#74 危機の二十年

政治経済学を本格的に学びたいと思い手に取ってみた一冊だが、入門書にしてはかなり難解な部分が多く読み進めるのにかなりの力を必要とした本書。ユートピアニズムの偽善を暴くリアリズム、またリアリズムの限界に対して焦点を当て、戦争と平和と国際問題を考えるにあたっては必読の一冊となっている本書からの学びを書き記しておく。

・自然科学とは違って、政治学における目的は研究内容と無関係ではあり得ず、研究内容から目的は切り離せない。目的があって始めて派生してきた分野である。

・政治経済学の黎明期においては、重商主義から普遍的自由貿易に向けた運動が育まれており、この間はこうあってほしいと願望と目的の区分が存在していなかった。

・国際政治学は戦争という疲弊の再発防止への願望から始まった学問である。

・ユートピアにおいては、政治理論を政治の現実が従うべき規範であるとする。リアリストにとっては政治理論は政治的現実の一つの体系化である。

・急進主義は必然的にユートピアんであり、保守主義はリアリストである。理論の人は左派に引き寄せられる。実践の人は右派に引き寄せられる・

・ユートピアニズムの起源としては、福音主義の終了後、教会の権威に代わり人間理性を究極の源泉とする非宗教的な自然法の教義の中にあった。ベンサムの最大多数の最大幸福とはこのこと。国際連盟の思想もここに根ざしていた。

・しかしながら、満州の危機、ヒトラーのチェコスロヴァキア侵略に対する危機から、諸前提を考え直す必要が出てきた。つまり、大きな声を持つのは、知識を持たない人が多く、秩序だった理論がないということである。

・ユートピア主義者は、個人の利益が最大利益に一致すると主張してきたが、多くの場合、これは強者もしくは支配集団のイデオロギーを通すために用いられてきた過去がある。また、特にこのイデオロギーが発達した当時には、国家それぞれの経済利益拡大が世界全体の経済利益拡大に一致していたことが多くかった。

・しかし一方で、コロンビアのような弱小国に取って関税撤廃が良いものであっても、イギリス・アメリカにとっては必ずしも良いモノでないことは想像に固くないように、この考えは誤りを含んでいる。つまり、絶対的、普遍的と考えられるものにおいては、国家政策を無意識のうちに反映しているのである。

・ただ一方でリアリズムを両手を上げて称賛することもできない。なぜなら、そこには情緒的な訴えと政治的疲弊を公正に包括的に解決する鍵を持っているという信念がなければならなく、それはすなわちユートピア的思考だからである。

・政治的行動は道義と権力の上に形成されなければならない。また権力の拡充はすなわち、軍事力、経済力、意見を支配する力を拡充することと等しい。

・最も大規模で包括的な権力単位は国家、領土を超えたところに設定することができるはずであるし、軍事的・経済的に結びついた国が存在しているのはそれを超えられる証拠であろう。

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