#33 父が娘に語る経済の話
経済学の理論をわかりやすく解説する本は数多くあるが、本質をわかりやすくしかもわかりやすい例えを多用してまとめているのは本書くらいではないかと言わせんばかりの分かりやすさと比喩の多さ。現在の資本主義の起源や人々が通説として信じていることが必ずしも正しくないことを面白く書き上げている。
・全ての起源であるのは、利潤であり、農耕社会へと推移することで利潤を蓄えることができた。この利潤こそが、人類を永遠に変えるような、偉大な制度のうみの親になった。超過利潤をどのように利用するかを記録するために文字が出来が上がり、文字によって構造が規定された。言語の発明によって社会の中に構造が持ち込まれたのである。一部の支配者が支配者にとどまるための文字の存在が欠かせなかったというわけだ。それらが、官僚、軍隊、宗教を産んだ。
・債務は文字によって生まれたものであるから、信用創造は基本的に無から有を産むという形に即する。人間の生産性の飛躍は、生産、利潤、債務という流れから、債務、生産、利潤という循環を構築した時に生じた。
・競争に勝つには、債務をおい、効率よく投資する他に手段はないのである。債務起点の流れは、将来の勝ちの源泉を現在に引きつけることを可能にしたのである。
・焦げ付き債務を返済できないと社会的な信用までも失っていた時代から19世紀には有限責任会社というものが出来た。バブルの責任は全て銀行にあるというのもおかしな話。もちつもたれる。
・ビットコインは、リフレーション政策が取れない通貨である。発行が全て行われた際にどのような状況を迎えるのかは要注目。
・労働市場とマネーマーケットを動かしているのは予言の力である。予言は自己実現したがっている。例えば、金利引き下げのニュースは、不況が続くと思ってお金を借りる人が少なくなってしまうという逆効果を生むことがある。