【拙訳】「メンフィスで躍動する"赤"」by Josh Silverstri(Channel Fireball)

https://www.channelfireball.com/articles/red-runs-it-down-in-memphis/

 そろそろプロツアーですね。Josh Silverstriは本記事でミシックチャンピオンシップの趨勢を予想していますが、果たして的中するでしょうか?
 急いで訳したので適当ですが(特にグルールのところ)、雰囲気だけでもつかみ取ってください。

 あとKen Yukuhiro Special(Esper Bugler)はお米吹いた。


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Red Runs it Down in Memphis
By Josh Silvestri // 21 Feb, 2019

【はじめに】

 GPメンフィスのメタゲーム・ブレイクダウンはかなり面白く見えました。大方の予想通りの結果となったというばかりでなく、1週間前と全く異なる結果にメタゲームが推移したということが分かるからです。もし「メンフィスで活躍するカードを5枚挙げてください」と聞かれたら、こう答えたでしょう。

《パルン、ニヴ=ミゼット/Niv-Mizzet, Parun》
《クロールの銛撃ち/Kraul Harpooner》
《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix》
《成長室の守護者/Growth-Chamber Guardian》
《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》

 《ゴブリンの鎖回し》も当然いい位置にいると言及したでしょうが、既に流行り始めているカードでもあり、そう言ったところであまり驚かれなかったでしょう。皮肉なことに、スタンダードで最も有用な赤のカードは、赤単アグロがメタゲーム上にいるが故に使われないものでした。Jody Keithのラクドスミッドレンジもビッグレッドをベースにいくつかの黒いカードを入れています。彼はメンフィスを優勝するに至りました。

Rakdos Midrange
Jody Keith

lands
4《血の墓所/Blood Crypt》
4《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》
1《ラクドスのギルド門/Rakdos Guildgate》
1《燃え殻の痩せ地/Cinder Barrens》
14《山/Mountain》
1《沼/Swamp》

creatures
4《凶兆艦隊の向こう見ず/Dire Fleet Daredevil》
4《リックス・マーディの歓楽者/Rix Maadi Reveler》
4《ゴブリンの鎖回し/Goblin Chainwhirler》
4《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix》
3《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》

spells
3《興行/Carnival》 // 《叩打/Carnage》
2《ショック/Shock》
4《溶岩コイル/Lava Coil》
4《宝物の地図/Treasure Map》 // 《宝物の入り江/Treasure Cove》
2《最古再誕/The Eldest Reborn》
1《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》

sideboard
3《軍勢の戦親分/Legion Warboss》
1《席次/Status》 // 《石像/Statue》
4《強迫/Duress》
1《シヴの火/Shivan Fire》
1《火による戦い/Fight with Fire》
2《焦熱の連続砲撃/Fiery Cannonade》
2《恐怖の劇場/Theater of Horrors》
1《炎鎖のアングラス/Angrath, the Flame-Chained》

 基本的に、先に挙げたカードは青単テンポや白単ウィニーがメタゲーム上の上位にいる限り有効なカードです。メンフィスの結果が示すように、ネクサス系デッキは強力ですが、《否認》やその亜種が多く採用され、その一方でアグロデッキが相当数存在するため、原根健太の印象的なトップ8入賞以外はネクサスの使い手は見られませんでした。これが示すところは、Jody Keithのラクドスや、高尾翔太のグルールアグロが、週末に合理的な選択肢から選ばれた素晴らしいものだった、ということを意味します。

 ラクドスミッドレンジは、軽量の地上クリーチャーと火力をぶつけ、《歓楽者》で手札を補充、という従来の戦略からは一線を画します。完全にミッドレンジデッキであり、ゲーム全体を掌握する動きをします。《宝物の地図》を見るのはいつ以来でしょうか? 軽量火力と《鎖回し》の組み合わせはゲーム前半に強く、このデッキ相手に早々に勝ち切ることは難しいでしょう。ここで比較対象として考えなければならないのはスゥルタイで、3種の「探検」クリーチャーによるシナジー、複数のプレインズウォーカー、《採取//最終》、そして《ハイドロイド混成体》を擁するため、より良さそうな印象を受けます。

