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パイオニア環境分析のつもり(12/01~16)脱出廻戦

■はじめに

 こんばんは。「ゼンディカーの夜明け」チャンピオンシップやArena Openが終わり、今年も気付けばあと2週間。今年はもう出歩けそうにありませんが、年末年始の準備はいかがでしょうか。

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 昨年10月に実装されたパイオニアですが、《オーコ》《運命のきずな》が禁止されたのは2019年12月17日。今日でちょうど1年になります。個人的にはこの日がパイオニアの「実質リリース日」だと思っています。猫も鹿もゾンビもヘリコプターもいない、平和なパイオニアはこの日から始まったのです。

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 その1年間の間に色々なことがありました。相次ぐパワーカードの登場、コンボの大量発生と禁止による粛清、相棒による支配とルール改訂、ランプ戦略の環境支配、……等々。

 ただ、他と違い、ディミーアインバーター退場後(あるいは相棒ルール改訂後)は一強デッキが登場せず、健全なメタゲームを維持し続けたフォーマットです。「カルドハイム」プレビューが始まっていますが、その傾向が続くことを期待するばかりです。

 以下、いつものメタゲームブレイクダウン、そして注目デッキの紹介です。


■メタゲームブレイクダウン

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・Topics 1:4色オムナスが使用率トップ

 トップメタは引き続き4色オムナスですが、5色ニヴミゼットやスゥルタイ再生が減少した分、使用率が増加しています。デッキの対応力や引き出しは5色ニヴミゼットのほうが上ですが、ひとつだけ4色オムナスにしかない必殺技があります。《発生の根本原理》です。

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 メインデッキで叩きつけるミッドレンジが増加傾向のため、1枚で盤面を取り戻せるこのカードは「1枚で勝てる」カードになり得ます。

 5色ニヴミゼットは対応力とアドバンテージ獲得に優れますが、複数回行動に難があります。劣勢を巻き返せるカードとして採用されている《発生の根本原理》は《ウーロ》《オムナス》をめぐる争いで俄然有利に立つことができます。

・Topics 2:緑単信心が大躍進

 コントロールが減りミッドレンジが増えれば、展開スピードの速い緑単信心の出番です。各デッキにクリティカルに刺さるサイドボードをメインから繰り出すことができるため、コンボやミッドレンジ相手は得意です。相手の妨害がゆるい場合は展開スピードも早く、あっという間に戦場を制圧することができます。

 リストも大分固まってきた印象があります(26デッキ中12デッキは75枚同じデッキの入賞です)。《大いなる創造者、カーン》の柔軟性は、メタの散らばったパイオニアでこそ輝くカードになっています。

・Topics 3:赤単果敢が増加、ボロスアグロを押さえアグロ使用率トップ

 「三科赤単」とも呼ぶべき日本製の赤単果敢が使用率1割を達成、ボロスアグロとの使用率が逆転しました。

 上記がご本人のデッキ制作記です(ミドリさん、情報ご提供ありがとうございます!)。カード選択の理由など、参考になる内容が満載ですので、ぜひご一読ください!

 なお、情報をご提供いただいたミドリさんも、パイオニア王2020秋を優勝したロータスコンボで、12/13のPioneer Challengeで6位入賞を果たしています。おめでとうございます! 本人による下記ノートはぜひチェックを! あと購入して損なし! ぜひ!(ダイレクトマーケティング)

■注目デッキ1:ビッグレッド

GOTTELICIOUS (4-1)
PIONEER PRELIMINARY 12233149 ON 12/03/2020
 
planeswalker (8)
4 《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance》
4 《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》
 
creature (8)
1 《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》
3 《不屈の巡礼者、ゴロス/Golos, Tireless Pilgrim》
4 《難題の予見者/Thought-Knot Seer》
 
sorcery (13)
4 《神々の憤怒/Anger of the Gods》
4 《浄化の野火/Cleansing Wildfire》
3 《アイレンクラッグの妙技/Irencrag Feat》
2 《髑髏砕きの一撃/Shatterskull Smashing》
 
instant (5)
1 《削剥/Abrade》
4 《ヴァラクートの覚醒/Valakut Awakening》
 
artifact (4)
4 《精神迷わせの秘本/Mazemind Tome》
 
enchantment (3)
3 《突沸の器/Vessel of Volatility》
 
land (19)
1 《爆発域/Blast Zone》
4 《大瀑布/Cascading Cataracts》
4 《ダークスティールの城塞/Darksteel Citadel》
5 《山/Mountain》
1 《光輝の泉/Radiant Fountain》
2 《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins》
1 《ウギンの聖域/Sanctum of Ugin》
1 《屍肉あさりの地/Scavenger Grounds》
 
sideboard (15)
1 《約束された終末、エムラクール/Emrakul, the Promised End》
2 《削剥/Abrade》
2 《凶兆艦隊の向こう見ず/Dire Fleet Daredevil》
2 《墓掘りの檻/Grafdigger's Cage》
2 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
2 《魂標ランタン/Soul-Guide Lantern》
2 《絶滅の星/Star of Extinction》
1 《交易所/Trading Post》
1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ/Ulamog, the Ceaseless Hunger》

