#245 期待リターンII
低金利環境下での投資戦略と銘打っているが、本書の内容はより普遍的な内容になっている。資産クラスのプレミアム、スタイルプレミアムの源泉とそれらを用いてポートフォリオを構成する際の必要となる知識が学術的および実務的にも精通した筆者によってまとめられている。期待リターンも読もうと思う。いか、本書から内容の抜粋。
・バリュースタイルプレミアムの分けは、情報への遅れた過剰反応、価格に関係なく優良企業を投資対象とみなすことなどが挙げられる。
・過去一年ではモメンタム傾向を示す銘柄が多く、過去1ヶ月や1週間ではリバーサルが見られる。
・深く長く続くドローダウンの存在が逆に長い回復の可能性を示唆する。
・リバーサルは流動性供給と価格圧力効果に関連していると思われる。
・キャリーはより広義には、資本市場の状況が変化しない際の資産リターンとしてみることができる。
・通貨キャリーの利益は高金利の資本供給をバランスさせる過程で発生している可能性がある。高金利は国内の貯蓄で賄えない過剰な資本需要を示し、低金利は過剰な資本供給を示す可能性がある。
・キャリーとは状況の変化に対する市場の期待と、要求リスクプレミアムとが、不明な割合でブレンドされていることになる。
・ディフェンシブファクターは、低リスクな商品のリターンが高リスクな商品のリターンを上回ることから来ている。
・高リスク銘柄にはレバレッジと宝くじの特性が埋め込まれており、その代償として高リスク銘柄の長期的なSRの低下を受け入れている。
・オーバーフィッティングとオーバークラウディングのリスクの間にはトレードオフの関係がある。また、用いる時系列データが短くなればなるほど後者のリスクは高くなる。
・裁定の力と投資家の学習により行動学的アノマリーはすぐに消えてしまうためリスクベースの説明が持続可能であるという主張がある。これに対する反論は裁定の限界と学習の遅さから行動学的アノマリーが持続するということ。
・スタイルプレミアムには行動とリスク両方の議論から正当化されることが多く、考えるべきは、その相対的な役割になるだろう。行動学ベース説明は多くの資産クラスに当てはまることが多いことに注目するべき。
・悪い時期に悪いリターンがあるからこそリスクプレミアムが保証される。
・忍耐強くなるためには、ポートフォリオ見直しを広い視点で行うこと、頻度を下げて行うこと、組織的なコミットメントを広げることがある。
・金融市場は今回は違うということが多すぎる。競争や政策転換によって市場が元に戻る可能性を忘れてはならない。
・ファクターの大規模なリストに関して研究を行った時に、サンプル期間前の方が減衰が大きく、これはオーバーフィッティングとの整合性が高い。
・取引執行を長期的に分散させ、大きな取引によるマーケットインパクトを低減させる。
・シグナルを連続的な方法でポジションにマッピングする。例えばランク加重のポジションを用いる。
・真に制約のない投資家は、異なるファクターにレバレッジをかけて、SRを高めてかなり強いPFを作ることができるが、レバレッジや空売りの制約からそこまで行う投資家は限られる。
・ポートフォリオに対する資産クラス、戦略スタイル(トレンド、バリュー、ボラティリティ、キャリー)、マクロファクター(成長性、低流動性、テールリスク、インフレ)の視点がキューブになる。マクロファクターとそれらが資産クラスに与える影響を推定するのは困難である。代わりに、広く分散されたポートフォリオ構築を目指すべき。
・ファクター投資家にとってブレスは特に重要である。マルチファクター投資は、多くの報われるプレミアムに分散し、同時に報われないリスクをヘッジする。
・もし非常に高い回転率のファクターが強いグロスアルファを持つが、マイナスのネットアルファを持つ場合、長期投資かはこの早いシグナルの情報を取引タイミングを計るのに活用でくる。
・逆張りシグナルは早すぎる点灯が多く、市場の長期トレンドおよび市場の構造転換からも影響を受ける。
・戦略的ファクター分散と戦略的ファクタータイミングの加法性、信頼性、実用性の評価はかなり異なり、いずれも前者がかなり優れている。
・投資の成功のためには良い投資と良い投資家が必要だ。
・投資家はリバーサルのホライズンでモメンタム投資家のように行動することがあまりにも多い。
・静穏な精神により、我々はよりよい、より忍耐強い、より一貫性のある投資家になることができる。