私と声と宝塚歌劇
私は19年間宝塚歌劇の舞台に立っていた。
私が「声」について考えるきっかけとなった事について今日は書こうと思う。
それは、ある舞台のオーディションで「ベルティング発声」という発声法を求められた事がきっかけだった。「ベルティング発声」という言葉がいつ出来たのかは定かではないけれど、当時のミュージカル界の最新作品では多く使われ始めていた。その公演から宝塚歌劇でも「ベルティング発声」という言葉が出始め、生徒の中でもその声が必要であるという認識が始まった様に思う。
この言い方にも賛否両論が出てくると思うが、「ベルティング発声」を一言でいうと低音から高音まで同じ音質・声量で出していく発声であると思う。その公演はロックのリズムがバンバン流れている楽曲が多かったので、そういった発声でないと声が消されてしまうんだと思う。どっちかというと声楽よりポピュラー的な声だ。
そして、私はその発声が出来ませんでした。(笑)オーディションでは叫ぶだけで終わりました。(笑)今、考えても顔から火が出そうなほどカッコ悪い歌だったし、ちんぷんかんぷんだった。
私は、気になってその公演が終わった後も色んな人に「ベルティング発声」はどうやったら出来るようになるんですか?と尋ねてまわったけれど、一向に誰一人納得いく答えは得られなかった。考えてみると「歌」というものの先生自体、始めからある程度声が出ている人が多いし、よっぽど歌える人は歌手になるのでどうやったらその声が出るかを教えるという事を専門にやっているエキスパートを探すのは至難の業だ。多分、当時日本でも教えられる人は数少なかったと思う。(今は増えてきていると思う)私は、何年もかけて全国の色んな先生の教えを請い、文献等もを読み進めていく内にある疑問にぶつかった。
「ベルティング発声」より前に私はどうやって声が出ているのかを知らないではないか…声の出る仕組みを知らないのに、高度な発声なんて理解出来る筈は無いじゃん。
そりゃそうですよね…
それから、どうやって声は出るのかを勉強し始める様になった。そうなると、次々に疑問が出てくる。
「ん?声出す前に呼吸してるな。んじゃ呼吸の仕組みは?」…今まで「お腹で息をためる」って言われたけど、息って「肺」に入るよな…
「ん?呼吸する前に正しく立ってなきゃいけない??正しい立ち方とは??」…「真っ直ぐ立って」って言われたけど、真っ直ぐ立つ事なんて骨格的に不自然なんだ…
キリが無いけど、そこをすっ飛ばすと同じことの繰り返しになる。
そして最後に辿り着いたのは、「心身ともに健康」である事。(笑)
んじゃー好きなことしてストレス抱えず元気に生きていきましょー!!
それじゃ意味がない(笑)但し、一個一個気を付けていたら、がんじがらめになるな。
①ストレス無く「立つ」→②気持ち良く「呼吸」→③呼吸で「声帯」を鳴らす→④身体にいっぱい「共鳴」させる
先ずはここから。結果的に「ベルティング発声」の仕組みは分かった。でも、本当の目的は身体に気持ち良く歌いたいという事。理想を求めて苦しんで歌っていた事に気づいた。したい様に生きる事はコントロール可能な気がしてくる。「才能が無い」「声帯が恵まれていない」「度胸が無い」そんな漠然とした理由で歌えないのでは無い。「あなたの本当の声を知らないから歌えない」の…かもしれない…そんなこんなで始まった。私の「声」の旅。それは「快適」に生きる旅でもあると思っている。
すーさん