#12「超」入門空気の研究 by 鈴木博毅
「超」入門失敗の本質の著者である鈴木さんが書かれた他の本が気になってこちらの本を手に取って見ました。1977年に出版された「空気」の研究という書籍において、日本人の特殊な精神性や日本的な組織の問題点を指導する存在として読み継がれてきた書の解説版と位置付けられた本書では、私が普段あまり考えない空気についての考察と、どのようにして意識的に集団的に形成される「空気」から脱して適切な戦略、及び、イノベーションを生み出せるかという問題について分かりやすく解説してくれています。
・「空気」とはある種の前提と定義される。空気に支配された集団は、科学的・合理的思考さえ捻じ曲げて、前提に適合している結論しか受け入れないことで現実と乖離して狂い始める。また、その前提に従わないものは徹底的に叩く同調圧力が加わる。日本軍の例を持って本書では、次のような説明を用いています。沖縄戦では戦艦大和は特攻をしたが、次のような前提があったからだと考えられる。1945年3月に沖縄戦を開始した当時は日本の敗戦はほぼ確実視されていた。最強戦艦の大和を、成果なしに敵の捕虜にな流だけでは物足りないため、特攻が不可避という前提が置かれ、この作戦は本来ならば一番注意しなければならない、作戦の成功率とは関係なしに行われてしまった。
・日本人は集団だと狂暴になりうる理由。日本では集団や組織、利権団体などが別々のムラを形成しており、集団ごとに異なる倫理基準を持っている。異なるムラの善悪が対決するとき、より広い影響力を持つ一君に「お墨付き」をもらい問題を解決してきており、この構造が歪みを発生させる。
西洋では、昔から広く異なる民族が混合してきた背景などがあるので、ここまで、空気に支配されることからの脱出を何度も経験してきたこともあり、空気の影響をそこまで受けない民族性が一般的にはあると言われている。
・空気の打破の方法としては、1.空気の相対化(前提になっている問題を見抜くこと)、 2.閉鎖された劇場の破壊(自らが外の前提に出るか、外の前提を積極的に入れるようにするか)、 3.空気を断ち切る思考の自由(インテルのアンディCEOは、自らに、新たなCEOを連れてきたらそいつは何をするかと問うてみた。)、 4.流れに対抗する根本主義(些細なものと大事なものの境界を引いてくれる。)の四つが提起されている。
・普遍性の高い正義をもち、ムラを横断的に貫ける人が真のリーダー。こんなことを考える人がいないということは、多くの人が、思考の盲点に陥っているということです、逆に言えば、そうした盲点にこそ、他人から刷れば非常識だけど物事の本質が隠れているのです。