パイオニア環境分析のつもり(12/19~1/3)増えるロータスは燦燦と輝いてる
■はじめに
あけましておめでとうございます。今年も当noteをよろしくお願いします。
一昨年末に私事(新居購入や転職など)でドタバタしたまま迎えた2022年でしたが、振り返れば充実した物書きライフを送れたと思います。一番印象に残っているのは添削さんからお声掛けいただいて参加したミドルスクールの企画記事です。
ミドルスクールの解説記事としては例を見ないボリュームでお送りした本記事については、非常に大きな反響をいただきました。海外からもお褒めの言葉を頂けたのが印象深いです。
カバレッジライターとしても参加させていただきました。いくつか書かせていただいた中で、インベイジョンブロック限定構築大会「限築杯」のR4カバレッジは特にいいものが寄稿できたと思います。(プレイヤーがすごすぎるだけなのですが・・・)
今年も細々と、しかし堅実に、パイオニアの分析を中心にお届けできればと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
■メタゲームブレイクダウン
年末~年始にかけてのMTGO上のメタゲームをまとめました。
Rakdos MidrangeがTier1をキープしていますが、使用率は前回の20%超から大幅に減少しています。さすがに対策が進んでいるようです。
Tier2は前回8デッキが横並びでしたが、前回の記事にあったとおり《ヴェールのリリアナ》が減少していることを受け、速度で優位に立つLotus Comboが躍進。また、もともと有利だったMono-G Devotionが《ヴェールのリリアナ》減少を受けて復調、ラクドス相手にテンポ差と対処の難しいカードで迫るGruul Midrange、以上3デッキがTier2集団から一歩抜け出しました。また全体的な速度の減少を受けて、5C Enigmaが勢力を伸ばしてきています。
一方で、Izzet PhoenixやSpiritsは苦戦気味。青いデッキはAzorius Controlが堅調ですが、その他のデッキは厳しい戦いを強いられています。
上記グラフの5デッキは全体的に減少。その代わりに、枠外からロータスコンボの使用率が一気に上昇し、グルール機体も安定した使用率を誇っています。
ロータスコンボの使用率自体はもともと低くはなかったのですが、Parhelion ShootやCreativity Comboといった他のコンボより《思考囲い》の影響を受けづらいランプ系デッキとしてふるまうことも可能なのが差別化されている点で、Rakdos Midrangeに対して大きく不利にならないのが他のコンボと異なる点です。
■『兄弟戦争』からの新戦力・その2
環境が変わって2か月弱ですが、発売後少し経ってから評価が上がってきたカードをご紹介します。
・《マイトストーンとウィークストーン/The Mightstone and Weakstone》
緑単信心で使用されています。ラクドスの《黙示録、シェオルドレッド》を落としながら、次ターン以降のマナ加速ができる点が評価されています。《カーン》からのビッグアクションのためにはマナが必要なので、除去と加速を兼任できるこのカードの重要性は増しています。メイン採用のカードとして《スカイソブリン》と枠を争っていますが、非クリーチャーデッキにもドローで無駄にならない点で勝っています。なお、サイドボードのシルバーバレット除去枠としても潜んでいることがあります。
・《街並みの地ならし屋/Cityscape Leveler》
各フォーマットで評価上昇中のこのカード、緑単信心において《カーン》のシルバーバレット先として居場所を見つけました。初期型で使われていた《隕石ゴーレム》とは性能が雲泥の差であり、こちらを採用しない理由はないでしょう。いくつかのデッキではメイン投入されていますが、メインに入れるメリットは《茨の騎兵》で墓地に落ちた際に「蘇生」で拾える可能性が見えることです。
・《苦々しい再開/Bitter Reunion》
5色奇怪な具現のキーカードになりつつあり、最近では4枚採用が増えています。《奇怪な具現》特有の引きムラを緩和しながら序盤を安定させつつ《創案の火》《奇怪な具現》を探し当てるために使われます。また使用後も《奇怪な具現》の3マナ圏サーチの種になりますし、《ヨーリオン》など素出しした自軍生物を速攻で走らせることもできます。5色奇怪な具現の躍進を支えているカードといって差し支えないでしょう。
■注目デッキ
・注目デッキ1:Mono-B Midrange(黒単ミッドレンジ)
