東海道珍道中Day 9 府中宿→藤枝宿~シュレーディンガー殺しのとろろ汁~
世の中にはシチュエーションで美味しさにブーストがかかる食べ物がある。スキー場のカレー、他人のフライドポテトL、海の家の焼きそば、ちょっと長めの海外滞在からの空港吉野家。
そして東海道の旅では、峠越えのとろろ汁。
登場人物:
田内(仮名):私。社会人3年目。武蔵国、相模国、伊豆国を超えて人間として大きく成長した。
中山(仮名):東海道の考案者。箱根峠の入り口で出会った東海道最強の翁・手練爺(仮名)に感銘を受ける。
【前回の記事はこちら】
府中宿→丸子宿(5.3km)
2022年2月27日。東海道の二日目は、たいてい無感情でビジネスホテルのビュッフェを食べるところから始まる。
この日もちょっと盛りすぎたプレートを後悔しながら食べ、コーヒーを飲んで覚醒した状態でスタート。
もちろんチェックインは駿府城から。
前日チェックアウトした駿府城門の近くに行くと、前日は暗くて気づかなかったが、駿府城のベンチに田内と中山の前任にあたる弥次喜多が座っていた。
とりあえず前任への挨拶がてらチェックインしてこの日がスタート。
ちなみに弥次喜多は愛されキャラ的な感じだけど、旅が始まる前の二人バックグラウンドえげつない。道徳の授業中に二人とも廊下に立たされるレベルでえげつない。今だったらアウト、というか兎跳び許されてた昭和でも多分アウトなくらいえげつない。後任としてみなさんに申し訳ない。
府中宿から丸子宿までは5.3km。東海道の中では比較的短い間隔の区間。
静岡駅周辺の道は今ではアーケード街となっていて、東海道一の道幅を誇る七間町通りを歩く。
アーケードを抜け、安倍川を超えると、山が見えてくる。
丸子宿→岡部宿(8.5km)
丸子宿には創業慶長元年(1596)の絵にかかれている丁子屋がある。東海道三種の神器、広重の丸子宿の浮世絵でも描かれている名店で、自慢のとろろ汁には歴史上の有名人たちも舌鼓を打ったといわれる。
丸子宿から次の岡部宿の間には宇津野谷峠という峠があり、峠越えの前のとろろ汁としても美味しいという。
丸子宿でのチェックインは当然丁子屋。その店構えからして、食べなくてもとろろ汁が絶対においしいことが伝わってくる。
日本橋からはるばる歩いてきた我々は当然食べる権利はあるが、中に入ると名店だけあってそれなりに待ってる人がいたのと、いかんせん府中宿と丸子宿までの距離が近すぎて朝食の無感情ビュッフェがまだ響いてて、これは食べられないぞと見送ることに。
弥次喜多はこの店でひと騒ぎあったらしいが、我々は不戦敗。
この時点でももちろん後悔していたが、この峠越えから半年たった2022年8月頃に、前の部署でお世話になった方が東海道歩きをしていると聞き、ランチをすることになった。
その方から、丁子屋はそのためだけにもう一回行く価値があるくらいおいしいと聞き、時間差で後悔が押し寄せてきた。
これは東海道最大の采配ミスで、悔やんでも悔やみきれない記憶として刻まれる。忘れたものを取りに帰るように古びた思い出の埃を払いたい。
そんな後悔を胸に、宇津野谷峠に向けて、しばらくの間山間の道を進む。宇津野谷峠の入り口あたりに道の駅があり、そのあたりでちょうどお昼を迎える。
後悔を払拭するべく、宇津野峠直前の道の駅で、峠越えのとろろ定食を注文。
このころにはおなかもすいていて、とてもおいしいとろろ越え定食を堪能。
だが、この定食がおいしいがゆえに先ほどの丁子屋は一体どれほどの美味しさだったんだろうと逆に気になってしまう。丁子屋のとろろ汁は絶対においしいに違いないのだ。
シュレーディンガーの猫の話だと丁子屋のとろろ汁は食べるまで美味しいか美味しくないか分からないというが、そんなことはない。絶対においしいに違いない。
こうなるとシュレディンガーはうそをついていたのか?となるけど、まずシュレーディンガーには直接あったことないから、シュレーディンガーなる人物はそもそもいなかったのかもしれない。
宇津野谷峠の入り口は宿場間の間にある「間の宿」だけあって趣のある建物が並び、その合間を縫って峠に入る。
宇津野谷峠は難所できつくはあるが、箱根ほどのきつさはない。2月末だからまあまあいい感じの気温の中で山中を歩く。
箱根ほどのきつさはないが、一つ重要なミスをした。
そう、昼飯があまりにも峠越えの直前すぎて、おなかが重い。
丁子屋で食べていたら、丁子屋~峠までまあまあ距離あったから、このころちょうどいいコンディションで迎えられたのかもしれない。
しばらくの山道行ののち、峠に到着。峠には工房で作られたようなおしゃれ標識がある。
もしかしたらわくわくさんが作ったのかもしれないが真相は誰にもわからない。ごろりかもしれない。
岡部宿→藤枝宿(7.8km)
峠を下ってしばらく歩くと岡部宿のエリアに。
山間に家々が立ち並ぶ閑静でいいところだが、この辺りで田内と中山の話題が尽き、
たまに貼ってある政治家のポスター見て、顔つきだけで与党か野党かあてる与党野党ゲームくらいしか話題がなくなる。このゲーム何が面白いんや。
岡部宿は江戸時代から残る大旅籠屋があり風情は抜群。伝統の街並みに目鼓を打つ。
ここでチェックインしたいところだったが、30分ほど前に手前のよくわからないところで済ませてしまったため、旅籠屋チェックインは不可という判定に。東海道の旅では宿場町につき1回しかチェックインできないから、どこでチェックインするのかの目利き力が試される。
岡部宿から藤枝宿の間は平たんな道が続く。途中「法の橋」という、古代エジプトみたいなおっかない名前の橋があり、通ったら嘘つきは心臓抜かれるんじゃないかとびくびくしながらわたるが、幸いにも何の裁きもなかった。
無事夕暮れ時に藤枝宿につき、チェックアウト。翌日仕事なのが解せない。
次回:Day10 藤枝宿→掛川宿
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