 赤単ミッドレンジ、ビッグレッドが久々の登場です。(リーグ以外で)最初に入賞したのは11/30のPioneer Challenge(24位)ですが、上記期間中も2回の入賞が確認できました。

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 《突沸の器》《アイレンクラッグの妙技》などのマナ加速、ドローサポートから《反逆の先導者、チャンドラ》《精霊龍、ウギン》で戦場を制圧、最後は《ゴロス》+《大瀑布》からの《エムラクール》でフィニッシュするシンプルなデッキです。

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 この戦略を支えるのが《ヴァラクートの覚醒》。不要になったマナ加速や土地を有効牌に変換してくれます。また、MDFCの強みとして、このカードをフルで採用することで土地の採用枚数を19枚に押さえています。(MDFCは6枚採用していて合計土地枚数は25枚)

 サイドボードも充実。相手のデッキへの不要牌を入れ替えて純度が増します。《凶兆艦隊の向こう見ず》はコントロールやミッドレンジに強い1枚で、マナの出る赤いデッキならではのチョイス。相手の除去やドローを「再利用」できます。

 以前活躍していた頃(今年初頭)は《栄光をもたらすもの》《砕骨の巨人》を軸にした古式ゆかしいミッドレンジでしたが、ここに来て一気に派手なデッキになりました。ぜひ一度回してみてください。

■注目デッキ2:パラドックスコンボ

PHILL_HELLMUTH (3-1)
PIONEER PRELIMINARY 12238101 ON 12/15/2020
 
planeswalker (6)
4 《大いなる創造者、カーン/Karn, the Great Creator》
2 《伝承の収集者、タミヨウ/Tamiyo, Collector of Tales》
 
creature (18)
4 《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
1 《エルフの神秘家/Elvish Mystic》
2 《絡みつく花面晶体/Tangled Florahedron》
4 《眷者の神童、キナン/Kinnan, Bonder Prodigy》
4 《湖に潜む者、エムリー/Emry, Lurker of the Loch》
3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》
 
artifact (15)
3 《黄金の卵/Golden Egg》
4 《モックス・アンバー/Mox Amber》
3 《パラドックス装置/Paradox Engine》
2 《バネ葉の太鼓/Springleaf Drum》
3 《テラリオン/Terrarion》
 
land (21)
4 《植物の聖域/Botanical Sanctum》
4 《繁殖池/Breeding Pool》
2 《ダークスティールの城塞/Darksteel Citadel》
4 《森/Forest》
4 《島/Island》
3 《マナの合流点/Mana Confluence》
 
sideboard (15)
1 《湧き出る源、ジェガンサ/Jegantha, the Wellspring》
1 《パラドックス装置/Paradox Engine》
1 《霊気貯蔵器/Aetherflux Reservoir》

1 《霊体のヤギ角/Astral Cornucopia》
1 《王神の立像/God-Pharaoh's Statue》
1 《ギラプールの希望/Hope of Ghirapur》
1 《隕石ゴーレム/Meteor Golem》
3 《否認/Negate》
1 《聖域の門/Portal of Sanctuary》
1 《三つの願いの指輪/Ring of Three Wishes》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン/Skysovereign, Consul Flagship》
1 《闊歩するものの装具/Strider Harness》
1 《トーモッドの墓所/Tormod's Crypt》

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 墓地を活用した新しいコンボの登場です。面白い動きをするのでご紹介させていただきます。

 序盤はマナクリーチャーやアーティファクトを展開しながら、キーカードの《パラドックス装置》を探しに行きます。大量のキャントリップや《エムリー》《タミヨウ》でライブラリーを掘り進め、(1)マナファクトorマナクリーチャー数枚、(2)《エムリー》のいる状態で(3)《パラドックス装置》を設置したらコンボスタート。

(1)《エムリー》で墓地の《モックス・アンバー》(または《テラリオン》《金の卵》等)をキャスト。
(2)《パラドックス装置》で《エムリー》とマナファクト&マナクリーチャーがアンタップ。
(3)《エムリー》で墓地にある別の《モックス・アンバー》等をキャスト
(4)《パラドックス装置》で《エムリー》をアンタップ、以下繰り返し

 《モックス・アンバー》2枚で無限マナ。《テラリオン》や《金の卵》は条件次第で無限ドローになります。そのまま《カーン》から《霊気貯蔵器》を引っ張ってライフゲイン→50点ダメージでフィニッシュ、という流れになります。

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 一人回しで試してみましたが、コンボは最速3ターン。なかなかうまくはいきませんが、キャントリップや加速が多く《タミヨウ》もいるため手札破壊が効きづらく、また高速《ウーロ》によるビートダウンプランもあり、一筋縄ではいきません。

