#255 ゴールドマン・サックス 王国の光と影上
数々の名著を生み出したチャールズ・エリスによるゴールドマンの社史が、誕生からどのように国際的な投資銀行へと成長していったかが書かれている本書。変わりゆく時代の中でビジネスチャンスを見つけながら、圧倒的なスピード感と実行力で上り詰めていく姿はやはり今読んでも胸が躍る。ゴールドマン・サックス・トレーディングでの失敗や、新規ビジネスに関するリスクの見積もり、投資銀行業務、トレーディング業務での成功の裏には本書で登場した人のみならず、多くの人の迸る情熱ゆえなのだと思う。自分も新たなチャレンジを始めるにあたって、参考になることが非常に多く、取り入れていきたいと思う。
・ビジネスを定義し直し、会社を変える。劇的に変え、仕事の進め方を大きく変える。常に洗練された一貫性あるイメージを打ち出してきたため、競争に打ち勝ち利益を増やそうとする野心はその影に上手く覆い隠されてきた。
・競争相手が自社の戦略や組織を変更したら、それはビジネスで最高の賛辞を送られたに等しい。
・ホワイトヘッドは業務執行と営業を切り離し、GSの投資銀行部門の社員は、顧客に営業をしてビジネスをとってくるか、決まった案件を遂行するかの、いずれかを選択するように提案した。
・当時は上手く行くわけがないからお金の無駄だと見る人が多かったが、産業が複雑化し、顧客ニーズも多様化する中で、繋がりを保つ営業、情報を仕入れる営業とそれを実行する専門部隊というのは非常に上手く機能するようになった。
・またGSでは他社が色々なビジネスを先駆けて行うときに、営業とプロダクトを分けることにより、新規ビジネスのリスクは競合他社に取らせ、出来不出来を見た上で、素早く面を取りに行くという体制構築が可能となった。
・素晴らしいアイデアというのは、たいていゆっくりと始まり、いくつか幸運に恵まれて突破口を掴み、弾みをつけていくものだ。後になって初めて天才の仕業に見えるだけだ。
・社員一人一人が何に適性があり、何に関心があるのか、もっと上手くやれる仕事は何か、を考えて配属するのが経営の腕の見せ所だ。
・最初は一つ一つの行動や案件に、そしてやがて戦略全体に及んでいった。それは次第に企業カルチャーとなり、組織的に仕事をする新しい姿勢が出来上がった。
・ゴールドマンサックスは違う。この会社ははっきりと利益を優先していた。
・内部に食い込めていないから、提案が歓迎されたときにはすかさず入り込めるように備えておく必要があった。
・先に手の内を全てさらけ出してしまえば、相手を出し抜くのが容易になる。
・評判を損なうリスクを上手くマネージしながらやってきた。
・ささやかなことを毎日行い、できるだけ堅実に、一歩ずつ正しい方向に進む。それが経営だ。
・我々は貪欲だ。だが長期的に貪欲なのであって、短期的にではない。
・規則で縛り付けた経営では証券業界における変化の速さや、多くの異なる市場で様々なビジネスを扱う複雑さについていけないが、理念に基づく経営では、決定責任は第一線にいる人々に委譲される。
・一人の人から尊敬されるのは、100人の知り合いを作るより重要だ。
・決定をするのは部長だ。君はボスを知っているか?
・重要な人は重要な人と付き合うものだ。君はどうだ?
・1970年代頃まで、飛行機はエコノミー、社員の数は最低限。少数精鋭で効率よく働き、収益性を高める。
・パートナーは15%利益を拠出してプールした。
・会社としてリスクに見合った収益を最大限にすることだ。リスク対収益、短期対長期、個人対会社、顧客の関係対個別案件の間で、バランスを取ろうとするから、経営陣に課せられた責任は大きい。
・独創性に富むものが確信に挑もうとすれば、組織をぶち壊すような、他の人とは違う動きをとるようになる。一方、組織は大きくなると秩序と安定を求めるようになる。両方とも必要だが相容れない面がある。それをなんとかするのが証券業における真の経営である。
・すでに上手くやっている分野でマーケットシェアを30%から35%に伸ばすほうが、何も知らない分野でマーケットシェアを5%とるよりも簡単だといつも思っていた。
・成功したものに投資をして、上手くやった人にはさらに上手くできるように投資した。
・忍耐、慎重、しつこいほどの粘り強さが、二人のジョンの真骨頂。
・MSはQIIの株式業務を合理化するとして、一方的に発表し、Top150社のサービスを個人投資家担当に移し替えるとし顧客を激怒させたがGSは個人投資家担当のトップセールスがつく方が顧客にも利があるとじっくり説明して回った。
・GSのような時代を超えて存続してきた組織が変わるときには、何か劇的な出来事で変わるというよりも、中核となる信念を愚直に追求していく過程で変わることが多い。信念は本能的なようで、実際は深い洞察に基づくものである。
・富裕層ビジネスの成功源は、資金を集めて投資をする手腕よりも、顧客を惹きつける力があるかどうかだと早くから気づいていた。何を必要としているのか、リスクにどれだけ耐えられるかを敏感に感じ取ること。我々が顧客にしたいと思う人たちは、みんな賢い。嘘偽りはすぐに見抜かれる。彼らが本当に望んでいることを理解すること。そして、心から役に立ちたいと考えることだ。
・敵対的買収は手がけないという方針は、敵対的に仕掛けてもほとんど成功しないという理由からだった。
・ゴールドマンサックスはウォール街でいつも経営陣の味方に立つ誠実な会社だという評判を築き、スキルと経験を磨いていった。
・もしお前が本当に優秀なら、お前が会社のためにする一番の仕事は、会社の管理ではない。
・大きな成功は挫折なしにはやってこない。