 それでも、ラクドスはスゥルタイと同じ戦略かつ良いバージョンかどうか、ということは自問自答しなければなりません。スゥルタイは序盤の探検クリーチャーによる早いクロックを有します(その上、2種類のパワー2探検持ちは《鎖回し》では除去しきれません)。《ゴブリンの鎖回し》は白ウィニーや青単アグロに対して有効ですが、《再燃するフェニックス》や《包囲攻撃の司令官》は速やかにゲームを終わらせてくれます。一方、スゥルタイは《ハイドロイド混成体》、もしくは《殺戮の暴君》がフィニッシャーですが、それを繰り出す前にボードをコントロールしておく必要があります。

 双方のデッキがロングゲームを得意とし、すぐにゲームを変える脅威をいくつか持っているため、両者が戦う場合どうなるのか興味があります。主な違いは、スゥルタイのアドバンテージソースは《採取//最終》《ハイドロイド混成体》という環境屈指のリソースです。一方でラクドスには《歓楽者》ぐらいしかアドバンテージ獲得源がなく、両者に相当な差を感じます。

 さて、ラクドスはスゥルタイより劣っているのでしょうか? そんなことはありません。《凶兆艦隊の向こう見ず》や《宝物の地図》は予想外の角度から攻撃を加えます。また《炎鎖のアングラス》、《席次//石像》といったカードも《鎖回し》《司令官》とのシナジーを形成します。また《再燃するフェニックス》のカードパワーはずば抜けています。もし対戦相手に対処手段がなければ、そのままゲームを速やかに決めてしまう威力があります。グルールも同カードを使用していますが、シミックネクサスのようなデッキに対しては、サイドボードから妨害手段と早いクロックを追加して、ゲームを簡単に終わらせる手段があります(《強迫》のほか、いくつかのデッキでは《帆凧の掠め取り》も採用されています)。

Red-Green Aggro
Shota Takao

lands
4《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
4《根縛りの岩山/Rootbound Crag》
2《グルールのギルド門/Gruul Guildgate》
4《手付かずの領土/Unclaimed Territory》
9《山/Mountain》
1《森/Forest》

creatures
3《凶兆艦隊の向こう見ず/Dire Fleet Daredevil》
4《ザル=ターのゴブリン/Zhur-Taa Goblin》
4《成長室の守護者/Growth-Chamber Guardian》
4《ゴブリンの鎖回し/Goblin Chainwhirler》
4《グルールの呪文砕き/Gruul Spellbreaker》
4《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix》
3《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》

spells
2《争闘/Collision》 // 《壮大/Colossus》
2《稲妻の一撃/Lightning Strike》
4《ショック/Shock》
2《溶岩コイル/Lava Coil》

sideboard
2《クロールの銛撃ち/Kraul Harpooner》
3《軍勢の戦親分/Legion Warboss》
3《燃えがら蔦/Cindervines》
1《争闘/Collision》 // 《壮大/Colossus》
2《焦熱の連続砲撃/Fiery Cannonade》
1《不滅の太陽/The Immortal Sun》
2《ウルザの後継、カーン/Karn, Scion of Urza》
1《溶岩コイル/Lava Coil》

 一方、高尾翔太の組み上げたグルールも同様の戦略を有しています。これほどクリーチャーに寄せた形の赤緑デッキは初めて見ました。GP2日間を通じて《ザル=ターのゴブリン》はこのデッキ以外ではおそらく見られず、カードとしてそこまで強いかと言われると疑問符です。《番狼》がそこまで盤面に影響を与えることはなく、大体の場合はすぐ1対1交換をとられて終わりです。今のクリーチャーのレベルを考えると、マナカーブ通りの展開、もしくはとどめをさせる盤面が訪れない限り、2/2速攻を使うことはないでしょう。

 しかしJodyのデッキと比べると、かなり似ています。《鎖回し》《フェニックス》《司令官》という赤いデッキの核となるパワーカードを入れており、赤の軽量除去でそれらをバックアップする、という点は同じで、色の選択が違うだけです。Jodyが《宝物の地図》《最古再誕》でデッキを円滑に回す一方で、高尾は《成長室の守護者》を用い、中型クリーチャーを補填する形でアドバンテージを得ます。

 このアプローチはエスパー戦で特に役立ちますが、他のマッチアップでは嫌われる戦略です。スゥルタイにアドバンテージ勝負を挑んでも勝てるはずがなく、また環境最速のデッキ・白ウィニーがアンセム効果を使えば相手のクリーチャーの方がサイズで上回ってしまいます。青単相手には有効ですが、《ザル=ターのゴブリン》より《クロールの銛打ち》のほうが相手の《大嵐のジン》と格闘できるため目的に合致します。

