【SPIRIT of SEAGULLS】vol.6「日々のプロセスで全てが変わる」黒川 虎徹(’23年度卒)
2023年12月17日、オープンハウスアリーナ太田に響き渡るブザー。コートに立っている私に涙はなかった。
この日は「第75回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)」の決勝戦。私たちSEAGULLSは、白鷗大学に破れ(68-71)、準優勝で終わった。試合終了後、チームメイトは悔しさが滲み出ていた。私も悔しいはずなのに、なぜか笑顔だった。シーズンを通して目標にしてきた「インカレ優勝」が叶わなかったにもかかわらず。
「SEAGULLSとの出会い」
SEAGULLSでバスケをやりたいと思ったのは、中学3年生時に陸さん(陸川ヘッドコーチ)と話す機会があり、その時に初めて東海大学でバスケをやりたいと思ったのを覚えている。また、この時に陸さんの下でバスケットボールを教わりたいと感じ、高校は東海大学の付属高である東海大学付属諏訪高校に進学を決めた。当時の諏訪高校のヘッドコーチは、私が4年時にSEAGULLSのアシスタントコーチとして加入された入野さん(’04年度卒)だった。
入野さんがSEAGULLSのOBであること、プロバスケットボール選手になるためにレベルの高い環境下で競い合い、成長できる考えと考え東海大学に進学を決めた。
「試合に出られることが当たり前ではない」
SEAGULLSは私が考えていた以上に競争が激しく、厳しい世界だった。私の気持ちのどこかに「1年生の頃から試合に出ることが可能だろう」という安易な考えがあったかもしれない。当時のSEAGULLSの先輩には、各世代のスーパースターが揃っていた。1,2年時は、いつも家を出る前から緊張しており、練習中も失敗を恐れて萎縮しながらプレーをしてしまい、思うようなプレーができなかった。この2シーズンは、コートから見る景色よりも応援席から見る景色の方が多かった。私の人生において初めての経験で、試合に出られないチームメイトはこの悔しい思い毎回していたと思うと、試合に出ることが当たり前ではなく、申し訳なさを感じた。
「目先のことではなく、その先へ」
この時に何よりも忘れかけていたことが、「自分が目指している場所はこのチームでプレータイムを勝ち取ることではなく、その先にある」ということだった。プロバスケットボール選手になるためにSEAGULLSに入ったことを気づかないうちに忘れており、目先のことだけに目を向けていた。
みんなと同じ練習量では差は埋まらないし、この環境下で活躍できなければプロにはなれないと思い、オフの日でも学生コーチの手を借りて、ワークアウトを継続していた。朝7時からのトレーニング前も体育館に行き、シューティングをしてから向かっていた。また、プレータイムが少ない時は寮に戻ってバイクを漕いで有酸素運動を行い、ある程度の身体のキツさがあっても、私が目指している場所は目先の結果ではなく、その先にあると言い聞かせながら日々のプロセスを大事に取り組んでいた。
「えげつなく」
3年時から、チームの主力としてコートに立てるようになった。それでも、スプリングトーナメントでは何も出来なかった(ベスト16で敗退)。それまでの私は綺麗にバスケットをしてしまい、ソフトコンタクトが多く、コートに居てインパクトがあるプレーヤーではなかった。それに気づいた陸さんがこんな言葉をかけてくれた。
「えげつなく」
(陸さんは覚えているかわからないが笑)。この言葉をかけていただいて以降、自分からコンタクトをするようになり、一気にプレーの幅が広がった。そしてオータムリーグ終盤からは徐々に自分のカラーを出すことができた。前年度の主力選手が抜け、チームとしてもシーズン序盤は苦しんだが、シーズンが終わる頃にはチームが結束し、インカレでチャンピオンを取ることが出来た。
チャンピオンになり、嬉しい反面、どこか不安を抱いている自分がいた。閉会式の際、隣に居た元田大陽('23年度卒/現・秋田ノーザンハピネッツ)と互いに嬉しさと不安を語り合っていた。
「リーダーの在り方とは」
