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第13回 メディアの沈黙――デフリンピック報道の裏で何が起きているのか

2025年東京デフリンピックは、日本のスポーツ史において大きな節目となるはずである。しかし、その裏では、不透明な資金の流れやパワハラ問題、ガバナンス崩壊が深刻化している。それにもかかわらず、こうした問題は大手メディアによってほとんど報じられていない。なぜ全日本ろうあ連盟の不正や組織の問題が表沙汰にならないのか。本稿では、メディアの沈黙の背景を探り、デフリンピック報道の裏で行われている情報統制の実態を明らかにする。


全日本ろうあ連盟とメディアの関係

全日本ろうあ連盟は、聴覚障がい者の代表団体として長年にわたりメディアとの関係を構築してきた。その影響力は、スポーツ報道だけでなく、社会問題を扱う番組や新聞記事にも及んでいる。

特に公共放送や全国紙は、全日本ろうあ連盟の主張を積極的に取り上げる傾向がある。その理由の一つとして、連盟が政府機関や自治体と密接に連携し、補助金や政策決定に影響を与える立場にあることが挙げられる。つまり、全日本ろうあ連盟を批判する報道を行うことは、障がい者福祉やスポーツ振興のイメージを損なうリスクを伴うため、メディアは慎重な姿勢を取らざるを得ないのだ。

しかし、このような配慮が行き過ぎると、問題の指摘すらできなくなり、結果として不正が見逃される温床となる。デフリンピックの運営に関する問題点が次々と明るみに出ているにもかかわらず、大手メディアが沈黙を続けているのは、こうした構造的な要因が関係している。


デフリンピック報道の偏向と情報統制

これまでの報道を見ると、デフリンピックに関する記事や番組は、主に次のような内容に終始している。

  1. 選手の努力や感動のストーリー

  2. デフリンピックの意義や歴史の紹介

  3. 東京都や政府の支援と期待

一方で、組織の問題や選手へのパワハラ、不透明な資金運用については、ほとんど言及されていない。これは、全日本ろうあ連盟が積極的にメディアとの関係を維持し、不都合な情報の拡散を防ごうとしているからではないかとの見方もある。

本誌が関係者から得た情報によると、一部の記者は全日本ろうあ連盟の幹部から「批判的な報道を控えるように」との圧力を受けたと証言している。また、あるスポーツ紙の記者は、「デフリンピックの報道方針は、基本的にポジティブな内容に限定されている」と述べており、メディア側が自主的に自己規制を行っている可能性もある。

さらに、デフリンピックを主管する東京都が莫大な資金を投入しているため、メディアが批判的な記事を掲載すると、広告収入や自治体との関係に影響が及ぶ恐れがあることも、報道が抑制される一因と考えられる。


報道されないパワハラ問題と選手の葛藤

デフリンピックに出場予定の選手たちは、メディアの沈黙に失望している。選手や関係者が不正やパワハラを告発しても、メディアはこれを取り上げず、むしろ連盟の広報活動を支援するような報道を続けているのが現状だ。

本誌が入手した関係者のメールには、こうした報道のあり方に対する強い不信感が記されている。

「このままでは何も変わらない。メディアが問題を取り上げなければ、私たちの声は届かず、同じことが繰り返されるだけだ。」
「パワハラの証拠があっても、メディアに持ち込んでも取り上げられない。デフリンピックを前に、泣き寝入りするしかないのか。」

デフリンピックが終わるまで、この問題は封印されるのか。それとも、真実が公にされる日は来るのか。選手たちは今も葛藤しながら、競技に打ち込んでいる。


なぜ日本のメディアは報じないのか?

日本のメディアが全日本ろうあ連盟の問題を報じない背景には、以下のような要因が絡んでいると考えられる。

  1. 全日本ろうあ連盟の影響力

    • 障がい者福祉に関連する組織として、政府や自治体との関係が深く、批判を受けにくい立場にある。

  2. メディアの自己規制

    • デフリンピックを成功させるために、ネガティブな報道を避ける傾向がある。

  3. 広告・スポンサーシップの問題

    • 東京都や大手企業がデフリンピックのスポンサーであるため、メディアは批判的な報道を控えざるを得ない。

  4. 報道の優先順位

    • 他の社会問題やスポーツイベントの報道が優先され、デフリンピックの不正追及は後回しにされる。

このような事情が重なり、全日本ろうあ連盟の問題はほとんど報道されずにいる。


求められるメディアの役割

報道機関の本来の役割は、権力を監視し、社会の不正を明るみに出すことにある。デフリンピックの成功は重要だが、そのためにガバナンスの問題を見逃すことがあってはならない。

全日本ろうあ連盟の運営のあり方に問題があるならば、それを正すのもメディアの役割である。都民の税金が投入され、選手の未来がかかっている以上、適正な運営が求められるのは当然だ。

日本のメディアは、全日本ろうあ連盟の影響を受けることなく、独立した視点でこの問題を報じるべきではないだろうか。

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