台湾の行く末
2014年3月24日 facebook投稿
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台湾で学生たちの怒りが爆発しているのですが、最初はなにが起こっているのか分からなかったのですが、いろいろ情報をみてみると、「中進国の苦悩」だという構図が見えてきました。
台湾の学生は昨年結ばれた台湾と中国の「「サービス貿易協定」に反対をしています。その協定は、簡単に言ってしまえば「ヒト、モノ、カネ」の二国間での移動を拡大しようという自由貿易協定です。
台湾の人たちにどういう影響があるかというと、「大陸の安い労働力によって自分たちの仕事が奪われる」「競争力のない中小企業がつぶれてしまう」ということです。多くは中産階級となる学生にとっては死活問題です。
台湾は領土は狭く資源もなく、欧米からすると比較的安い労働力と、PCソフトに代表されるように技術力によって経済発展しました。アップル製品は大半が台湾で製造されているということが、それをよく表しています。
しかし大陸と経済的な一体化が進むと、生産拠点が大陸に移るか、あるいは大陸から低賃金労働者が流入します。おおざっぱに言ってしまうと「大企業・富裕層はますます儲け、中産階級が低所得層に転落して固定してしまう」という新自由主義的な状況に変化するということです。
経済的には反グローバル的なレフトで、一方政治的には大陸との統一を掲げる与党・国民党に対する台湾独立を主張する民進党の「台湾愛国主義」というある種のナショナリズム・ライト的なスタンスになります。興味深い構造ですね。
中国はいまや社会主義国家でもなんでもなくて、むしろアメリカやロシアに似ている新自由主義的国家です。「国内に<第三世界>的な低賃金労働力を抱え、一方で大企業は技術と資本をもち、貧富の格差が極端に二分している<帝国>」という位置づけです。
構造的にはサービス協定への反対は、日本の「TPP反対」とも同じものです。TPPはいってみれば、「対中国のアメリカによる経済ブロック化」ですが、台湾の複雑なところは国民党はTPPにも参加したいという姿勢を見せていることです。中国とアメリカの両方の経済ブロックに二股をかけて、さらに新自由主義的にしていきたいとうことかもしれません。
しかし、世界的な視野に立つと、台湾は「世界の中産階級」とみることもできます。IT関係のASUS(グーグルのハード面を担当)やHTC(スマホのOS)などは、技術は比較的高くても、資本力ではアメリカのIT産業にはかないません。自由貿易(経済ブロック内ですが)が進んで、資本と労働力が自由に移動させられるというグローバリゼーションが深まっていくと、台湾を代表するASUSやHTCという企業も大陸に拠点を移すなどして、結果的には台湾の地域経済にはお金が回らず、空洞化が進む恐れがあります。
台湾が経済ブロックとして中国とアメリカに二股をかけることをアメリカがどう考えるのか。あるいは、台湾を接続点として中国とアメリカの新自由主義が通じていくということもあるのか、まだ予測はできません。日本の立場とも共通する点が多いので、日本の行く末にとっても注目すべき事態だと思います。