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第5回 協会の腐敗――不正と権力構造

選手たちの抑圧に加え、競技団体の内部では、不透明な資金の流れや権力の乱用が横行していることが明らかになった。公的資金を含む資金の使途、理事会の不透明な運営、特定の人物への権限集中など、組織の腐敗がスポーツの健全な発展を妨げている実態を掘り下げていく。


全日本ろうあ連盟のガバナンス機能の欠如――「圧力団体」がスポーツ統括組織を担う不幸

全日本ろうあ連盟は、もともとろう者の権利を主張するための圧力団体として活動してきた組織であり、ガバナンス機能を適切に果たせるような体制は持ち合わせていない。しかし、その存在感と政治的な影響力の強さから、ろう者のスポーツを統括する立場に立たされてきた。

本来であれば、スポーツ団体には透明性、公平性、そして競技の発展を目的とする強固な運営基盤が必要だ。しかし、ろうあ連盟にはそのような体制が整っておらず、むしろ閉鎖的な組織運営によって内部批判を封じる体質が形成されてしまっている。結果として、競技団体のガバナンスは崩壊し、一部の幹部の裁量で物事が決まる独裁的な構造が維持されている。


「コンプライアンスの徹底」という欺瞞

全日本ろうあ連盟の会長は、最近のマスコミ取材に対して「2025年東京デフリンピックで重要なのはコンプライアンスの徹底」と発言している(読売新聞 2023年11月14日)。しかし、その発言とは裏腹に、今回の事案のごとく現場ではコンプライアンスが無視される実態が明らかになっている。内部告発を封じ込め、選手たちを抑圧する体質が横行し、組織の透明性とは程遠い状況である。

選手の派遣費用の不透明な管理、理事会の不正な運営、報復人事など、数々の問題が報告されているにもかかわらず、組織はそれを改めるどころか、問題を指摘する者に圧力をかけることで事態を封じ込めようとする。そのため、選手たちは「不正を見ても声を上げられない」「反発すれば競技人生を奪われる」といった不安を抱えながら活動せざるを得ない状況に追い込まれている。

発言と現実がここまで乖離していること自体が、組織の本質を如実に物語っている。コンプライアンスという言葉を掲げながら、実際にはその理念を守る意思がないことが明白であり、現在の体制が続く限り、状況の改善は見込めないだろう。


スポーツの公平性を守るために

スポーツは、公平性と競争の場であるべきだ。しかし、一部の競技団体では、選手・スタッフを食い物にし、権力を私物化する体制が続いている。このままでは、次世代のアスリートたちが健全な環境で成長することが難しくなってしまう。

全日本ろうあ連盟がこのような状況を改善しない限り、日本のデフスポーツ界の発展は見込めない。組織としての役割を適切に果たせないのであれば、スポーツ統括機関としての責任を他の組織に移譲するべきだという議論も避けられないだろう。

「コンプライアンスの徹底」を掲げながら、その実態は全く異なる――この欺瞞が改めて浮き彫りになった今、選手たちは何を求め、どのように闘っていくのか。その動きを次回、詳しく掘り下げる。

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