ラクドスミッドレンジに近い思想の黒単です。黒単は1マナ域に寄せたアグロや、《ニクスの祭殿、ニクソス》から《アスフォデルの灰色商人》《地獄界の夢》を絡めた黒単信心などが散見されましたが、順当なミッドレンジとして登場するのは非常に稀です。
基本的にはラクドスミッドレンジの黒の部分のカードを選択していますが、アドバンテージ確保は《血の署名》《不笑のソリン》、除去に《残忍な騎士》、フィニッシュに《絶望招来》を採用しています。
一見ラクドスミッドレンジの下位互換に見えますが(《砕骨の巨人》《鏡割りの寓話》が強いということですが)、注目すべきは土地スロットにあります。
《廃墟の地》:ロータスコンボににらみを利かせつつ、ラクドスミッドレンジやグルールのミシュラランドの対応策として使える土地スロット
《ロークスワイン城》:《シェオルドレッド》下ではデメリットを軽減できるドローソース
《目玉の暴君の住処》:墓地対策とクロックを同時にこなす優秀なミシュラランド
《イフニルの死界》:除去カウントできる土地
あえて色を絞ることで、土地スロットで無駄なくデッキを強化しているのがこの黒単ミッドレンジの工夫です。なお、アゾリウスコントロールも同様の思想で組まれています。特に《廃墟の地》のフル採用は単色ならではの特権です。ただし単色デッキは信心系を除きアグロが多く、アグロはこのスロットに《変わり谷》を入れるため、単色デッキはこのカードの優先順位を押し下げていました。
メタゲーム上ではラクドス同様グルール機体や天使カンパニーなどの横並び系デッキが苦手に見えますが、サイドボードから全体除去を5枚採用することで相性の改善を図っています。白単人間や天使など、白いデッキが苦手なことは認識しているようで、《レイ・オブ・エンフィーブルメント》もしっかり3枚採用されています。
あえて色を減らすという選択肢もある、というデッキの好例として紹介させていただきました。皆さんも土地スロットの検討は怠りなく。
・注目デッキ2:Jund Transmogrify(ジャンド変身)
《変身/Transmutation》系スペルを悪用した踏み倒し系デッキです。パイオニアで変身系デッキと言えば《不屈の独創力》コンボが有名ですが、このデッキで使われているのは《異形化》、そして《銅纏いののけ者、ルーカ》という、かつての《裏切りの工作員》踏み倒しコンビです。このデッキはジャンドカラーで構成されていて、「変身」先はお馴染み《産業のタイタン》です。
《異形化》はクリーチャーしか対象に取れないため、クリーチャー・トークンを生成するカードをふんだんに盛り込んでいます。マナ加速を兼ねる《急使の手提げ鞄》、あるいは《入念な栽培》の「魂力」から最速3ターン目に《産業のタイタン》が登場します。オプションとして素出しルートも存在していて、《入念な栽培》や《ギャレンブリク城》から《産業のタイタン》につなげる動きも十分な速度です。
もちろんそんなにうまくいくわけもないですが、「囲いプッシュ」パッケージや《鏡割りの寓話》といったラクドスミッドレンジの基本は忠実に押さえていて、普通に序盤・中盤戦をこなせる地力があります。
グルール機体が緑単信心対策として使用している《アクロス戦争》は、殴り値の低いこのデッキでは一見フィットしないように見えます。しかし、頂いたクリーチャーをそのまま《異形化》《ルーカ》で変身させたり、《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の種にしたりすることができます。
デッキの性質上、打ち消し擁するコントロールデッキがやや苦手であり、サイドボード後は《目覚めた猛火、チャンドラ》を高速で唱えることが目標になるプランBを備えています。
オリジナルデッキながら基本となるカードは押さえており、しっかりと勝てるデッキに仕上がっています。一見緑をタッチしたラクドスにしか見えない点も初見殺し性能を高めているように見えます。このデッキのように、環境を理解し、基本に忠実なデッキ構築を心掛けたいものです。
■終わりに
前回もお伝えした通り、チャンピオンズカップ サイクル3において、ファイナルのフォーマットはパイオニアとなります。予選についても、パイオニアでの開催が多くなることが想定されます。
「ファイレクシア:完全なる統一」の発売が2月に迫っていますが、カードプールが比較的広いパイオニアにおいては、現環境からそこまで爆発的な変化が起こるデッキは少ないのが通例です。まずは1月、しっかりと戦い抜きましょう。
あらためて、本年も本noteをよろしくお願い申し上げます。
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