 また、《カーン》によるシルバーバレット戦略が有効なのは、緑単信心の躍進でも明らかです。《カーン》を上手く使えるケシス・コンボという立ち位置ですが、2色しか使っていないため事故もなくスムースにデッキが回ります。

 対応力やコンボの完成度ではThe Spyやロータスコンボに一歩劣りますが、面白いデッキなのでぜひ手に取ってみてください。

■注目デッキ3:スゥルタイローグ

HAMUDA (5TH PLACE)
PIONEER CHALLENGE 12235630 ON 12/05/2020
 
creature (17)
4 《死儀礼のシャーマン/Deathrite Shaman》
3 《マーフォークの風泥棒/Merfolk Windrobber》
2 《海門の嵐呼び/Sea Gate Stormcaller》
4 《空飛ぶ思考盗み/Soaring Thought-Thief》
4 《盗賊ギルドの処罰者/Thieves' Guild Enforcer》
 
sorcery (8)
2 《アガディームの覚醒/Agadeem's Awakening》
2 《航路の作成/Chart a Course》
4 《思考囲い/Thoughtseize》
 
instant (13)
2 《塵へのしがみつき/Cling to Dust》
4 《湖での水難/Drown in the Loch》
1 《取り除き/Eliminate》
3 《致命的な一押し/Fatal Push》
3 《物語への没入/Into the Story》
 
land (22)
2 《花盛りの湿地/Blooming Marsh》
4 《植物の聖域/Botanical Sanctum》
1 《繁殖池/Breeding Pool》
4 《清水の小道/Clearwater Pathway》
2 《マナの合流点/Mana Confluence》
3 《変わり谷/Mutavault》
1 《沼/Swamp》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ/Urborg, Tomb of Yawgmoth》
4 《湿った墓/Watery Grave》
 
sideboard (15)
1 《夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream-Den》
1 《海門の嵐呼び/Sea Gate Stormcaller》
2 《霊気の疾風/Aether Gust》
2 《苦悶の悔恨/Agonizing Remorse》
2 《血の長の渇き/Bloodchief's Thirst》
1 《死の重み/Dead Weight》
1 《強迫/Duress》
3 《神秘の論争/Mystical Dispute》
2 《否認/Negate》


 スタンダードのトップメタの一角・ディミーアローグがパイオニアにも登場。正確には以前からちょくちょく入賞はしていましたが、初めて3色目が加わりました。便宜上スゥルタイ・ローグとして紹介させていただきます。色を足した理由は、モダン、そしてレガシーを追われた「ヤツ」のためです。

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 スタンダードでの活躍もそこそこに、登場直後にモダンやレガシー環境を一変させた《死儀礼のシャーマン》。マナ加速から墓地追放、さらには攻撃せずにクロックを刻む悪夢のクリーチャーとして大暴れしました(そして禁止になりました)。とはいえ、パイオニアでは制定当初からフェッチランドが禁止されていたため、《死儀礼のシャーマン》もあまり活躍できませんでした。

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 しかし、能動的に相手の墓地を肥やせるローグデッキなら使い勝手は格段に上がります。マナ加速を擁するテンポデッキの恐ろしさは、(レガシー現役当時の)スゥルタイデルバーの強さを知るプレイヤーならばよく知るところ。圧倒的な行動回数を約束してくれます。さらに、マナが伸びれば《海門の嵐呼び》《夢の巣のルールス》も運用しやすくなるなど、いいことづくめ。

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 《ルールス》の常として、公開のデメリットは少なくありません。おそらく《死儀礼》は《致命的な一押し》のいい的になるでしょう。しかし、環境における他の除去はすべてテンポ損ですし、万が一生き残ってしまえば無限のバリューを約束してくれます。

 家で眠っている《死儀礼》、有効活用してみませんか?

■終わりに

 おそらく、年内最後の環境分析になるかもしれません。一年間を通じて本分析を続けてこられたのも、読者の皆さまのご支援のおかげです。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 余裕があれば、パイオニアにおける今年の総括、あるいは面白トピックスをまとめて記事にできればと思っています。たまには、肩ひじ張らずに読める記事を書きたいなと思っています。

 来年早々に「カルドハイム」によって環境が変わることが予想されます。見えている範囲でも、即採用されそうなカードがいくつか見られますし、新しいアーキタイプを生みだしてくれそうなカードも注目です。

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 残り4枚の両面土地(=主に青白、赤黒系デッキが強化)、表面がクリーチャーの装備品(=クリーチャーサーチから持って来られる)、部族限定の《出産の殻》(=スピリット、ローグ、スパイ等が強化?)、などなど……。 「あんなデッキができるかも?」と妄想しながら年を越すのもまた一興かもしれませんね。

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とけいまわり
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