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Psychedelic State 復活編

灯火は消えていなかった。
そうサイケデリックの火は今もまだ燃え尽きていないのだ。

前回までのPsychedelic States

少し前に、ドイツの六十年代のバンドのライブ音源をまとめたコンピレーションアルバムについて調べていました。
なるほどこれは五作も出ているのか、少し気になるななんて。
Amazonで取扱があるかなと確認したところ、わたしの目に入ったのはあの極才色のサイケなジャケット、Psychedelic Stateの新作でした。

いや、忘れていたわけではないのですが、確認はしていなかった。音楽を聴いていなかったわけではないし。
まあ、端的に言えば他のことにかまけて、確認が疎かになっていたのです。

気付いたのなら再開するしかない、あの終わらないサイケデリックドリーム。
サイケをのぞく時、サイケもまたこちらをのぞいているのだ。
そういう気概で。

というわけで今回購入したのは以下の通り。

  • Psychedelic State Kentucky(2枚組)

  • Psychedelic State New Jersey Vol. 1 / Vol. 2

  • Psychedelic State The Carolinas(3枚組)

なかなかのボリュームですね。
数年チェックしていなかったのだから、そんなものなのかもしれませんが、まずは続編を出し続けてくれていることに感謝しましょう。あでしゃ。

Psychedelic State Kentucky

まずはケンタッキー。
南北戦争では境界線となり、北軍からも南軍からも攻められたケンタッキー。
地理と文化の十字路と呼ばれるなど、さまざまな文化、思想が入り混じっている州らしい。
肝心の音源の方は、総じて保守的な楽曲が多い印象でした。
突飛なリフや、ファズに頼るような曲はなく、柔和な音が多かった感じで。
いわゆるソフトロックよりな。
悪くはないけど、全体的にもう少しインパクトが欲しかったかなと思います。
その中でも気に入った曲をいくつか。

The Misfits / Two, Three, Or Twelve
昭和歌謡のようなイントロ、絶妙なセンスのオルガンがグッときます。
GS(グループサウンズ)的なセンスとでもいうのか、ぬるっとしたオルガンですね。
残念ながら、このセンスを持ってしてもシングル1枚のリリースに終わっているようです。
これは女性ボーカルであった方がより良かったのではないかと感じました。

The Us Four / The Alligator
ズンドコドラムのガレージバンドは食傷気味なのですが、どこか間抜けな「アーリゲーター」の歌詞で許せてしまいます。やはりその辺りはケンタッキーの寛容さの賜物といったところでしょうか。
声の感じから十代の若者であったのではないかと想像します。

The Waters / Day In & Out
これは疾走感のあるファズギターが効いていて、メロディはどことなくブリットポップのようでもあり、気に入りました。
ケンタッキーのTeenage funclubといったところでしょうか。
演奏は稚拙なところがあるのですが、それを補ってあまりある楽曲の良さ、メロディの良さがありました。

Psychedelic State The Carolinas

Carolinasはノースカロライナとサウスカロライナを合わせてドンだ。
そういうからてっきり二つの州は似通った州なのかと思っていました。
領地再編の過程で、ノースとサウスに分かれて、サウスカロライナは黒人奴隷を使用したプランテーションで栄え、南北戦争後は衰退。変わって貧しかったノースカロライナは大学や研究機関を誘致してビジネスと研究が盛んな州となり、今では貧富の差は逆転しているそうです。
そんな土壌からどんなガレージバンドが産まれるのか、興味深いですね。

Garry Collins & The Vibrations / Whatcha Gonna Do?
サウスカロライナのバンド、6割くらいIn the midnight hour、2割くらいのHold on I'm comingなのはご愛嬌。でも軽快で子気味いいオルガンが楽しめる良曲でした。

Psychic Motion / Big Teaser
ノースカロライナのバンド、イントロが良い。
こまめに入るシャウト、シンプルな楽曲ながらパーティーソングらしい盛り上がりがあり気に入りました。
よくよく確認したら、The Young Onesが改名したバンドでした。あーあのThe Young Onesね。なんてなるわけもなく。
このコンピレーションの他のディスクに入っていたので知っていただけでした。
ただ、ドラムがのちにCykleに加入したおかげで、The Young OnesもPsychic Motionもまとめて再発に収録されていました。

The Rogues / Cherry
ノースカロライナのバンド、ルイルイベースの曲。
何がいいかというとこのリバーブ、銭湯の中で演奏しているのを番台で聴いているかのような音。独特のトリップ感がありました。
曲は至ってシンプルだし、歌詞はほとんど「チェリー、チェーリーパイ」という欧米か!ソングでした。
滲み出る官民共同研究の成果の兆しを感じることができるかどうかで、この楽曲の良さが変わってくるのだと思います。そんなわけないか。

Psychedelic State New Jersey Vol. 1 / Vol. 2

川の向こうはマンハッタン、ニューヨークのベッドタウンとして発展したニュージャージー州。
小さな州で人口密度が1位ということもあり、やはりローカルバンドも当時はたくさん湧いてきたのだろうと想像できます。

The Ruins / She Doesn't Understand
Vol.1の1曲目、今夜は眠れない的なフィードバックから、投げやりな歌唱、ギターソロの裏で何か呟き続けるセリフ。
無気力な十代であって欲しいと願います。
「母さんは、俺のことなんてわかっていないんだ」(想像意訳)
と歌う十代であって欲しい。

The Ruins / The Gordel Postulate
同バンドの曲はVol.2にも収録されていました。
シングルを1枚リリースしたのみ、つまりこの2曲だけだ。
何か心に残る楽曲であったのですが、今のところ私の中のストーリーではバンド解散後メンバーはニューヨークへ働きに出ており、音楽活動からは足を洗っている。老齢になりあの頃のメンバーで集まろうとなったが、もう演奏は覚えていないな、なんて笑いながらバーボン決めていて欲しい。

The Young Men / You Might Have Seen Her Around
特徴的なオルガンの音色、楽曲も悪くないのだが、何かバランスが悪い。
何が悪いのだろうと考えながら聴いていると曲が終わっていて、もう一度聴いてを繰り返した。
まだ、その原因はわかっていない。
ナチュラルサイケデリック、この時にしか出せなかった音が記録されています。

The Sound Apparatus / Travel Agent Man
ファズとうねるベース、淡々とした歌、浮遊感のある曲調。
サイケデリックに必要なものがふんだんに含まれているように感じる。
転調した後も、小うるさく弾き続けられるギター、意に返さず淡々と続く歌。
I'm Travel agent manというあたりが、なんとも土着的で良い。連れて行ってくれるのはそう遠くなさそうであり、親近感が持てる。
主にバスツアーなんだろうか。
これがMr. Spacemanだと遠くの星へ連れて行かれてしまうのだが、そうしないところが、現実的なニュージャージーっ子の所以だろう。そうなのか?

まとめ

改めてアメリカの広さを思い知るというか、これって日本でたとえたら新潟編とか、岡山編くらいの感じで、それでもこれだけの数のバンドがいて、それなりの楽曲が集まるということだから。
大都市圏以外でも、精力的に活動する若者がたくさんいて、小さな自主レーベルもたくさんあって、購入する人も一定数いるという環境ですものね。
当然ながら全州制覇して欲しいもので、細々とでも続いて欲しいなと思うのです。
出る限りはこっちも買うぞという強い気持ちで、また続編を待ちます。

このスウェットは買いません。


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トカチェフ
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