 《成長室の守護者》はカード単体としても強力ですが、アグロデッキの初期の攻撃を耐えるのにも役立ちます。しかし、Keithのラクドスは追加で4/4が1体や2体出てきても全く気にならないぐらいの仕事ができます。

共通点

 重要なのは、これらのデッキの共通点です。

Creatures
4《ゴブリンの鎖回し/Goblin Chainwhirler》
4《再燃するフェニックス/Rekindling Phoenix》
3《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》

Spells
8-10赤の軽量除去

 この他に間違いなく3~4枚の《凶兆艦隊の向こう見ず》も含まれるでしょう。

 この情報から何を読み取るかは想像にお任せしますが、これがメタゲームの最終形であることはなさそうです。こういった類のデッキがどのぐらいメタゲーム上で有効なのかは、今回MCクリーブランドで見られるデッキの内容に大きく依存するでしょう。こういったデッキの立ち位置が良い理由のひとつに、小型クリーチャーによるアグロ戦略が主流なため《ヴラスカの侮辱》の枚数が少ないことが挙げられます。同じことが《宝物の地図》の復活にも言えます。もしこのパッケージを対処する手段を相手が持たないのであれば、《地図》はミッドレンジミラーを制する一番の方法だと言えます。

 メンフィスがどうなるかは先週の記事(https://www.channelfireball.com/articles/the-defining-deck-in-standard-is-mono-blue-aggro/)で予測した通りでした。《再燃するフェニックス》の復活までは予測できませんでしたが、それ以外のメタゲームの推移は大体合っていましたね。

【GPメンフィス メタゲーム・ブレイクダウン】


■TOP8
2 スゥルタイミッドレンジ
2 青単
1 ラクドスミッドレンジ(優勝)
1 シミックネクサス
1 白ウィニー
1 グルールミッドレンジ

■トップ9~32
5 青単
5 エスパーコントロール
5 スゥルタイミッドレンジ
2 赤単アグロ
2 アゾリウスアグロ
1 イゼットドレイク
1 行弘賢スペシャル(エスパーラッパ)※29位のリストです
1 スゥルタイ《ハダーナの登臨》
1 シミックネクサス
1 門ネクサス

 詳細なリストはこちら(http://coverage.channelfireball.com/event/3)からどうぞ。

【自分の話】
 他の選択肢については、ドレイクの評価が乱高下しています。土地2枚とキャントリップキープでライブラリートップ7枚に土地がないっておかしくないですか……。(ネタバレ:土地引けなかった。)というわけで私は土地の多く必要な3色で組みました。ティムールドレイクは平凡なデッキでしたね。《ハイドロイド混成体》X=4は《パルン、ニヴ=ミゼット》と比較するとゴミみたいな性能ですが、23~24枚の土地を入れたデッキにおける《成長のらせん》はデッキの中でも最高のカードでした。《スフィンクスの啓示》がデッキに入っていても、十分な勝利には程遠いのです。うーん。

 多分、回答としては《フェニックス》を入れて《ドレイク》各種を減らすことです。《呪文貫き》や《潜水》で面倒を見てやる必要はありませんからね。ティムールミッドレンジも同じようなアプローチなんでしょうが、もう少し違った角度から攻めたいと思います。私は過去に《轟音のクラリオン》《ドミナリアの英雄、テフェリー》入りジェスカイ・ドレイクでちょっとした成功を収めましたが、まぁ数パーセント勝率が高くなった程度です。白ウィニーに対する回答を得て、《テフェリー》はミッドレンジやエスパー相手に活躍しますが、対シミックネクサスのメイン勝率は30%で、《再燃するフェニックス》入りのデッキに全然勝てませんでした。(このマッチアップは《溶岩コイル》が引けるかどうか、もしくはライフレースを挑むしかなくなってしまうので)

【結論】


 とにかく、ミシックチャンピオンシップは《運命のきずな》《荒野の再生》デッキが(シミック、門、その他全てのバリエーションのうちのいずれかが)ベストデッキであるかどうかを証明できる最後のチャンスになるでしょう。そうでなければ、ミッドレンジデッキのいい餌になってしまうでしょう。プレイヤーがスゥルタイとラクドスのミッドレンジ対決に向かうのであれば、ネクサス(と、門)デッキが勝利するでしょう。カバレッジを読みながら、過去史上最高クラスの(多様性を持つ)スタンダード環境、そして最高の月の始まりを迎えましょう。


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とけいまわり
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