私たちが最上級生になり、いざ始まると不安もあったが、それ以上に楽しみの方が大きかった。私はキャプテンを志願し、強い覚悟でラストイヤーを送った。キャプテンをするうえで、いくつか決めていたことがある。
人に物事を言う前に自分がやる
練習のインテンシティが低いときや雰囲気が悪いときに、陸さんよりも先に気づいて皆に伝える
試合中はポジティブな声かけをする
練習中やオフコートで気づいたことは遠慮をせずに周りに伝える
自分が言いたくないことでも、チームが勝つために必要ならばはっきり言う
Aチーム、Bチーム、学年関係なく全員とコミュニケーションを取ること(スタッフも同様)
自分達の目標「インカレ優勝」を常に意識する
『プロセス』を大事にすること
これらを私の中で決めて取り組んでいた。
私はコミュニケーションを取ることが上手ではなく、口下手な部分がある(チームメイトだった人は思っていたはず笑)。それでも、自分が思ったことは真っ直ぐに伝え、チームが良くなるため、勝つために取り組んだ。
「シーズンはオフシーズン(1月〜3月)がキーになる」
インカレ後はシーズンが終わり、心身ともにリフレッシュが出来る時期である。しかし、そうではない部分もある。オフシーズンにどれだけチームケミストリー、スタンダードを高められるかがそのシーズンに大きな差を生み出し、日本一を取ることが出来るかに繋がる。このプロセスの重要性を教えてくれたのが松崎裕樹さん('22年度卒/現・横浜ビー・コルセアーズ)の代である。私たち4年生も、プロセスを大切にするために何かあればすぐにミーティングを行い、どのようなプロセスを歩むことが大事か常に話し合った。私は一人で抱え込み、自分で行動をしてしまうタイプだったが、良い同期のおかげで、周りにも託せるようになった。キャプテンだから自分がやらなければならないのではなく、一番良いのは全員がリーダーシップを取れること。それがこの時から構築できていた。オフシーズンはハードなトレーニンングでも全員が真剣に取り組み、インカレを優勝するために必要なことと皆で共通認識をして、良いプロセスを過ごすことが出来た。(ラントレーニングの時はハドルで毎回CJ(江原 信太朗/’23年度卒/現・滋賀レイクス)が良い声掛けをしてくれてチーム全体でネガティブな発言がほとんどなかった笑)
「必要な”プロセス”」
シーズン最初のスプリングトーナメントでは、優勝に遠く及ばず、7位で終わってしまった。だが、この結果に落ち込む事はなく、チームに何が足りないかを見出す事ができ、負けて良い試合は絶対にないが、良い収穫を得ることが出来た大会だった。試合後に、自分たちが目指しているのは「インカレ優勝だ」と伝え、この結果は必要な『プロセス』だと自分にも周りにも言い聞かせた。
また、この時に大事にしていたことがベンチ外の選手に声をかけること。私自身も1,2年時に応援席からの景色を多く見てきたからこそわかる気持ちもあった。試合に出られなくてもやれる事はあるし、陸さんは見てくれていることを伝え、誰一人としてそこで腐って欲しくなかった。また、一人が腐ってしまうと、腐ったみかんのように周りに伝染することも懸念していた。しかし、そのような事はなく、全員が同じ方向を常に向いていた。インカレを取るためには、これは必要な『プロセス』だった。
「海外のチームから得たこと」
8月のWUBS(World University Basketball Series)。世界のチームと対戦することで自分たちの現状を知ることができる良い機会だった。戦って感じた事は、身体の大きさ、プレーの巧みさではない。チームとしての結束力である。SEAGULLSも結束力に自信があったが、優勝した台湾のNCCU(国立政治大学)、アメリカのラドフォード大学は私たちのチーム力を上回っていた。その違いは、タイマーが止まるたびにハドルを組み、自分たちのやるべきことに常にフォーカスし、共有しあっていた。それまでのSEAGULLSは共有をしていたが、審判のジャッジに不服を唱えてしまうシーンがたまに見受けられた。これを機に、タイマーが止まるたびにハドルを組み、フリースローの時は肩を組んでハドルを導入した。それにより、自分たちのやるべきことを見失わず、40分間を通してSEAGULLSのバスケを遂行できるようになった。ハドルの文化はこれから先も受け継いでほしい。
