パイオニア環境分析のつもり(8/1~15)マルドゥパルへリオンはヴェリアナの夢を見るか
■はじめに
実に5月の『ニューカペナの街角(SNC)』からパイオニアリーガルの新エキスパンションが出ていませんが、テーブルトップイベントにおいてはパイオニアの大会が数多く開催され、特に地域チャンピオンシップ予選の日程は新型コロナ感染拡大の中でも順調に消化されているようです。
8月末まで開催が予定されています。権利未獲得の方、最後まで諦めずに戦い抜いてください。ご健闘をお祈りいたします。
そんな折なので定期的な更新を――と思いましたが、筆者が長期にわたる体調不良のため更新が滞ってしまいました。具体的にはCOVID-19への感染が確認され、症状がそこそこ重かったため、10日間ほど何もできませんでした。この場を借りてお詫び申し上げます。
感染経路その他もろもろは「不明」です。幸い家族の助けもあり誰にも感染を広げることなく済みましたが、皆様も大会参加の傍ら、体調管理には十分お気を付けください。
■メタゲームブレイクダウン
8月第1週はPreliminaryが連日5回戦開催ということで、入賞デッキ数が多くなっています。約半月で285件と非常に多いデータが取得できました。
Rakdos Midrangeの好調を受けて、有利の付くMono-G Devotion(緑単信心)がトップに返り咲きました。他のデッキへの対抗策として、黒をタッチして《ゴルガリの女王、ヴラスカ》を投入したBG Devotion(緑単信心タッチ黒)が流行の兆しを見せています。(集計時は緑単、タッチ黒を合算しています)
-3能力《突然の衰微》後も場に残るため対処を強いるだけでなく、緑単の横並びを生かして+2能力のドローから奥義につなげるフィニッシュなど、器用な立ち回りが魅力です。同型での優位性はもちろん、アグロに対する耐性も若干上がります。1点のライフゲインが重くのしかかるテンポ相手(Izzet PhoenixやSpirits)にも地味に効果を発揮します。
全体としてRakdos Midがアグロを意識していたため(《絶望招来》の採用率が10%未満に低下)、アグロは奮いませんでした。その中でもBoros Heroic、Mono-W Aggroが健闘しています。
デッキタイプ別推移において、ミッドレンジ偏重傾向に変化はありません。全体としてアグロが伸び悩む結果になりました。Mono-G Devotion、Rakdos Midrangeの二大ミッドレンジにどう対抗するか、がデッキを組む際の出発点になります。
■注目デッキ1:Regi-hellion Shoot(アブザンパルへリオンシュート)
パルへリオンシュートは白黒2色のタッチカラーが4種存在する(純正2色、タッチ青、タッチ赤、タッチ緑)珍しいアーキタイプで、いまだにどのデッキが優勢という形にはならず、流行り廃りも含めて様々なリストが存在します。
コンボに特化するか、ミッドレンジ戦略にコンボを内蔵するか、いずれかの方向性になりますが、アブザン(タッチ緑)はコンボ重視型ながら《エシカの戦車》が使えるため、コンボ阻止後も粘り強く戦うのが持ち味です。
8月第1週から、少数ですが《朽ちゆくレギサウルス》を入れた形のリストが複数確認できました。
基本は《縫い師への供給者》に加え《サテュロスの道探し》《忌まわしい回収》による高速墓地肥やし&キーカード入手からの《脂牙》コンボを決めるのが勝ち筋ですが、オプションとして3ターン目に突如《朽ちゆくレギサウルス》が登場するオプションを備えています。
緑単の《茨の騎兵》すら一方的に倒せるスタッツは魅力です。特に赤いデッキは1対1交換を取れるカードがなく、一度出てしまうと対処には手を焼きます。デメリットの「手札を捨てる」能力ですが、このデッキでは手札に来た機体を捨てることができるというメリットにすら変化し得ます。早期に《ウルヴェンワルド横断》の昂揚を達成する助けにもなるのも見逃せません。
コンボ特化のため、サイドボードは《致命的な一押し》《強迫》をフル採用してアグロ、コントロール耐性を高めています。《突然の衰微》は厄介な《墓地の侵入者》をしっかり除去できるので、黒緑のデッキはぜひ採用したい1枚。
