんとピカタだったことがなんだか嬉しかったです。衣の食感もソースの方向性も、ほんと、いい具合だったんです。記憶って大切ですね。
見かける機会は減った。だからピカタは懐かしい。でも洋食のメニューに今も息づいている。
ちょっとノスタルジックな気分に浸ってしまったけれど、こういう想い出の温度加減、いいなと思います。そして、こんな風に記憶をもとにあの日の味を再現することができるのが料理のいいところです。そんなところにも、料理の楽しさのひとつがある気がします。
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