どうでもいいことでどこまで書けるか

2017年4月22日  facebook投稿

今日は田中小実昌さん風で。どうでもいいいことで、どこまで長く書けるかという小実昌さんで。

おとといに飲みすぎたせいで、寝床から転げ落ちてしまった。年をとるというのはこういうことかと思うが、今日になって肩の筋がずいぶんと痛む。
会社のそばの整形外科に駆け込んで、レントゲンを何枚も撮られ、どうにも被曝が心配である。

医者は骨も神経も特に異常はないから安心してくださいと言い、ちょっとほっとはするが、首の骨のレントゲンをみながら、「あなたは頭が重いから首がこるでしょ」なんてことを言う。

「それは頭がでかいということですか」と聞くと、「そうですねえ」と言うが、「だからといって何が悪いというわけではないです」ということだそうだ。

頭というか顔が物理的にでかいというのは生まれつきである。医者というのは悪いところを見つけるのが仕事なんだから、余計なお世話ではある。

人事部が話があるというので、とりあえずすまなさそうな顔を作って会議室に向かう。偉い人が「まあ、現場はいったん離れるけれど、そのうち書ける機会もあるから」というのはありがたいのだが、この人がかなり変人なのである。

「そこの職場には覆面作家で大きな文学賞をとった人もいるから、あなたもそうしたらいいでしょう」なんていうことを言う。直属の上司もいるんだから、そんな奇妙なことをすすめないでくれと思う。つくづくけったいな会社で働いてきたものだと思う。

いろいろ仕方がないなと思って自席に戻ると、上司が「君は勤続25年だねえ」と言う。「お金もらえるんですか」と聞くと、「不景気だから有給が7日出るよ」とのこと。まあ、不景気である。休みがいつ取れるか分からないけれど、ありがたいことですと言って、会社員らしく振る舞ったのである。

金曜日の23時57分発の総武線最終千葉行きにはぜひ一度乗ったほうがいいと読者諸兄姉におすすめする。最近の若者の会話はじつに面白い。男が「俺は本番、まじ強いから」と言う。「どんな本番もまじ切り抜けてきたから」と続ける。

優しいか、惚れているのだろう。女は「ほんと? すごいね」と言う。さらに男は「本番、まじ強いから」とくどいように話す。女は「どんな本番に強いの?」とやっと言い出した。私としては興味津々である。しかし、男は具体的にはると「いろいろ・・・いろいろ・・・」としどろもどろなのがおかしい。

二人は私と同じ錦糸町で降りたので、私は助平心で、さては温泉マークにしけこむのだろうと観察していた。錦糸町のホテル街は南口である。ところが、南口に行くのだと思ったら、二人は北口から出ていった。こういう謎が私は好きなのである。

古今東西、男は威張りたがるものである。それを微笑ましいと思うか、そうでないかは、男女の間柄のことである。

さて、二人はどうなったか。助平じじいは少しばかり想像力をめぐらせ、そうした想像力はやはりくだらないと反省するのである。

<プロジェクト担当者より>
突然の病で他界する3カ月前に書かれたものです。そんなことが待ち受けていたなんて、本人も周りもつゆ知らずで。あと30年ぐらいこんなことを書いていてほしかったと思います。

いいなと思ったら応援しよう!