「やってきた事は間違っていない」
オータムリーグが始まり、序盤戦は勝ち越すことが出来ていた。
しかし、7戦目の日本大学戦。ここで、この時点でのシーズン最大の点差で大敗(61-79)をしてしまった。何も通用しなかった。さらに、8戦目の日本体育大学戦。前節の日大戦の点差が可愛く見えるような点差で大敗(51-94)を喫してしまった。この敗戦後、このシーズンは下級生が多く、本当に自分たちがやってきた事は合っているのだろうかと不安になっている様子が伺えた。すぐに、4年生と陸さん含めたスタッフ陣とミーティングを行い、チームに何が足りないかを共有した。練習前に選手だけでミーティングを行い、一人一人に発言をしてもらった。ここで、今まで歩んできたプロセスが正しいことを伝えた。1日1日の練習を全員が真剣に取り組んできたからこそ自信があった。さらに、インカレまで毎日良い練習だったと思える練習をしようと全員で話した。この時に、スタッフ陣とコミュニケーションを取り、チーム内で意思共有が出来たことが良かったとシーズンが終わって感じた。(大人スタッフと良い関係を築くことの重要性を後輩たちも知ってほしい)。ここからの練習は一度も悪い練習がなく、さらにより良いプロセスを歩むことが出来た。この時には、チームとして粘り強さが付き、接戦では負けない自信があった。(これも元田大陽と話していたはず笑)
「素晴らしいプロセス」
集大成となるインカレ。インカレの組み合わせは、リーグで負け越している相手または最後に戦った時に負けた相手と対戦することになった。陸さんはこのことを「Redeem祭り」と呼んでいた。他のどのチームよりも1年間を通して良いプロセスを歩むことができ、このチーム、このメンバーなら負けるはずがないと自信があった。怒涛の2週間はあっという間に過ぎ、結果的に準優勝で終わった。シーズンを通して目標にしてきた「インカレ優勝」には届かなかったが、全員が素晴らしいプロセスを歩み、常にステップアップをし、目標をぶらさずにやってきたからこそブザーと同時に涙は出なかったし、後悔は全くなかった。試合後、観客席に向かうとSEAGULLS FAMILYが涙を流しているのを見て、本当に良いチームだったとおもうことができ、感謝の気持ちで胸が熱くなった。後悔よりも、私のようなキャプテンについてきてくれた皆に対する気持ちの方が大きかった。結果も大事だが、私たちが歩んできたプロセスは、素晴らしいものであり、目標にしてきたものと同じぐらい評価ができると自信を持って言える。
SEAGULLSでの4年間は、私が今までしたことがないような経験を味わうことができ、刺激的な毎日を過ごすことができた。目先のことに囚われるのではなく、目標を明確にして、日々のプロセスを大事にすること。プロセス次第で結果は良い方にもなるし、悪い方にもなるということを何よりも感じた。陸さんの助言がこれからの人生に及ぼす影響は計り知れない。陸さんをはじめとする大人スタッフの方々、先輩や後輩、常に共に戦ってくれた同期のおかげで4年間を通して大輪の花を咲かせることができた。
これから先の人生も『プロセスを大事』にして、『SEAGULLS SPIRITS』を持ち続けて歩んでいく。
SEAGULLSファンの皆様、4年間応援していただきありがとうございました。これからもSEAGULLSの応援をよろしくお願いいたします。
『PLAY WITH SEAGULLS PRIDE』
「学生スポーツはどんなにすごいスーパースターが揃っていても勝てるものではい。チーム力があり、結束力があるチームが勝つことができる。」だからこそ、後輩たちには、チームケミストリーを高め、プロセスを大事にして、SEAGULLS FAMILYみんなで日本一になってほしい。
拙い文章ではありますが、私が経験したことや、考え、思いが多少でも伝われば幸いです。最後までご清覧いただきありがとうございました。
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