去りゆく時代に別れの歌を~光月るうサロンコンサートより~
あまり、自分の時代を鼓舞するような事をしたくはなくて自分が宝塚を去りゆく時にも過去の歌を歌ったり、昔話を下級生に聞かせる様な事はしないでいました。どうしても過去を振り返っている様な、今の自分が前に進んで行っていない様な気がしたからです。今日はその事を少し後悔しました。
宝塚ホテルにて光月るうサロンコンサートが行われました。登場から初舞台の「ラッキースター」から始まり、そこから21年間の思い出深い舞台の歌や台詞の数々を聞かせて下さいました。同じ時代に生き共に悩み、笑い、泣き、時には意見を違えながらも最終的には舞台に対して真摯に向き合う事を知っているから、決して手を抜いたりいい加減にしたり、形や上っ面だけで表現せず、一番重要なのはその役の中にどんな心の表現があるのかというのはブレないで守れる人。当たり前の様に傍にいた光月るうという男役。私たちの期86期が全員退団し、87期も、そしていよいよ88期最後の一人が去っていきます。
開演前にロビーに立つと21年のるうちゃんの舞台の軌跡と共に歩いてこられたファンの皆様が少しずつ声をかけて下さいました。
「いつも一緒の舞台をみてました。」
「寂しいです。」
「あの時のあの作品がすごく好きでした。」
と皆様それぞれの思い出を口にして涙ぐむ方もいらっしゃいました。
21年と言う長い間、この方々の人生の時間と共に我々は歩いてきたのだと、改めてずっしりと感じます。我々、舞台人の仕事の成果は目に見えないので、不安になる事もあります。喜び・豊かさ・温かさ・優しさ・勇気や希望・明日への活力…本当に多くの感情や感動を伝えてきたんだと、皆さんの言葉を聞いて励まされます。涙と共に皆様の想いも浄化されてゆくのでしょう。
私が退団を発表する前に彼女に退団を伝えました。
「ごめんね。まだ副組長にもなってないのに。でもね、組長はるうちゃんなら大丈夫ですって言ってあるから。」と伝えました。あの子は「はい。」と言って不安な様子は一切見せず淡々と仕事の引き継ぎを受けてくれました。でも見えない所で挨拶の練習を何日も前からずっとしていました。大分痩せてもニコニコと笑顔を忘れませんでした。私が退団して、コロナ禍となり、本当に誰も経験した事の無い苦労があったと思います。舞台を観る度に「何か気になる所ありますか?」と駄目だしを聞かれるのを知っているのに、出てくるだけで安心してしまう自分がいました。
共にした舞台の数々…歌を聞くとその時の情景が次々に浮かんでは消えていきました。不思議と一緒に出ていない作品の歌でも涙が出たのは、るうちゃんの伝える技術・想い・人間力だと思います。
心に焼き付けて…去りゆく時代に別れの歌を…
終わったら、久しぶりにゆっくり話そう。これまでの話は何時間あっても足りない気がしています。
さあ、新しい時代への希望も忘れずに、今やるべき事をやりましょう。
すーさん