パルへリオンシュートには様々な可能性がありそうです。ぜひいろいろなカラーリング、そしてカード選択を試してみてください。
■注目デッキ2:Boros Midrange(ボロスマッドネス)
パイオニア屈指のパワーカード《鏡割りの寓話》。先のパルへリオンシュートが統計上マルドゥ優勢なのは、このカードの存在が大きいのは明白でしょう。今回は、このカードの「第2章」の効果に着目したミッドレンジデッキをご紹介します。
見慣れないカードが並びますが、捨てた際に唱えられる「マッドネス」をフィーチャーしています。《癇しゃく》は《稲妻》相当に、《流城の密教信者》は2マナ3/2トランプル+αとハイスペックなクリーチャーに早変わりします。当然カードを捨てる代わりに唱えているので、かなりのアドバンテージを得ている計算です。墓地に捨てて「永遠」を起動するなんてテクニックも。
《鏡割りの寓話》の他にも《先駆ける者、ナヒリ》《ラフィーンの密通者》などでカードを捨てる機会は意外と多くありますが、忘れてはいけないのが、相手の効果によるディスカードでも誘発する点。《墓地の侵入者》に《癇しゃく》を当てて、「護法」の際にマッドネスから《密教信者》を……、なんてことも可能です。
他、ラクドスミッドレンジなどでもよく見られるカードが脇を固めますが、フィニッシャーに《戦導者オレリア》が。ソーサリータイミングの除去が増えているメタゲームでは、出したターンのフィニッシュも十分可能でしょう。
それもこれも《鏡割りの寓話》のオーバースペックな能力が成立させているのですが、このカードを使い倒す意気込みは伝わってきます。マッドネス自体は黒にも割り当てられていますので、いろいろな使い方を試してみるべきなのかもしれませんね。
■注目デッキ3:Jund Sacrifice(ジャンドサクリファイス)
サクリファイスはラクドスカラーが主流ですが、最近《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を3~4枚積んだジャンドカラーのサクリファイスが増加傾向です。以前から少数ながらランクインしていましたが、連日のランクインが確認され始めました。
基本は「猫かまど&《波乱の悪魔》」ですが、緑を足したことによって《金のガチョウ》《パンくずの道標》が使用可能になり、長期的なアドバンテージ勝負に強くなっています。爆発力には欠けますが、安定性を取った形です。
《コルヴォルド》は《致命的な一押し》圏外なだけでなくスタッツも高いのが特徴で、さらに、出したターンの1ドロー以上が確約されていて、即除去されても損をしない破格のクリーチャーです。「猫かまど」と並んだ時の威力は想像を絶します。生きたままターンが帰ってきたら「ほぼ勝ち」レベルです。
これも《鏡割りの寓話》が非常に効果的で、《金のガチョウ》から2ターン目に《寓話》を出したり、ゴブリンの攻撃による「宝物」生成から4ターン目に《コルヴォルド》を繰り出したりと、八面六臂の活躍をします。《波乱の悪魔》のコピーによるフィニッシュはいわずもがな。
アーティファクト依存度が低くないため、緑単信心の《大いなる創造者、カーン》への対応は課題ではありますが、それを乗り越えるための《コルヴォルド》でもありそうです。その圧倒的な制圧力をぜひ一度ご体感いただければ。
■終わりに
8/19より、いよいよ『団結のドミナリア』プレビューが開始になりました。トップニュースはなんといっても《ヴェールのリリアナ》の再録でしょう。
3マナ域に悩ましいオプションがまた増えました。ラクドスミッドレンジは3マナ域が過多ですが、強力な競合を押しのけてデッキに入る隙間はあるのでしょうか!?(《墓地の侵入者》を後腐れなく除去できるのは魅力ですが・・・?)
他、3マナで繰り出せる新《アジャニ》などが公開されていますが、様々なプレビューがこれから増えていく予定です。既存デッキに入るかどうかを考えながらプレビューを見ると、より楽しめると思います。発売を心待ちにしながら、自分なりの期待のカードを見つけましょう!